大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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緑地計画の実務に携わった経験を活かして、社会とのつながりを意識した研究に重点を置き、人口減少をはじめとする社会環境の大きな転換期において、社会が直面する新たな課題に柔軟に対応できる計画技術の構築を目指します。自立した研究者として、新たな分野ともいえるコミュニティ・デザイン領域を緑地計画分野の中で確立させるとともに、新たな領域を担う次世代(学生や大学院生)の教育を期待する。武田 重昭専門分野:緑地計画、都市環境デザイン、居住空間整備 計画的に整備された団地やニュータウン等の集住環境は、戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、都市への急激な人口流入に対応する新しい居住空間として、多大な資本投下のもとに整備されてきたが、少子・高齢化をはじめとする社会状況の大きな変化に伴い、様々な課題が顕在化してきている。このような計画的な集住環境の再生は世界的にも共通して見られる問題であり、欧米を中心に研究が進められているコンパクトシティ化や低炭素型社会への転換など、持続可能な都市の土地利用を考える上でも重要な課題である。加えてわが国においては、人口減少という社会構造の大きな転換期において、成長型社会から成熟型社会への移行が求められる状況のなかで、このような集住環境をいかに効率的かつ効果的に再生してくかを考える必要がある。これまでのようなスクラップ・アンド・ビルド型の開発ではなく、既存ストックを活用した再生の手法が求められるなかで、緑地計画の果たすべき役割は非常に大きいと考えられる。例えば、体系的に整備された緑地環境の連続性や一体性は、安全で快適に歩いて生活できる圏域を形成しており、これをうまく活用することで日常生活の質の向上につながる可能性が高い。また、緑地環境への日常的な維持管理等の関わり方は、社会状況の変化に対応した多様なライフスタイルの創出や希薄化したコミュニティの再生にもつながると考えられる。このような緑地環境のポテンシャルを活かした新たな計画理論やマネジメントの仕組みは、集住環境の魅力の回復や新たな価値の創出につながるばかりではなく、より広域的な都市圏における持続可能な土地利用への転換においても求められる研究課題である。 そこで、私は緑地環境の空間形態や管理運営の仕組みとそこでの生活行動との関係性について、団地やニュータウン等の集住環境を中心に、都市圏域の公園緑地等も含め、社会状況の変化に対応した今後の持続可能な都市の土地利用への転換に向けた、緑地環境の空間的な計画技術や生活者の新しい関わり方による緑地環境のマネジメント技術の開発に取り組んでいる。今後、保全・継承・活用すべき緑地環境の特質を明らかにするためには、既存の緑地ストックが現在の社会の中でどのような価値を持ち得るのかというポテンシャルを適切に評価したうえで、検討を行うことが不可欠である。具体的には、(1)既存の緑地環境ストックの維持管理やコンバージョンの仕組みとそのデザイン手法などの空間整備に関する視点、(2)高齢者の健康増進や子育て支援への対応、新たなライフスタイルの創造などの緑地環境への日常的な関わり方やその支援方法に関する視点、(3)緑地環境を介したコミュニケーションの促進による人々のふれあいや緑地との関係性によってつくられる地域に対する誇りや愛着の形成やコミュニティの再生に関する視点、という3つの視点から、これまでの拡大成長型のモデルとは異なる持続可能な都市の土地利用に資する緑地計画のあり方を研究している。生命環境科学研究科Shigeaki TAKEDA【略  歴】 平成23年3月、博士(緑地環境科学)取得(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)。独立行政法人 都市再生機構、兵庫県立人と自然の博物館 研究員を経て、平成25年4月、大阪府立大学大学院生命環境科学研究科テニュアトラック助教に着任。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターより増田 昇 生命環境科学研究科 教授研究内容持続可能な集住環境のための緑地計画に関する研究千里ニュータウンの緑地の連続性評価泉北ニュータウンの緑道の利用性評価テニュアトラック教員紹介H25年度採用22

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