平成28年度版(平成27年度報告)環境報告書
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大阪府立大学環境報告書 35 す。溶存酸素の季節変動を図3-3に示します。同図よ り、溶存酸素は0.01~17.42 mg/lで変動しており、冬季に高く、夏季に低いことがわかりました。 一般に溶存酸素量が3mg/lより低くなると、魚類等の水生生物の生存が難しくなり、2mg/lより低くなると嫌気性分解によって、硫化水素等の悪臭物質が発生するとされています。今回の調査では、12月を除く全ての月に溶存酸素量が3mg/l以下となる日が存在し、さらに7月及び8月といった夏季においては、溶存酸素が2mg/l以下となる日が多く、夏季においては生物の生存が難しいことが考えられます。 ヤマトシジミの個体数 ヤマトシジミの個体数の調査は2012年6月から現在まで毎月行っており、2016年3月まで46回の調査を行ってきました。2012年6月から2016年3月までのヤマトシジミの個体数は1m2当たり169~1,240 個で変動していました。図3-4を見ると、6~9月頃の夏季に個体数は多くなっており、反対に11~2月頃の冬季には個体数が少なくなっていました。特に6月に急激に個体数が多くなっていることから、6月頃に新しいヤマトシジミが加入していると考えられます。 これからに向けて 私が初めて調査に参加した時は、何をやっているかもわからない状態でしたが、その後研究を続けていくうちに水質やヤマトシジミの個体数は季節変動していること等が調査を通してわかるようになりました。また、机上やデータ上だけではわからない現場の四季折々の状況を現場調査で感じることができ、とても大切な調査だと痛感しました。 私たちが調査の対象としている干潟やそこに生息する生物達は、私たちに非常に多くの恩恵を与えてくれます。これからもそれらを守っていくためには人間の都市活動との関係等を把握しておく必要があります。しかし、都市域の生態系は物理・生物・化学的な様々な要素から成り立っており、その関係や生態系はとても複雑で、いまだに明らかになっていないこともたくさんあります。研究をしていると、分からないことを解明したり、実験方法も手探りで行うしかなかったりと、難しく、思い通りにいかないことも多くあります。一方で、そこがこの研究や調査の面白いところだとも感じています。 自然環境が相手なので、調査や実験がうまくいかないこともありますが、淀川河口干潟の生態系について徐々に明らかになってきました。しかし、それらは研究の一部であり、取り上げることができていないことも多く、未解明な部分が残っています。これからも調査や実験を行うことによって都市域における生態系の謎を少しでも多く解明することが、今まで、そしてこれからの私の目標です。 担当:野元 あい (工業高等専門学校土木工学コース専攻科) 図3-4 個体数の推移 050010001500610261026102610220122013201420152016密度(個) ヤマトシジミの個体数調査の様子

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