大阪府立大学 環境報告書デジタルパンフレット
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はユネスコを中心として国際的な取り組みが進められています。わが国におけるESDの推進に先駆的な役割を果たされ、学内では2015~2018年度に副学⾧を務められた吉田敦彦先生にお話を伺いました。 Q. 吉田先生の主な研究分野やテーマについてお聞かせください。 私は、そもそも人間とはどのような存在なのか、人間観にまで遡って教育のあり方について根本的に考える 「教育哲学」や 「教育人間学」を専門としています。 教育学と聞くと学校の先生になるための学問という印象を持たれる人が多いですが、教育学は人が人間らしい人間として幸せに生きていくために、周りの人々とどのように関わっていくべきか考える広範な学問分野です。 Q. 吉田先生がESDに取り組まれるようになった契機は何ですか。 私が教育学を学び始めた頃には、「人間中心」の教育はポジティブな意味で用いられていました。しかし今では、「人間中心」の考え方は人間の繁栄だけを追求するため、周囲の生態系を傷つけ環境を破壊すると指摘されるようになりました。 1992年にブラジルで開かれた地球サミットの後、「人間中心」の教育のあり方を変えていかなければ世界は持続不可能になってしまうという声が高まり、ホリスティック教育ビジョン宣言が出されました。 ホリスティック教育とは、人間を全人的に、かつ社会や自然との関わりから領域横断的な立場など総合的に近代教育を捉え直すもので、ESDの基本となる考え方です。 私はその宣言の冒頭に書かれた「生態系の病と教育の病、両者の病の根は同じところにある」という一節に心を掴まれ、その後、ESDやホリスティック教育について研究するようになりました。 Q. ESDはその後どのように展開していったのでしょうか。 環境問題や自然保護、環境教育に関心が高まる一方、その解決には、それと対立しがちな社会の開発や発展のあり方を問うことが必要だという気付きが深まっていきました。 2002年のヨハネスブルグサミットでは、日本の小泉首相が国際社会に 「持続可能な開発」というコンセプトの重要性を訴え、ESDを提唱しました。その結果、ユネスコがイニシアティブを取り、2005年から 「ESDの10年」を始めることになりました。 私は2005年3月、国立教育政策研究所と文部科学省が主催し、 「ESDの10年」のキックオフとなったシンポジウムで司会を務めました。そこには 「環境教育」、「開発教育」、「人間の価値観の教育」の3分野の専門家がパネリストとして参加され、私はそれら異なる分野の専門家の考えをホリスティックな観点からまとめるモデレーターの役割を果たしました。 Q. ESDとSDGsの関係について教えてください。 持続可能な開発が重要であるとするESDの考え方は、教育界だけでなく政治や経済などにも浸透して、SDGsに発展しました。 ESDには環境、経済、社会の三本柱があり、それを文化が支えています(右図2-4参照)。これらを領域横断的に捉えることが非常に重要になってきます。 ~持続可能な開発のための教育()の重要性~ 吉田 敦彦教授 (人間社会システム科学研究科) 図2-4 ESDの3本柱とそれを支える文化 OPU University Social Responsibility Report18

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