大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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テニュアトラック教員紹介将棋やチェスで人工知能が人間を凌駕する勢いがある一方、真に人間の役に立つ人工知能の在り方が問われる昨今、人間社会との融和を目指した汎用AIの研究は期待の大きな分野です。ヒトと人工知能の共存による豊かな社会の実現に向け、今後の活躍を期待しています。専門分野: 計算知能、ロボティクス、信号処理工学研究科【略  歴】 平成28年4月、Ph.D.(Computer Science)取得(University of Malaya、 Malaysia)。同大学博士研究員を経て、平成29年10月、大阪府立大学工学研究科テニュアトラック助教に着任。 平成29年度文部科学省卓越研究員。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターより本多 克宏 工学研究科 教授研究内容実用的な研究テーマに対して、他人と異なる着眼点を持つことを心掛けることで、実用性と独自性を兼ね備えた面白いサイエンスを創出していきたいと思います。増山 直輝Naoki MASUYAMA 近年、モノのインターネット(Internet of Things: IoT)化が進む社会においては多種多様な情報が容易に収集可能です。しかしながら、収集した大量の情報を全て保持し続けることは物理的に不可能であり、加えて、情報間の関係性や重要度を抽出し、実際的な問題に活用することは困難なタスクです。 最近の人工知能(Articial Intelligence: AI)に関する研究では、IoTの発展に伴うビックデータを効果的・効率的に活用する研究が盛んに行われています。特に深層学習の分野で大きな成功を収め、近年のAI研究のメインストリームとなっています。しかしながら、深層学習はある特定のタスク処理(物体認識、自然言語処理など)を得意とするいわゆる特化型AIに分類され、属性が異なる情報を横断的に取り扱うことや、新たな問題を発見する能力などが十分ではありません。今後ますます発展すると予想されるIoT社会では、人間の脳のように獲得した知識を活用し、既知の情報のみならず未知の情報に対するアプローチを自律的に思考可能な汎用型AIの研究開発が重要となります。 私は次に紹介するLifelong Machine Learningと呼ばれる汎用的AIの研究開発を行っています。 人間の脳は神経細胞のネットワークを適応的に変更することで、五感を通して入力される情報を処理し、短期・長期記憶として継続的に学習することが可能です。また、学習した情報を未知情報に対する学習に適用することで高速な学習を実現しています。加えて、学習した知識を活用することで新たな問題の発見も可能です。このような柔軟で適応力のある脳機能を計算知能で実現するためにLifelong Machine Learning(LML)と呼ばれる概念が提案されています。LMLは人間の脳機能を以下の3つに要約します。(1)継続的な学習が可能である(2)知識を蓄積して将来の学習に活用できる(3)知識を基にして新たな問題を発見する能力を有する 将来の更なる高度情報化社会においては、“自ら学び賢くなる”能力が必要不可欠と考えられており、LMLのような汎用的AIに関する研究開発の重要性が高まると考えられます。 LMLのような汎用的AIには、その定義から動的環境に対する高い適応性を有していると考えられます。したがって、未知環境においてもその判断に高い信頼性が求められる自動運転車やコミュニケーションロボットなどの自律制御システムへの応用が期待されます。 あるいは、人間の視線や動作を入力として学習を行うことで、学習知のみならず身体知のような言語化が困難な感覚の言語・視覚化を行い、熟練医師が行う手術や、伝統工芸士が持つ高度な技術のモデル化を通して、技能学習者に対する効果的な支援の提案なども期待できます。 本研究で扱う汎用的AIを通して、様々な分野で人間の代替としての役割、あるいは既存の社会システムの拡張と質の向上を通した人間社会への貢献を模索して行きます。H29年度採用人間の脳のような人工知能を目指して期待される工学的応用例Lifelong Machine Learningの概要特化型人工知能から汎用型人工知能へ実社会への応用Lifelong Machine Learning19

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