大学広報誌OPU Vol.01「新」
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環境中、特に大気中で何が起こっているのかを研究テーマとしているのが坂東研究室。現在は、個々の窒素化合物の分別定量と、大気環境中や水中での変換過程の解明に力を入れている。窒素化合物は、都市大気においてオゾン濃度や酸化能に大きな影響を与え、さらにその酸化能が他の物質の動態に非常に大きな影響を与える、最も解明しなければならない物質である。私たちの街を健康で住みよい環境にするために、排ガス中の汚染物質をいかに除去するか…という研究から、バイオマス由来の原料を使う環境にやさしいバイオディーゼル燃料が生まれた。大気中には様々な粒子が浮かんでいるが、その中には肺の奥まで入り、ガンを誘発することもあるような非常に有害な粒子も含んでいる。特に石油からとった軽油を使っているディーゼル車の排気ガスから出る粒子には、こうした危険物が多く含まれている。また、ディーゼル排気ガスは環境中に放出されてから大気中の窒素酸化物と反応して、さらに突然変異を起こすようなこともあるニトロ化PAH(多環芳香族炭化水素)が生成されることも分かってきた。坂東研究室では、こうした物質がどのような反応により生成されるのか、どのくらいの速度で生成されるのか、変異原性が強いのかなどを調べている。「PAHは高校の化学でも学ぶ”亀の甲“(ベンゼン環)が4つも5つも連なった形をしています。ベンゼンやトルエンを含んだ燃料を燃やすと必然的にPAHができるので、そうしたものを減らせば、大気中のPAHも格段に下がるわけです」そこで生まれたのが、ベンゼンやトルエンを含まない植物油を原料とするバイオディーゼル燃料である。「油とアルコールからバイオ燃料ができることは、化学反応としては昔から知られていました。しかし、もともと混ざりにくいもの同士を混ぜるために、超音波を応用したらどうなるのかということで始まったのがこのプロジェクトです」と坂東教授は語る。まず、超音波によりバイオマス(木くずなど)から常温・常圧の条件で、ほとんど薬品を添加せずセルロースなどを高純度分離し、ブドウ糖を高速生成するとともに、ブドウ糖等のアルコール発酵を促進させる。さらに、それで得られた低濃度のエタノール水溶液から、超音波噴霧器により付加価値の高い無水エタノールを分離精製する。こうしてできたバイオ起源の無水エタノールとパーム油等を使用人体に極めて有害なディーゼル排気ガス超音波を利用して、植物油とアルコールからバイオ燃料を作る!すべてバイオマスからできた環境にやさしいバイオディーゼル燃料を開発。工学部工学研究科環境化学研究グループ坂東研究室15

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