大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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テニュアトラック教員紹介岡田健司さんは、ナノ材料化学を専門とする気鋭の若手研究者です。これまで高いインパクトの論文を数多く報告しており、本学においても引き続き高品質の研究を進めてくれることを期待しています。専門分野:ナノ材料、多孔質材料、無機材料、有機-無機ハイブリッド材料工学研究科【略  歴】 平成26年9月、博士(工学)取得(大阪府立大学大学院工学研究科)。日本学術振興会 特別研究員、大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 助教を経て、平成29年11月、大阪府立大学大学院工学研究科テニュアトラック助教に着任。平成29年度文部科学省卓越研究員。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターより髙橋 雅英 工学研究科 教授研究内容チャレンジ精神を持ち、学生と共に常にワクワクした気持ちで研究に打ち込みたいと思います。そして、今後の柱となる研究を行い、世界トップレベルで競える研究者と成れるよう頑張ります。Kenji OKADA 「ナノテクノロジー」という言葉が一般的に成りつつあるように、我々の身のまわりでも多くのナノテクノロジーが利用されています。原子~ナノスケールの物質は、その距離や向きなどを3次元で制御することで、物質そのものが持つ機能を最大限発揮することができるだけでなく、新機能の創出も期待できます。しかし、有機分子やポリマー、金属ナノ粒子などの単分子~ナノスケールの物質を基板の上で積み木の様に自在に配置することは困難です。私は、多孔質材料である金属有機構造体(MOFあるいはPCP)のサブナノ~数ナノメートルスケールの均一かつ規則的な細孔を「箱」として用い、単分子~ナノスケールの物質の距離や向きなど制御して導入することで高機能電子/光学デバイスの開発を目指した研究を進めています。 単分子~ナノスケールの機能性物質を規則的に配列するための「箱」としてMOFの細孔を利用した研究はこれまでも行われており、優れた特性が報告されています。例えば、MOFの細孔に規則的に導電性分子を入れることで、高い導電性を示す薄膜の形成や、プロトンを持つ有機分子を規則的に包括することで、高いプロトン伝導性を示すなど先駆的な研究がなされてきました。そのため、MOFを利用した高機能デバイス開発が期待されていましたが、上記研究は単結晶粒子や多結晶薄膜のMOFでのみ達成されており、ゲスト分子の精密な配列制御は数μmの領域の空間に制限されていました。論文や学会で指摘されていたのですが、MOFを用いたデバイスの実用化のための最も大きな障壁の一つが実用的なスケールで細孔の向きをそろえるMOFの配向成長です。実用的なスケールでMOFを配向させることが出来れば、大面積でゲスト物質の配向性、間隔、機能性を制御する事が可能となり、ナノ多孔材料によるユニークな電子・光学デバイスの実現が期待できます。そのため、様々なMOFの配向成長の方法が提案、実証されてきましたが、大面積でMOFの配向成長、すなわちMOFの穴の向きを揃える事はできていませんでした(図1a)。そこで私は、既存の手法とは一線を画し、水酸基が表面に規則的に配列している金属水酸化物を基板として用い、表面水酸基とMOFの有機配位子の空間的な整合性をとることによるMOFのエピタキシャル成長および、配向成長に取り組んでいます。現在までに、格子整合性が良い金属水酸化物-MOFの組み合わせを選択することで、初めてMOFのエピタキシャル成長および大面積での配向成長に成功しました[Nature Mater., 2017, 16, 342](図1b)。本研究で得られた配向MOF薄膜は、図1で模式的に示したように既存の手法で合成したMOF薄膜と異なり、大面積(cmスケール以上)でナノサイズの穴の向きが一様に揃っています。そのため、異方性の分子を配列して入れることで、機能の増幅やこれまで実現できなかった新規応用が可能となります。例えば、合成した大面積で穴が一方向に向いたMOF薄膜に、異方的な形状の蛍光分子を入れることにより、試料に入射する偏光角度を変えることで色素が光ったり、光らなかったりする、蛍光をON・OFFスイッチング可能なセンチメートルスケールの薄膜を作製することにすでに成功しています(図2)。現在は、多彩な細孔サイズ、形状、化学的性質を有するMOFを大面積で配向成長させる技術を確立し、ゲスト分子の配向、間隔を制御し、MOF自体の機能性と相乗的に機能化させることで、多機能電子・光学デバイスの開発を試みています。ナノサイズの穴が同じ方向を向いた大面積配向MOF薄膜の実現は、応用展開を考える上で切望されていた結果であり、今後電子・光学デバイスの大幅な特性向上や、n型半導性を示す配向MOF薄膜の細孔内でp型半導体高分子を形成することで、MOF細孔一つ一つがトランジスタの役割を果すナノエレクトロニクスなど新規多機能デバイスの開発を行いたいと思います。H29年度採用ナノサイズの穴が同じ方向を向いた多孔質薄膜による電子/光学デバイスの開発岡田 健司図2.配向MOF薄膜中でのゲスト分子の配列。薄膜全領域で全分子が配列しており、外部刺激に対する応答性が薄膜面内で同一であり、高い機能性の発現が期待される。蛍光分子を入れることでスイッチングが可能な光学デバイスの形成に成功(左下)。図1.既存の方法で得られるMOF薄膜(a)と本研究手法により得られる配向MOF薄膜(b)の比較20

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