大学広報誌OPU Vol.02「紡」
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堺市にあるファインプラザ大阪のプールに、毎週金曜日の夕方になると患者さんや障害者の方が集まってくる。奥田教授と増田助手が主催するスーツスイミングの参加者たちだ。股関節の手術、腰痛、脊髄損傷、脳卒中、頭部外傷など原因はさまざまだが、大きな浮力効果を持つ特性ウエットスーツを着用し、障害に応じて浮き身によるリラクセーションから積極的な水中運動まで、体幹を中心とした全身運動を行っている。「水中運動には多くの良さがあります。まず、水中だと浮力を受けて体重の負担が軽くなるので足の障害がある人でも立てたり、歩くことが容易になります。水圧があるので足の浮腫も軽減しますし、呼吸筋のトレーニングにもなります。何よりも大きいのは、陸上なら転倒することを恐れてガチガチになる人も、水中なら転んでも骨折などしないわけですから、大胆な挑戦ができることです」「こけても大丈夫」その気持ちを持つため、スーツスイミングでは最初に浮き身と寝返りをマスターする。前に倒れても、首と体を旋回させて仰向けになれば、スーツの浮力により浮いていられるので、息ができ、溺れる事故は回避される。体勢をゆっくりと立て直し、再び水中歩行なり水泳を続ければいいわけだ。自分で自分の身体をコントロールできるという実感が利用者の大きな自信につながる。「裸のつきあいが、またいいんですね。心理的なバリアが取り除かれて、お互いが助け合い、はしゃぎながら楽しめる。みなさん明るくなります」リーダー』として育て、その知識や手法を地域住民にフィードバックしてもらうところにあります」と今木教授。「定年を迎える団塊世代の豊かな知識や経験も生かせますし、彼らが地域デビューし新たな生きがいを見いだすきっかけにもなります」プロジェクトの運動指導をおもに担当している渡辺講師は、「参加者の大半は運動をほとんどしたことのない人たち。ここに来れば友だちができ、苦しいことも共有できます。そして病気が改善したことが分かるとモチベーションは自然に上がってきます」と語る。体育館では、1期生が2期生を指導しながらの卓球教室やチューブトレーニングがなごやかに行われる。リーダーを養成する3年サイクルでの健康教室は、長期目標のもとでやっていきたいというのがスタッフ一同の願いだ。総合リハビリテーション学部渡辺完児講師(左)、今木雅英教授(右)総合リハビリテーション学部奥田邦晴教授「せっかく道具があるんだから」とダイビングを始めた人たちも。60代、70代の障害者ダイバーたちには奥田教授も脱帽とのこと。多くの予防教室が開かれている中で、とりわけここが活発なのは「市民が主役」だから。それを支えるスタッフの熱意や、参加者との信頼関係も大きな要素となっている。スーツスイミングウエットスーツ着用の水中運動で楽しく明るくリハビリテーション糖尿病予防教室市民が主役の健康チャレンジ大作戦!今木教授は「疫学、公衆衛生学」、渡辺講師は「健康体力学」が専門。このほか、栄養学、口腔保健学の専門家と協力してプロジェクトを推進。厚生労働省の調査によると、糖尿病患者の数は約740万人と推定されている。糖尿病は自覚症状が少ないため、放置しておくと全身のさまざまな臓器に障害をもたらす。このため、羽曳野市では大阪府立大学との連携のもと、糖尿病患者を対象に平成17年度より「健康チャレンジ大作戦」を展開した。現在も週に2回、応募した地域住民が大阪府立大学に集まり、栄養改善、口腔管理、運動習慣の指導を受けている。平成17年度募集の1期生のデータによれば、体重、総コレステロール値、HbA1c値すべてにおいて改善のきざしが見られ、2年目にはいった今も落伍者なくほぼ全員が教室に参加している。「このプロジェクトの素晴らしいところは、糖尿病を自ら克服した人を『健康34理学療法士時代に趣味のダイビングからスーツスイミングを発想。患者さん2人と始めたこの企画も2005年に20周年を迎え、参加者も約30名に。

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