平成28年度版(平成27年度報告)環境報告書
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12 OPU University Social Responsibility Report 地球規模課題対応国際科学技術協力プロジェクト(以下、「SATREPS」)は他国と共同で地球環境を保全しつつ技術開発を進めるプロジェクトです。その中の環境・エネルギー分野で地域連携研究機構特認教授の前田泰昭先生が代表を務めるプロジェクトは、ベトナム及びインドシナ諸国で非食用植物の種子を原料としたバイオディーゼル燃料(植物由来の燃料。以下、「BDF」)の生産及びこの使用が環境に及ぼす影響調査を行っています。 今回は前田先生とSATREPSを介して大阪府立大学で研究を行っているベトナム人留学生のLe Thi Ngoc Hanh(レ・テイ・ゴック・ハイン)さん、Le Bang Anh(レ・バン・アイン)さん、Trin Thai Ha(チン・タイ・ハ)さんの3人にお話をうかがいました。 Q 留学生のみなさんは何を研究されているのですか。また将来はどういったお仕事をされたいですか。 ハインさん:私は前田先生の発明した共溶媒法によって低価格で高品質なBDFを製造する技術について研究しています。現在主流の機械撹拌法ではBDFを1日に250ℓ製造し、製造過程で石鹸が生じます。共溶媒法では2,000ℓのBDFを生産することができる上に石鹸がほとんど生成しないため無駄が少ないです。将来はベトナムの母校に戻り、学生たちに油糧植物からBDFと薬効成分を抽出する方法を教えたいです。 バンさん:私は油糧植物からBDFだけでなくビタミンEやフィトステロール(コレステロール降下剤)等の薬効成分を抽出する研究をしています。例えばVernicia montana(カントンアブラギリ)では種子1g中に1.5mgのビタミンEが含まれており、ビタミンEは紫外線対策にも有効です。これらの成分は高価格で取引され、薬効成分の生産量が増加すればBDFの価格を化石燃料と同程度まで下げても利益が出ます。将来はどの植物をBDFに用いれば効率よく生産性及び収益を上げられるか研究したいです。 ハさん:私は光化学大気汚染の指標であるHONO(亜硝酸ガス)の値がBDFの使用によって変化するかを研究しています。HONOは排気ガスから出たNO2と水蒸気が反応することで生じ、紫外線によって分解されます。HONOは気温、湿度や交通量等によって変化します。私がハノイと堺市でHONOを計測したとき、その最大値はそれぞれの場所で9ppb、4ppb(ppbはppmの1/1000の濃度)でした。将来は、ベトナムと日本が共同で行う研究に参加し、科学の発展を支えたいです。 前田先生:このBDFのプロジェクトにはさまざまな利点があります。まずBDFの利用によって気候変動の抑SATREPSの取り組みについて 左の2人目から、ハインさん、バンさん、ハさん、前田 泰昭特認教授(地域連携研究機構) 【SATREPSとは】 SATREPSでは国内研究機関への研究助成を行うJST(科学技術振興機構)と開発途上国への技術協力をコーディネートするJICA(国際協力機構)が協力して、国際共同研究全体の研究開発マネージメントを行っています。このプロジェクトは以下の3要素の達成を目指しています。 1. 日本と開発途上国間の国際科学技術協力を強化 2. 地球規模課題の解決及び科学技術水準の向上のための新しい知見や技術を得る。これらからイノベーションの創出 3. 国際共同研究を通じた開発途上国の自立的研究開発能力の向上と課題解決のための持続的活動体制を構築。未来のための日本と途上国の人材育成とネットワークの形成

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