大学広報誌OPU Vol.01「新」
17/44

れる。坂東研究室で現在、この研究に直接携わっているのは助教授と学生1名、2人のルーマニア人の博士研究員である。「超音波科学はヨーロッパで進んでいて、香料や様々なものを抽出しています。ルーマニアと共同研究が始まったという経緯もあり、それがバイオディーゼル燃料の開発に結びつきました」当然ここでの会話は英語である。日本では新しい学問分野である超音波科学とバイオディーゼル燃料に興味を持った学生が、今年は数名研究室に入ってくる予定だ。環境問題の解決には、短いスパンで緊急避難的にやらないといけない対策と、将来を見すえた持続する発展のためになすべきことがある。バイオディーゼル燃料は当然その後者の方に入るが、坂東教授は、「我々の技術は最善のものではないかも知れませんが、コンセプトとしては間違っていません。将来発展させていくべき技術なのです」と語る。そのために必要なのは若い研究者たち。坂東教授は最後に、高校生や大学生たちにメッセージを送る。「若い人にはいろんなことに興味を持ってほしい。興味を持てばパワーを発揮する。そして問題解決の歓びを知ってしまったら、人間は自分自身でどんどんいい方に転がっていきます」し、純度が高く低コストのバイオディーゼル燃料を安定的に製造しようというものだ。「化石燃料が枯渇していくのは明白な事実です。国家的に見ても、エネルギー資源の安定確保のためにエネルギー源は分散していかなくてはいけません。バイオディーゼル燃料は、木材などをアルコール発酵させて作ったエタノールと、食物油といったバイオマス由来の原料から取り出すことができるので、非常に大きなメリットがあります」坂東教授のこの研究は、文部科学省の21世紀COEプログラムに採択された研究の一環でもあり、環境省の廃棄物処理等科学研究費補助金の対象研究としても採用され、注目を集めている。環境対策が非常に進んでいるドイツでは、バイオディーゼル燃料が実用化され、全体の1%以上を占め、2010年までに約6%まで高めようとしている。しかし、その製造法は薬品を入れて機械で撹拌する方法に頼っている。「超音波を使う我々の方法では、常温・常圧でよく、機械撹拌のように大がかりな装置は必要ありません。ですからプラント化したときに、安全確保のための大がかりなシステムにしなくてすみます」超音波を利用する装置を使えば、機械撹拌法に比べれば約半分にまでコストを下げられるのではと考えられている。京都議定書が採択されて、日本は2008〜2012年の間に、1990年の排出基準の6%減を約束しているが、現状のままでクリアするのは難しい。そこで政府が打ち出そうとしているのがD5と呼ばれる計画。これは現在のディーゼル燃料にバイオディーゼル燃料を5%混ぜてもよいとするものだ。政府の方向性としては、間違いなくバイオディーゼル燃料の実用化に向けて動き始めていると思わ工学部・工学研究科坂東 博教授Hiroshi BandowProfile1993年、大阪府立大学工学部助教授に就任。2000年、教授就任。研究テーマは「窒素酸化物および含窒素酸化物の大気科学」。座右の銘は「何かが起きるところには必ず原因がある!?」。趣味は、野球をはじめとするスポーツのTV観戦。工学部・工学研究科「ドイツでは、既にディーゼル燃料の1%以上をバイオディーゼル燃料が占め、2010年までには約6%まで高めようとしています。その製造法は機械撹拌法ですが、我々は超音波を使います」植物性の油とアルコール(メタノールまたはエタノール)を超音波を使って混ぜるとバイオディーゼル燃料ができる。近い将来に実用化をめざしたい興味を持った学生は大きなパワーを発揮する木くずなどに超音波を当てることでバイオマス起源のエタノールを分離精製。この技術は特許申請中!大学の環境測定車で走行実験を重ねる。公道での走行実験のため、バイオディーゼル燃料のみを使用して走るクルマとして登録を検討中。Environmental Chemistry16

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です