大阪府立大学テニュアトラック制 2017年11月更新
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研究資金や研究環境の面での支援を最大限に活用し、国内外の研究活動の範囲を広げ、新しい研究分野を取り入れながら、最大限の力を発揮できるよう頑張りたいと思います。ラフ集合理論は感性情報学に基づくビッグデータ解析でも活用が期待される分野です。データマイニング研究を通したヒトにやさしい情報化社会の基盤技術の実現に向け、今後の活躍を期待しています。生方 誠希専門分野:データマイニング、ラフ集合 近年、日々蓄積されるデータの量は爆発的に増加し、大規模データからのif-thenルール等の知識の抽出の必要性が高まっています。データから自動的に有用な知識を発見することをデータマイニングと呼びます。大規模なデータからif-thenルールを抽出することで、単に表を眺めるだけではわからなかった知識が得られ、人間が行う意思決定に役立てることができます。また、抽出したルール群を用いて未知対象のラベルを自動的に予測することもできます。 データマイニングの分野では、人間が持つ柔軟な情報処理を実現するための枠組みとしてファジィ理論やラフ集合理論、グラニュラーコンピューティング等のソフトコンピューティングの研究が盛んです。私は主にラフ集合理論に基づくルール抽出とクラス分類問題を扱い、その性能を向上させる研究をしています。 1982年にポーランドのZ. Pawlakが提案したラフ集合理論はデータを粗く見る・細かく見るという粒状性に着目し、任意の概念を塊(Granule)によって近似することにより、矛盾を含むデータや不完全なデータからの知識発見を可能としています。大規模なデータを大まかに理解し、活用するためには粒度調整の概念が非常に重要になります。J. W. Grzymala-Busseが開発しているデータマイニングシステムLERSを用いることで、ラフ集合に基づくルール抽出やルール群によるクラス分類を行うことができます。LERSはNASA(アメリカ航空宇宙局)のフリーダム宇宙ステーションの医療診断システムのエキスパートシステムとして用いられるなど、頑健で信頼性の高い手法として実績があり、今後の発展にもさらなる注目が集められています。 私の研究ではラフ集合理論に基づくルール群によるクラス分類問題に対し、様々なアンサンブル学習を適用することで分類精度を向上させることを目的としています。アンサンブル学習は与えられた表データの行や列をサンプリングすることで複数の異なる表データを生成し、多様な表をベースとしてデータマイニングを行い、多様な知識を利用するものです。これまでに、元の表データに一定の割合で欠損値を付与した表を多数生成することによるアンサンブル手法を提案し、その有効性を示しました。 人間が何らかの意思決定を行う際、全ての情報が与えられることはまれで、部分的な情報を用いていることが多いと考えられます。本研究のポイントは部分的な情報を意図的に生成することで、多様な状況に対応できる、柔軟な知識発見を行っているところです。不完全なデータの積極的な活用という面で、データマイニングの分野に貢献することを期待します。工学研究科Seiki UBUKATA 【略  歴】 平成26年6月、博士(情報科学)取得(北海道大学大学院情報科学研究科)。大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻助教を経て、平成27年4月、大阪府立大学大学院工学研究科テニュアトラック助教に着任。テニュアトラック教員としての抱負第1メンターよりテニュアトラック教員紹介本多 克宏 工学研究科 教授研究内容H27年度採用柔軟な知識発見で情報化社会の意思決定を支えるデータから自動的に法則を発見する情報を大まかにとらえる枠組み欠損値を付与した決定表に基づくアンサンブル学習13

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