大学広報誌OPU Vol.01「新」
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てきては拡散する、リズミカルな動きがあります。これは死んだ細胞の研究では決して分からなかったことです」現在、さまざまなゲノムのプロジェクトを通じて、約半分の遺伝子の役割は解明されてきたが、残りの半数がまだ解析できていない。この中には「ひょっとして動きを伴うものが数多くあるのでは」と杉本教授は予測する。いまや生きた細胞の画像解析は、生命科学の研究に必要不可欠なツールとなっており、さまざまな研究分野での活用が期待されている。「教科書を通じて、頭の中でしか理解していなかった細胞分裂。生きた細胞が動き、分裂していくプロセスを見れば、非常にドラマティックで、感動します!」まずシャーレの中で、生きた細胞に蛍光タンパク質の遺伝子を入れて培養。色のついた細胞を選びだして撮影する。撮影後に、膨大な画像データの解析作業にかかる。Bioscience andInformatics現在、最も利用されているのが創薬の分野で、杉本研究室とある会社の間では共同研究も進められている。「一番注目されているのが、細胞分裂を抑える抗ガン剤の研究です。今後、細胞内の神経伝達物質を可視化できれば、それを遮断する薬の開発にもつながるでしょう」杉本教授の次なる目標は、薬自体を可視化することだそうだ。「実際に薬が病気を抑える働きがあるのかどうかの研究は、可視化細胞を使って現在も進められていますが、もし、薬と細胞の両方に色をつければ、細胞内で何が起こっているのかを実際に見ることができます。そして、これは夢のまた夢かもしれませんが、人間にある2万数千個の遺伝子全部に色をつけてみたいですね。そうすれば、一度に、いつどこで何が起こっているのか分かりますから」細胞の中でのミクロの世界のドラマが、生物の多彩な生命現象の解明につながっていく。「本当にインパクトのある研究です」生命環境科学部・生命環境科学研究科18

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