大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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テニュアトラック教員紹介“焦らず弛まず”研究と教育に取り組んでまいります。精密に設計・制御された遷移金属錯体を創出し、それらを活用して強固な化学結合を穏和な条件下で選択的に切断する反応の開拓に挑み、着実に成果を挙げつつあります。学生指導にも懸命にとりくんでいます。研究と教育の両面において、今後一層の飛躍が大いに期待されるところです。亀尾 肇専門分野:無機化学、有機金属化学 理学系研究科 “有機金属化学”は、金属と有機基の間に直接結合を有する化合物を研究する学問です。これまでに、グリニャール試薬、チーグラナッタ触媒の発見などによって、有機金属化学の研究から重要な化学変換反応が多数生み出されてきました。近年でも、野依先生らの不斉水素化反応、鈴木、根岸先生らのクロスカップリング反応など、多様な化合物を容易に合成できる手法が続々と開発されており、有機金属化学は化学の中でも特に研究が盛んに行われている分野です。 我々のグループでは、 有機金属錯体によるケイ素化合物の新規変換反応の開発に取り組んでいます。ケイ素は地球の地殻中に二番目に多く存在する元素です。実に炭素の300倍以上もケイ素は地殻に存在しており(図1)、この元素を高度に利用していくことは、発展持続可能な社会を構築してゆく上で、欠かせない課題です。有機金属錯体によるケイ素化合物の変換反応は、これまでに数多く報告されておりますが、それらのほとんどは Si-H 結合の切断を鍵とするものです。そのため、事前に Si-H 結合を有する化合物を合成する必要があり、その合成には多段階の工程を経て、膨大なエネルギーを費やすことになります。 ケイ素化合物は天然にはシリカ(SiO2)として存在しており、その安定した Si-O 結合を変換する方法は極めて限られており、現行の変換法は多大なエネルギーを必要とします。シリカの Si-O 結合は唯一温和な条件下でも Si-F 結合へと変換できますが、Si-F 結合も強固であり、その変換法は限られています。そのため、もし Si-F 結合や Si-O 結合を自在に変換できれば、ケイ素化合物の高度な変換反応が開発可能になり、ケイ素合成化学のブレイクスルーとなります(図2)。  我々の研究グループでは、これまでに有機金属錯体を用いた初めての Si-F 結合切断反応の例を報告しています(図3)。現段階では特殊な反応基質を用いていますが、この反応は有用な触媒的変換反応を達成する重要な一歩になるものと考えています。今後はケイ素化合物の高度な分子変換反応の開発に研究を発展させてゆく所存です。Hajime KAMEO【略  歴】 平成21年3月、博士(工学)取得(東京工業大学大学院理工学研究科)。東京工業大学 博士研究員、エアランゲンニュルンベルグ大学 博士研究員、大阪市立大学 特任講師を経て、平成25年2月、大阪府立大学大学院理学系研究科テニュアトラック助教に着任。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターより松坂 裕之 理学系研究科 教授研究内容シリカフルオロシラン有機金属錯体による自在な分子変換多様なケイ素化合物H24年度採用強固な結合の切断を鍵とする新規分子変換反応の開発図1 地球上の地表付近に存在する元素の割合(クラーク数)図2 強固なSi-O、Si-F結合切断を鍵とする分子変換反応図3 有機金属錯体を用いた初めてのSi-F結合切断反応25

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