大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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テニュアトラック教員紹介津留﨑先生は、リン原子の特徴を活用した新しい触媒反応系の開発、及びπ共役化合物の開発を目指して研究をされています。本学のテニュアトラック助教として採用後、非常に熱心に学生指導をされ、精力的に上記の研究に取り組んでおられます。今後の研究の発展を大いに期待しています。専門分野:有機化学・元素化学・有機金属化学理学系研究科【略  歴】 平成22年3月、博士(理学)を取得(京都大学大学院理学研究科)。京都大学化学研究所、群馬大学大学院工学研究科、群馬大学高度人材育成センター、産業技術総合研究所での博士研究員を経て、平成28年4月、大阪府立大学大学院理学系研究科テニュアトラック助教に着任。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターより神川 憲 理学系研究科 教授研究内容これまでに培ってきた知識・経験に加えて日々の努力を重ねることによって、先例のない魅力的な研究成果を世の中に届けたいと思います。また同時に、有機化学の次世代を担える積極的な若手の育成にも尽力していきます。津留﨑 陽大Akihiro TSURUSAKI 有機π共役化合物とは、オレフィン(C=C)やベンゼン(C6H6)などに含まれる二重結合(π結合)を一つおきに連ならせた有機化合物の総称であり、近年OLED・有機半導体・電界効果トランジスタなどの実用的な材料として利用されてきています。その多くは、二次元に拡張された平面型のπ共役分子ですが、近年、フラーレン、コラヌレンに代表されるような三次元構造を持つπ共役化合物が、湾曲に由来する特異な構造や分子間相互作用の観点から注目を集めています。このような炭素系π共役分子での三次元構造の実現には、ベンゼン環と五員環(あるいは七員環)の連続的な縮環が必要とされるため、分子設計上の制約が大きくなっています。一方、三方錐構造を保持するリン原子をπ共役骨格内にはめ込むことよって、シンプルな骨格においても三次元構造が達成でき、さらには湾曲したシート状の分子への展開も期待できます。このような観点から、五員環・六員環・七員環などの環縮合位にリン原子をもつ新しい含リンπ共役分子の開発し、その構造や物性を明らかにするとともに機能性分子への応用展開も目指しています。H28年度採用リン原子を活用した新しい配位子と機能性分子の開発 現在までに110以上の元素が知られており、各元素は固有の価電子数・電気陰性度・共有結合半径などの異なる性質を持っています。自然界においては、これらの元素特性を反映した様々な物質が存在しています。第三周期15族の元素であるリン(元素記号: P)は、生命活動に必須なDNA・ RNA ・ATP・リン酸カルシウム(骨)などに含まれるとともに、化学肥料、マッチ、半導体のドーパントといった多岐に渡る用途も存在します。「有機化学」の領域においても、Wittig反応、光延反応などの分子変換反応に、リン化合物は古くから利用されています。有機化学・元素化学の視点から、リン原子の持つ特性を最大限に活用した「配位子」と「機能性分子」を開発し、その特性を解明することを通じて新しい物質科学の世界を切り拓いていく研究を行っています。 目的とする反応を効率よく進行させるために、遷移金属錯体が触媒として広く利用されています。三価のリン化合物であるホスフィンは、非共有電子対を用いて遷移金属錯体にσ配位します。これにより錯体上の電子的・立体的な性質が大きく変化し、触媒活性も大きく変化します。例えば、軸不斉ホスフィン配位子の一つであるBINAP[2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル]は、高活性かつ高い光学純度で生理活性物質などの有用な化合物を合成することを可能にしました(この研究成果は2001年のノーベル化学賞につながっています)。現在においても、高い触媒活性をもたらす配位子の開発が続けられています。 一般的なホスフィンとは異なる結合様式を持つ「ジホスフェン」(リン-リン二重結合およびそれを含む化合物の総称)に着目して、現在まで研究を行っています。ジホスフェンは、二重結合の高い電子受容性を反映した特異な反応性を示すことが期待されていますが、これまでにジホスフェンを配位子とした遷移金属触媒反応の例はなく、今後の更なる展開が求められています。ジホスフェンを用いた新規反応を実現するとともに、光学活性化合物の効率的な合成につながる軸不斉ビアリールジホスフェン配位子を開発することで、不斉触媒反応へと展開していくことを目指しています。電子受容性を有するジホスフェンを活用した新規配位子の開発と触媒反応への展開リン原子の三方錐構造を活用した湾曲型π共役分子の開発28

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