平成28年度版(平成27年度報告)環境報告書
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大阪府立大学環境報告書 13 制につながる可能性がある点、次に油糧植物を山間部の地域に植林することで、その地域の住民の収入が増加し、貧困世帯が減少する可能性がある点、山間部では所得が低い世帯が多いのです。そして植林による災害防止効果等があげられます。現在でもBDFは生産されていますが、それらの原材料の多くはトウモロコシ等の食用作物です。 これらの植物が燃料用に回されると食用のものが減ることにより食品の値段が高騰しかねません。従って食用にならない植物の種子を用いてBDFを生産することが必要です。例えばJatropha carcus L.(ナンヨウアブラギリ)は種子内に非食用の油脂を30%ほど含み、貧栄養土壌でも生育します。またベトナムにはベトナム戦争のために枯葉剤で汚染された土地があります。この土地でも非食用植物ならば体内に枯葉剤の物質等が入る恐れがありません。さらに食べられない植物なので食用作物と生産耕地を奪い合う必要がありません。ナンヨウアブラギリ以外にもカントンアブラギリ、ポンガミア、ゴム等もBDFに利用しています。近年ではハイビスカスからもBDFを製造しようとしています。ハイビスカスは草本植物なのでナンヨウアブラギリなどの木本植物よりも成長が早いです。油糧植物からBDF原料の油や薬効成分を取り出した後には、搾りかすが残ります。それも油糧植物の栽培地に肥料としてまけばゴミになるものが発生しません。また、BDF生産時にはグリセリンも同時に生成します。今まではグリセリンは廃棄していたのですが、これも燃料に使用できることが明らかになりました。今までゴミとされていたものを有効利用することが必要です。例えばナマズを切り身にした後に残ったゴミもナマズ油として利用する研究も行っています。ナマズの切り身の生産量が多いベトナムにとってこの技術は必要なものとなるかも知れません。現在はBDFを他の燃料と混合して利用していますが、高品質のBDFならば混合せずに使用できます。 ベトナムのハロン湾では共溶媒法で製造したBDFを100%使った観光船を運航しています。環境に配慮した燃料を使っているため、環境保全への興味が高く所得が高い人が乗ってくれます。現在はヨーロッパからの観光客が多いです。 本プロジェクトは平成28年10月に終了しますが、その後もBDFの研究を別の形で引き継いでほしいと思っています。 インタビューを終えて BDFを化石燃料と同程度の価格に引き下げるために、油糧植物からより高い価格で取引される成分を抽出しようしていることを初めて知り、全体で収支をプラスにしようとする視点が柔軟だと思いました。また前田先生がベトナム人留学生の方に「日本に来て幸せですか」と尋ねられ、“yes”と答えていたのが印象的でした。技術面の協力だけでなく、他国で育った人も幸せだと感じられる環境作りが必要だと思いました。社会的環境及び自然環境も居心地がよい社会を作っていきたいです。 引用文献 SATREPS HP:http://www.jst.go.jp/global/about.html http://www.jst.go.jp/global/kadai/pdf/h2304_h26.pdf 太陽経済の会の講演資料 : http://www.taiyo-keizai.com/biofuels2012/pdf/Yasuaki%20MAEDA.pdf 担当:花田 実世(E~きゃんぱすの会) 異なる油糧植物から製造したBDF 油糧植物の種子 左から原料がカントンアブラギリ、 ポンガミア、ナンヨウアブラギリ

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