環境報告書2014年度
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大阪府立大学環境報告書 15高効率な太陽電池の開発を目指して 日本における太陽電池の現状 日本では太陽電池による一般企業の発電・売電が急激に普及しました。現在、日本で主に発電に利用されている太陽電池はシリコンを利用したものです。太陽電池に用いられるシリコンは高純度のものでなければならず、純度を高めるために多くの電力とコストがかかります。導入を検討する企業の中でも初期費用がかかり過ぎるために導入を先送りする動きもあります。有機色素増感太陽電池とは  有機色素増感太陽電池とは安価な材料から合成できる有機色素を用いた太陽電池です。 これまでの色素増感太陽電池はレアメタルの1種である高価な金属を含む色素に光を吸収させエネルギーに変えていましたが、レアメタルを入手するためにコストがかかることが課題となっていました。 有機色素増感太陽電池はこれらの高価な金属を利用することなく、安価な材料から合成できる有機色素に光を吸収させ、電気エネルギーに変えることができます。有機色素増感太陽電池は、可視光から発電できるため、蛍光灯などの室内灯でも発電できます。また有機色素増感太陽電池は光の量が変化しても発電量が大きく変化することはありません。そのため、曇りの日でも安定した発電量を得ることができます。また、有機色素増感太陽電池は太陽電池としての機能を果たしながら、形や色を変えることができます。屋上や広い土地に多くの面積を利用して大規模に設置・発電しなくても、窓に透明な有機色素増感太陽電池をさげるだけで発電するなど、小規模な発電を実現することができます。より効率のよい太陽電池を目指して 有機色素増感太陽電池の発電効率をより向上させる研究も日本では活発に行われています。今回インタビューに伺った中澄先生は有機色素のみで作る太陽電池の研究をされています。中澄先生があらたに合成された有機色素によって、これまで発電には利用されてこなかった近赤外の光を吸収することができるようになりました。この新しい有機色素をこれまでの可視光のみから発電する有機色素増感太陽電池に組み込むことでさらに光の吸収範囲を広げ、発電効率を向上させることができます。今後の研究課題 現在では有機色素増感太陽電池は実用化に向けた研究段階にあり、私たちの身近で見ることはまだできません。主な課題としては耐久性、また発電に用いる電解質溶液を封止する技術の強化、さらなる発電効率の向上が挙げられますが、耐久性に関しては年々改良されており、今後ますますの研究成果が期待されます。  担当:鹿志村美緒

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