環境報告書2013
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大阪府立大学 環境報告書|01 大学の環境のこれまでとこれから 大阪府立大学は、平成24年度に環境マネジメント組織を立ち上げ、大学の環境理念を定めました。環境志向型大学に向けた本格的な船出となりました。 そこで、奥野武俊学長に、大阪府立大学における『環境』の「これまでとこれから」を、大阪府立大学環境報告書作成学生委員会「E~きゃんぱすの会」代表の藤本千恵、副代表の根岸信太郎が取材しました。 エコ・サイエンス研究所 藤本:大阪府立大学における『環境』の「これまで」についてお聞きしたいと思います。府大が環境対策に積極的に取り組んでいくきっかけとなった『エコ・サイエンス研究所』の設立経緯についてお聞かせください。 奥野:そもそもの始まりは中百舌鳥キャンパスにある府大池でした。今から4年前に改修工事をするまでの府大池には、ゴミが捨てられ、水質も良くありませんでした。その府大池をどうにかしたいということが、キャンパスの環境問題に取り組むきっかけでした。 そこで、浮上したのが「キャンパス・ビオトープ」というキャンパス全体をビオトープとして捉えて環境を整備していきましょうという案でした。府大池をコアビオトープとして捉え、池の水質を自然の回復力によって改善するために、例えば井戸水を引くような最低限の整備をして、中長期的に少しずつ府大池をきれいにしようというものでした。「ビオトープ研究会」が中心となって「キャンパス・ビオトープ」計画を推進しました。それを一つのきっかけとして『エコ・サイエンス研究所』を設置したのです。 大学における「環境」の学び 藤本:ここ数年、「環境人材育成プログラム(副専攻「環境学」、国際環境活動プログラム)」や現代システム科学域の中に『環境システム学類』を設置するなど、大学内での「環境」の学びを拡充されていますが、それはどのような意図があったのでしょうか? 奥野:様々な学問分野で「○○環境学」という名前の付いた研究分野が作られています。私自身、海洋環境に関する研究を専門にしてきましたが、様々な分野で研究されていることを体系づけ、多様な学問を俯瞰する、いわゆる『環境学』は、まだ完成された学問ではないと講義してきました。それぞれの研究分野で「環境」について考えた分野はあっても、結局それらは「環境学」の一部に過ぎないと思うのです。日本では土木関係の方が主導して環境問題に取り組みましたので、工学的なアプローチが強いと思いますが、米国では森林学などが主導したために、自然、哲学、倫理などの思想系の学問が進みました。「環境」を体系付けて学問とするためには、文系・理系といった縦割りではなく、総合的なディシプリンとして捉えなければなりません。エコ・サイエンス研究所が中心となり、副専攻「環境学」をはじめとした環境人材育成教育プログラムを作る時に、このような考えを具現化しました。環境省公募事業にも採択され、このプログラムは良い方向に動いていると思っています。その流れの延長線で現代システム科学域に環境システム学類を設置することになりました。 根岸:このような取り組みは、他大学ではあまり見られない先進的な取り組みだと思います。私自身、副専攻「環境学」を履修しました。そこで、これまでの科学技術だけでは解決の難しいトランスサイエンティフィックな「環境問題」という課題に対して、「環境」という対象を自然科学・人間科学・社会科学という三つの視点で捉え学長対談 大阪府立大学理事長・学長 奥野武俊先生

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