大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
15/36

私は学部時代から大阪府立大学で学んで来たので、ここで教育・研究に携わることを非常に嬉しく思っています。今後は、自分の専門である有機光化学を基盤とした上で幅広く研究を展開し、学術・産業の発展に貢献したいと考えています。松井康哲先生は応用化学分野出身の初のテニュアトラック助教ですので、彼が活躍すれば後輩にとっても大きな励みとなるでしょう。今の大学は常に変革を求められます。グローバルな変革に対応でき、しかも独創性の高い研究を大阪府立大学で展開することが望まれます。松井 康哲専門分野:有機光化学工学研究科 光は、クリーンかつ無尽蔵なエネルギー源であり、太陽光発電や光触媒だけでなく、さまざまな分野での有効利用が期待されています。有機化学においては、古くから光を利用した合成反応の開発が進められており、環境にやさしい化学「グリーンサスティナブルケミストリー」の重要な一分野に位置づけられています。私は、「光」と「有機化学」をキーワードに、現在は主に以下の2つの研究を進めています。 ひとつのテーマとして、フローリアクターを用いた光化学反応による有機半導体の開発をおこなっています。フローリアクターとは、従来のフラスコ等と異なり、幅1mm以下の流路に溶液を流しながら化学反応を行う、新たな反応ツールのことです。特に光化学反応にフローリアクターを利用することで、光照射効率の向上、反応時間の短縮、および副反応の抑制などが期待できます。私は、フローリアクターでの化学反応をより高度にコントロールすることで、新たに設計した有機半導体分子の効率的合成を目的とした研究を行っています。有機半導体は、現在使われている無機半導体に比べ軽量であり、ウェアラブルデバイスの中核となることが期待されています。また、有機半導体の新規設計・評価においては、学内組織「分子エレクトロニックデバイス研究所」に所属し、分子動力学シミュレーション・デバイス作製の専門家らと協力し、研究を進めています。 もうひとつのテーマとして、光化学反応を利用した新規発光系の構築を行っています。通常、光化学的に発生させた励起種の開環反応では、基底状態分子(ラジカル)が生成するため、発光は観測されません。一方、「断熱反応」という特殊な化学反応を利用すれば、高エネルギー状態(励起状態)の分子が発生し、発光を取り出すことができます。例えば、ホタルなどの生物発光現象においては、そのような化学反応が巧みに利用され、発光として効率的に取り出されています。私は、メチレンシクロプロパンという分子の「断熱反応」を利用し、さらに、遷移状態制御という概念にもとづいて炭素‒炭素結合の開裂反応をコントロールすることで、様々な色調の発光が得られる反応系の構築に取り組んでいます。この反応系は、化学反応にともなう発光という現象が学術的に興味深いだけでなく、有機ELなどの発光材料としても期待できます。 以上に加え、光エネルギー変換などの様々な分野に興味をもっており、新テーマを開拓しています。Yasunori MATSUI 【略  歴】 平成25年3月、博士(工学)取得(大阪府立大学大学院工学研究科)。大阪府立大学大学院工学研究科 博士研究員を経て、平成27年4月、大阪府立大学大学院工学研究科テニュアトラック助教に着任。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターよりテニュアトラック教員紹介池田 浩 工学研究科 教授研究内容H27年度採用光を用いた新規化学反応系の構築フローリアクターによる新規有機半導体の合成高ひずみ化合物の断熱反応における発光化学原料生成物光照射・時間短縮・副反応の抑制14

元のページ 

page 15

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です