平成30年度版(平成29年度報告)環境報告書
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第2章 環境研究・環境教育 1.琵琶湖における外来魚問題の沿革 滋賀県の琵琶湖では、オオクチバスやブルーギルといった外来魚による在来種への食害が問題となっており、外来魚の駆除事業が継続されてきました。また、琵琶湖はオオクチバス等を対象とした釣りが非常に盛んなことから、平成15年に、条例により釣り人が釣り上げた外来魚のリリースを禁止するとともに、釣り上げた外来魚を回収するためのボックス等を琵琶湖沿岸域に多数設置しました。しかし、リリース禁止自体には罰則規定がなく、現在でもリリースしている人が多いと思われます。 2.調査方法 リリースの実態を把握するとともに、釣りをする際の行動要因を明らかにするため、アンケート調査を実施しました。平成24年度に滋賀県が実施した琵琶湖夏季利用状況調査に従い、琵琶湖沿岸域において釣り人が多いと考えられる地域を調査地としました。平成28年8~9月の土日を含む10日間に、調査地で釣りをしている人にアンケート票を367部配布し、81部を原則郵送にて回収しました。質問項目は、リリースの頻度やリリースする理由、リリース禁止への賛否、琵琶湖の外来生物問題への認識等です。 3.リリースの実態とその要因 琵琶湖沿岸域の釣り人について、その過半数は県外から来た人であり、全体的に年齢層に偏りは見られませんでした。リリース禁止は9割以上の釣り人に周知されていたにも関わらず、必ずリリースする人が4割弱、リリースする場合がある人は2割強、合わせて、釣り人の6割がリリースしていることがわかりました。また、リリースの要因には、「外来魚という釣り資源への保護意識」、「琵琶湖における外来生物問題への認識の低さ」、「リリース禁止への反対意識」といった意識的要因と、「回収ボックス等がない・遠い」という釣り場の環境的要因が存在することがわかりました。 4.調査で苦労したこと 調査時は琵琶湖南部から北部にかけてアンケート票の配布を、自転車あるいは徒歩で実施したので体力面では非常に苦労しました。また、調査の初期段階ではアンケート票の回収量が思うように伸びず、日にちが経過するにつれ、焦ることも多々ありました。さらに、アンケートを断られることも少なくないので、調査を進めながら、どのように話せばアンケート票を受け取って頂けるのかを試行錯誤しながら調査を続けました。 5.これからに向けて 前述の通り、滋賀県では外来魚駆除を実施しており、外来魚の推定生息量も平成18年度以降は減少傾向にありましたが、平成25年度から再び増加に転じました。そこで、リリースを減らすことで外来魚の減少に寄与することが可能だと思われます。 リリースの実態とその要因が分かれば、講じるべき対策について考察が可能です。今後は、それらの対策について、沿岸域だけでなく、沖で釣りをする人を含め、琵琶湖全体でどれだけの効果を有するか、それらの対策は実行可能なのか、実行可能ならば具体的にどのようになされるべきかについても視野に入れていきたいと考えています。 琵琶湖における外来魚の リリースの要因 二反田 広希外来魚回収ボックス (H28.9/彦根市) リリース禁止の看板 (H29.1/大津市)23大阪府立大学環境報告書

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