大学広報誌OPU Vol.02「紡」
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ピュータ同士がチェスをして、学習しながら自分たちで賢くなっていく」。コンピュータは自律的に学習し、進化していくわけだ。ロボカップは、2050年までにロボットのサッカーチームが人間の世界チャンピオンに勝つという大きな目標を掲げて開始された国際的ランドマークプロジェクトだ。石渕研究室では、ソフトウェア的に最も高度な戦略・戦術が要求されるシミュレーションリーグに参加しており、その名は『チームhana』。『チームhana』は、これまでファジィシステムに基づく行動獲得の研究などに取り組んできた。戦略・戦術に関しては、進化型計算手法を用いて自動的に高度化させるというアルゴリズムを用いてきた。つまり、生物の進化と同じで、適応したもの(強い方)を残すという手法で徐々に強いチームを作っていった。「残念ながら、チームhanaは、世界大会には出場したものの予選敗退しました。人間のワールドカップ日本代表と同じですよね(笑)。しかし、我々は5年以内には世界大会でのメダル獲得をめざしています」コンピュータが自分で学習し、進化していくことがもっと進むと、どういったことが起きるのだろう。「従来の歩行ロボットは、開発者が歩くプログラムを入れているのですが、これは実は大変な作業です。しかし、人間の赤ちゃんがハイハイしたり、よろよろしながら立ち上がり歩くように、ロボットもそこに転がしておいたら、最初はなんだかバタバタしているけれど、学習しながら、やがて歩き、走るようになるわけです。コンピュータがプログラムを自分たちで作るようになれば、人間の作業が軽減され、もっとおもしろい夢のあることに我々は挑戦できるようになります」石渕教授の最終的な研究目標は、「柔軟で高度な適応能力と学習能力を持つ知的システム開発」。研究室では石渕教授の指導のもと、それぞれがファジィデータマイニング、複雑な大規模システムの最適化を行う進化型多目的最適化、サッカーなどの対戦型ゲームにおける行動戦略の学習と進化、仮想的な取引市場における取引戦略の自動獲得などを主要な研究テーマに掲げ、取り組んでいる。今世紀は情報爆発の時代といわれ、膨大な量の情報がコンピュータに蓄積されている。それはすでに人間の情報処理能力をはるかに超えている。この情報の中から有益な情報を取り出す(データマイニング)ときに、ファジィシステムを用いるのがファジィデータマイニングである。ファジィデータマイニングだと、小売店舗における販売情報から、「気温が高いとアイスクリームはよく売れる、気温が非常に高いとアイスクリームは少し売れなくなった」というような、あいまいさを含む知識を取り出すことができる。「私の研究室では、無味乾燥な数値の羅列である大規模数値データから、人間が容易に理解できる言語的な知識を取り出すファジィデータマイニングの研究を長年行っており、その成果は英語の本として出版されています。将来的には、正確な知識の獲得および分かりやすい知識の獲得というような互いに競合する目的を持つ『多目的知識獲得』という研究分野を切り開いていくことも考えています」と石渕教授は語る。学生の教育に関しては、プログラミング能力の向上とともに英語能力の向上にも力を入れている。特に大学院生には、国際学会での発表を課しているので、英語のプレゼンテーション能力の強化は必須だ。石渕研究室では週4回、リスニングのレッスンがある。BBCやAFN、VOAなど海外のニュースのテープを聞き取り、石渕教授の用意した問題の穴埋めをしていく。「4年生では全然ダメでも、大学院生になると聞き取れるようになります。TOEICスコアも1年で100点ずつ、3年で300点は上がりますよ」石渕研究室の卒業生は、プログラミングができて英語も話せるということで実業界の評価も高く、英語を使う職場に配属されるケースが多いそうだ。最後に石渕教授から若い人たちへのメッセージである。「研究者になるにしても技術者になるにしても、世界で通用する人間になるには、若いときから国際的に勝負していくことです!」世界に通用する研究者になるには、若いときから国際的に勝負しないといけません。だから、大学院生には毎年のように国際学会で発表させています。工学部 工学研究科ロボカップサッカー世界大会に5年連続で出場情報爆発時代こそ、自分に有益な情報だけを取り出すシステムが必要人間の赤ちゃんのようにロボットも自分で歩き出すようになる教授と学生の距離の近い、和気あいあいとした会話が飛び交う。国際学会発表のために週4回英語のトレーニング14R

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