環境報告書2013
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28|第4章 エコ・キャンパスを目指して 中谷直樹准教授(大学院工学研究科、写真右) 府大池水系の環境モニタリング、水面の植生変化、流入出水路の水質(水温、クロロフィル量、pH、栄養塩類、有機炭素量、溶存酸素など)について調査中。 平井規央助教(大学院生命環境科学研究科、写真左) 中百舌鳥キャンパス全域におよぶ生物調査の継続、キャンパス内に生息している希少種や外来生物について研究中。 ここでは、お二人の先生のインタビューに基づいて、府大池の生物や水質とその保全について考えました。 府大池とは? 中百舌鳥キャンパスの北西部に位置する大きな池のことです。正確には園池(そうのいけ)という名前が付いています。フナ類、モツゴ、メダカ、コイなどの魚類や、多くの種類のトンボが生息しており、キャンパス・ビオトープの中核を担っています。しかし、水質など生物の生息環境の悪化が生態系に与える影響の懸念は続いており、詳細かつ継続的な調査が必要とされています。 在来種と外来種 現在、府大池ではメダカやコオイムシ、ミズカマキリなどの在来種とウシガエルやアメリカザリガニなどの侵略的な外来種とが同居しています。その中でも、とくにメダカやコオイムシは希少種でもあり、外来生物の駆除と同時にその保護が必要となっています。 かつてはアオヤンマ、ベニイトトンボ、ナニワトン ボなどの希少種も生息していましたが、最近では姿を見かけなくなってしまいました。一方で、今まで見かけなかったミズカマキリなどが最近確認されるなど、多くの生物が生息する場所であることには違いありません。 府大池の水質 府大池とその周辺は数年前からの本格的な整備により、「様々な人と自然が共生し、憩えるキャンパス・ビオトープコアとして、交流を育み、持続可能性の感じられる空間」となりました。 しかし、上流の周辺民家から窒素やリンなどの栄養塩類を多量に含む生活排水が流れ込んでいることや、それによって光合成が活発になり、池の水のpHがアルカリ側に大きく偏っていることなど、生物多様性の保全を考える上でまだ解決すべき課題は残っています。この状態を改善するため、農場から中性で比較的栄養塩濃度が低い井戸水を引くようになりました。 生物多様性保全の促進 府大池は役割ごとに大きく3つにゾーニングされ、一年を通して多種多様な生物が生息しています。しかし、水面では水生植物(アゾラやヒシなど)が多く繁茂し、ときには水面を覆い尽くしてしまいます。 外来生物の疑いがあるという面でも生物多様性において問題のあるアゾラですが、池内のpHの低下、植物プランクトンの大量発生の抑制に関係している可能性もあり、一概に悪いとは言えない状況です。 このような状況の中で、今後とも水質管理やモニタリングなどを行い、キャンパスグランドデザインに則りながら、生物の多様性を維持していきます。 生態系の中の府大池 担当:飯田桃子 (工学域物質化学系学類)

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