平成28年度版(平成27年度報告)環境報告書
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大阪府立大学環境報告書 33 一方、ブナなどは日長によっても生育が左右されると考えられています。これらの樹木は寒い地域に分布していますが、この地域では日長が長くなると霜がおりにくくなるので、植物はこの条件に応答していると考えられます。ブナは日長が長くなると、山頂からふもとまで一斉に萌芽します。気温は山の位置によって異なりますが、日長はその位置に左右されないからです。 図3-2 日平均気温に対するDTS の推移 ただし、気温15℃となる日におけるDTSが1日分に相当する。 Q DTSはどのような分野に応用されているのですか。 ミカン、リンゴ及びナシなどの果樹栽培にも用いられています。DTSを利用すれば、開花日が推定できるため、摘花や授粉作業をする時期を知ることができます。他にも、過去から現在にかけての気温変化と、将来の気温変化予測値を組み合わせて、将来のサクラの開花日を予測することもできますが、気候変動も考慮するか否かによっても予測値は変化します。 Q 植物を‘計測器’として用いる例はあまり聞いたことがありません。 植物を‘計測器’として用いることは1950年代以前では盛んに行われていました。器械の計測器はバッテリー切れの恐れや、決められた条件で計測しないと測定結果に誤差が生じるなどの問題がありますが、植物はこのような問題点はありません。植物は日々の気温に応答して形態変化するため、その形態から生育してきた環境を知ることができます。 表3-1 2007年における八森の御所の台ふれあいパーク(秋田県八峰町)のサクラ開花日までのDTS の推移 DTSの計算は1月1日を計測開始後1日目として始めた。そしてDTSの積算を始める起算日は、八峰町の場合は44日目(2月13日)と決めた。実際の開花日は103日目(4月13日)だった。起算日以降、DTSを足し合わせた値が110日目(4月20日)になって初めて23.8日を超えたため、110日目を開花日と推定した。波線は記録の省略を示す。 参考文献 Yasuyuki Aono and Chiaki Moriya, 2003 A Generalized Model to Estimate Flowering for Cherry Tree (Prunus yedoensis) Considering both Processes of Endodormancy Completion and Development. 農業気象 ( J. Agric. Meteorol. ) 59 ( 2 ) : 165 – 177 . URL http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq1.html インタビューを終えて ソメイヨシノのようなクローン植物は、環境応答が個体間で差が少ないため、実測値と誤差が少ない開花日の推定式(DTS)が算定できることに驚きました。植物体でない測器しか使ったことがなかったため、植物が計測器として使えることが新鮮でした。人工施設内で接ぎ木植物を開花させる場合では、DTSと環境調節を組み合わせて、開花日を自由にコントロールすることが広がっていくかも知れません。 担当:花田 実世(E~きゃんぱすの会) 012345-2002040温度変換日数DTS気温℃

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