大学広報誌OPU Vol.01「新」
8/44

―栄光の時代も、経営危機の時代も経験されたわけですが、そこから学ばれたことはありますか?当時の輝きをどんどん失い、いくらあがいても日産が自分が思っていた方向とは違う方に行く1990年代は、非常につらいものがありました。しかし、輝きをもう一度取り戻したいという強い思いはずっと私の中にあり、それがエネルギーになっていました。そして今日もたらされた日産の復活を、ゴーン社長のリーダーシップによるものから、従業員全員に支えられた長期的なものにしなければなりません。つまりゴーン社長一人のマネジメントから、組織としてのマネジメントへ、その円滑なトランジションこそCOOである私の役割だと思っています。―ゴーン社長の言葉で印象的だったものは?私が本当の意味でのグローバル化を感じ取ったのは、ゴーン社長と知り合ってからです。ゴーン社長が最初に「日産はマルチオペレーション企業ではあるが、真のグローバル企業ではない」と言ったときには、真意が理解できませんでした。日産は世界でビジネスをしていて、世界に工場があり、世界にお客さまがいる。なぜ、グローバル企業ではないのかという疑問でした。そこで学んだのは、真のグローバルマネジメントとは、グローバルな人財をグローバルに活用し、世界のそれぞれの国でそれぞれの事業として発展させていくということです。日本を中心に世界をコントロールするのではなく、それぞれが日産の分身として同じビジョンを持ち、グループの仲間として発展、チャレンジしていくということでした。―日本の会社だから上のポストは日本人、といったかつての考え方では、グローバル企業にはなれないということですね?アメリカ、ヨーロッパ、タイ、中国と、世界の人が日本人といっしょに働いています。日産がグローバルに発展していくためには、適材適所でこうした人財を活用し、みんなが切磋琢磨して能力を出し切り、それぞれの国でそれぞれの事業を発展させていくことが大切です。こうしたところに何らかの形で日本の大学が寄与してくれると非常におもしろいと私は思っています。―しかし、グローバル化が進むと産業の空洞化も進みませんか?日本がグローバル化を進めると、日本に工場がなくなって、工業的には遅れた国になるのではという懸念もあるようです。しかし、自動車産業に限って言えば、日本での生産台数と海外での生産台数はいまも変わりません。ともに伸びているのです。それは、日本人が高い品質の車を作り、コストに対しても調整する。日本人が持つ倫理性、勤勉さが、自動車産業を支え続けているのです。これからも世界に通用する技術を開発し、ものづくりに対する真摯な態度を忘れず、改善を繰り広げる。これが日本経済の強さです。これからもそうあってほしいと私は願っています。経営危機に陥った日産で、忸怩たる思いで奔走した日々。「かつての輝きをもう一度」と、心の中ではずっとエネルギーを蓄えていた。ゴーン社長は「日産はマルチオペレーション企業ではあるが、真のグローバル企業ではない」と。日本を中心に世界をコントロールするのではなく、世界の日産で働く人財が、互いに切磋琢磨して能力を出し切り、グローバルに発展していってこそ真のグローバル企業になれる。7

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です