大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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テニュアトラック教員紹介多孔性配位錯体(MOF)は無限の可能性を秘めた材料である。当面は解決すべき課題の解決に最大限のエネルギーを集中すべきであるが、将来はMOFにこだわらず、21世紀の高度社会を支える機能性複合材料全般への研究を志向する、スケールの大きな研究者に育って欲しいと思う。専門分野: 化学工学、装置工学、粉体工学工学研究科【略  歴】 平成29年3月、博士(工学)取得(京都大学大学院工学研究科)。平成29年4月、大阪府立大学大学院工学研究科テニュアトラック助教に着任。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターより綿野 哲 工学研究科 教授研究内容これまでのテーマを、異分野との融合や共同研究を含めた裾野の広い研究へと展開していき、真理を追究することで工学的応用に向けた大きな成果を生み出し、得られた成果を魅力的に社会へ発信できる研究者になりたいと思っています。Shuji OHSAKI 多孔性配位錯体(Metal-Organic Framework;MOF)と称される多孔性材料が1990年代に開発され、近年、注目を集めている。MOFは、金属イオンと有機配位子からなり、サイズの揃ったナノ細孔が規則的に配列した結晶構造を有することが特徴である。金属イオンと有機配位子の選択により細孔構造や表面形状といった物理的・化学的特性の制御が可能である。これらの特徴に加え、MOFのなかには結晶性を維持しながら構造が大きく変化する構造柔軟性を有するものがあり、あるガス圧力でステップ的に吸着量が増加する特異な吸着挙動(ゲート吸着)を示すことが知られている。これらの特徴から、ガス貯蔵や分離、センサーなどへの応用が期待されている。これまでのMOFに関する研究の多くは、その構造の多様性や特異的なゲート吸着挙動に着目した新規MOFの探索が主であった。しかし、MOFの工業的応用に向けては、高価であることや低いハンドリング性能、ゲート吸着挙動の制御など解決すべき課題が山積みである。 課題克服に向けて、本研究ではMOFと粉体工学との融合による新規機能性材料の創製に試みる。医薬品や食品、電子材料といった分野の実用化に貢献してきた粉体工学をMOFに適用し、新規機能性材料を創製することが本研究の目的である。研究レベルに留まるMOFという新規多孔性材料に対して、粉体工学の見地から切り込むことで実用性の賦与を実現し、MOFの工業的応用を目指す。 現在では、「粒子サイズによるゲート吸着挙動の制御」と「造粒操作によるハンドリング性能の向上」を主に取り組んでいる。これまで、Zeolitic Imidazolate Framework-8というMOFを対象に、ゲート吸着挙動の予測・制御を報告してきたが(Chem. Eng. J., 313, 724-733(2017))、ゲート吸着の制御の幅が小さいこと(1‒2 kPa)が課題として残っていた。 そこで、ゲート吸着に伴い大きな構造転移を示す積層型MOF(CID-4)に着目し、合成方法または篩い操作によりサイズを制御することでゲート吸着挙動の制御に取り組んでいる。その結果、典型的な合成条件で得られた粒子を篩いにより異なるサイズのCID-4粒子で準備したところ、ゲート吸着が発現する圧力は10‒30 kPaの範囲で変化することを見出した(Joint Symposium of Asia Five Universities, P17, (2017 Osaka))。また、小型攪拌造粒機を用いて、一次粒子サイズが0.5 μmのMOFの造粒プロセスについて検討した。その結果、造粒条件により吸着性能を維持しつつ約300 μmまでの造粒に成功し、ハンドリング性能を評価する流動性は大きく向上することを見出した(              、一般-4, (2017 大阪))。他にも、シリカゲルや活性炭といった安価な多孔性材料にMOFをコーティングすることによる高機能性吸着剤の合成や、触媒と担持させることでナノリアクタの創製に取り組みたいと考えている。また、吸着剤としての応用のみでなくドラッグデリバリーシステムといった医療分野への応用に向けた検討を行う予定である。大きな比表面積を活かした薬物キャリアとしての利用やゲート吸着挙動を活かした刺激応用性の薬物リリースを可能とするシステムの構築が期待される。H29年度採用多孔性配位錯体をベースとした機能性粒子の創製大崎 修司粉体工学会秋季大会研究発表会18自己集合

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