大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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テニュアトラック教員紹介作田敦先生はすでに、次世代電池に関する日本を代表する若手研究者です。今後はその柔軟な着想力と独創的な研究戦略性を発揮されて、大学教員として、また世界的な研究者として大成されることを期待しています。専門分野: 無機材料化学、エネルギーデバイス工学研究科【略  歴】 平成23年3月、博士(工学)取得 (大阪府立大学大学院工学研究科)。日本学術振興会特別研究員、産業技術総合研究所研究員、同主任研究員を経て、平成29年4月大阪府立大学大学院工学研究科テニュアトラック助教に着任テニュアトラック教員としての抱負第1メンターより辰巳砂 昌弘 工学研究科 教授研究内容実用的な研究テーマに対して、他人と異なる着眼点を持つことを心掛けることで、実用性と独自性を兼ね備えた面白いサイエンスを創出していきたいと思います。作田 敦Atsushi SAKUDA 高安全・高エネルギー密度・長寿命な究極の電池である全固体電池や、リチウムイオン電池よりも軽量なリチウム-硫黄電池用の硫化物系材料の研究開発に強みを持っています。全固体電池では、有機電解液の代わりにリチウムイオンやナトリウムイオン伝導性の固体電解質を使用することで、根本的な安全性向上が見込めます。一般的に固体内をイオンが動き回るのは難しいことが知られていますが、最近ではリチウムイオン電池に使用されている電解液よりも速くリチウムイオンが動くことができる固体電解質が開発されています。その固体電解質ではリチウムイオンのみが伝導するため、副反応が生じにくく、長寿命な電池が実現できます。 高伝導性の固体電解質の使用だけでは高性能な電池は構築できません。例えば、下図左のように電極活物質粒子と固体電解質粒子が点接触していては、ほとんど電池として機能しません。高性能な電池を構築するためには固体電解質を通じて電極活物質にリチウムイオンを運び、さらに電極活物質と固体電解質の接触点で高速な電極反応を起こす必要があります。電極活物質と固体電解質、または固体電解質同士をいかに良好に接触させるが高性能化の鍵です。私たちは、電極活物質と固体電解質間で面接触を実現に向けて、硫化物系材料の特異的な性質を利用した解決策を提案しています。これまでに硫化物ガラス電解質を室温で粉末成形するだけで焼結が生じる「常温加圧焼結」現象を見出しました。硫化物系固体電解質の常温加圧焼結を応用することで、電極活物質と固体電解質の間での良好な面接触を実現し、全固体電池の高性能化が可能になります。現在は、高い成形性と電気的特性を併せ持つ固体電解質の開発を進めています。 金属多硫化物系電極活物質という新しいジャンルの高容量電極活物質を創出してきました。結晶から非晶質材料まで幅広く材料を開発し、リチウムイオン電池に使用されている正極活物質と比較して、活物質の重量当たり4倍以上の容量(理論エネルギー密度は2倍)を実現しました。下の図には非晶質金属多硫化物の電極反応の模式図を示しています。リチウムの出し入れに伴い硫黄同士の結合の形成解離や遷移金属(M)の配位数の変化が生じる特異な電極反応機構が生じていることも分かってきました。現在はナトリウムイオンの挿入脱離ができる新規な電極活物質の開発も行っています。また、放射光を用いた解析等にも挑戦しています。さらに、実用化に向けて、金属多硫化物系電極活物質を使用した全固体電池の試作も行っています(下図右)。H29年度採用硫黄系材料を用いた革新的な電池を創る全固体電池やリチウム-硫黄電池用の材料開発電極活物質と固体電解質を良好に接触させる技術の開発で全固体電池の高性能化リチウム-硫黄電池用の新コンセプト電極活物質の開発硫黄系電極の開発全固体電池の試作固体界面構築手法の例安全・高エネルギー密度・長寿命な究極の電池硫黄の酸化還元を利用する新コンセプトの電極材料17

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