平成24年度版 環境報告書
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65環境報告書を作る新たな教育の場としての「E~きゃんぱすの会」 環境報告書を作る、という作業内容を思い浮かべたとき、当初、学生たちの頭の中には、しごく漠然としたイメージでしかなかったことでしょう。 環境報告書を作るのだ、学内に環境マネジメントの仕組みをきちんと作り上げるためのきっかけにしたいのだ、という思いや意欲はあれども、肝心の作業内容については想像が追いついてはいなかったと思います。学内の身近なモデルとして、「書く」「世に出す」という活動が目につくところになかったことも影響しているかもしれません。 2011年の5月、集まってきた学生たちに環境報告書について説明したとき、「記事を企画するとは」「インタビューに行くとは」どういうことかを話しても、彼(女)らの多くはきょとんとしたままでした。 しかし、実際に「E~きゃんぱすの会」として活動しはじめて、グループに分かれ、目次を作り、何を書くか、担当は誰か決め、具体的に書くことをはじめてみると、その難しさと作業量の多さに圧倒されていく様子がわかりました。 テーマは適当か。記事の企画は企画としてうまくいくのか。誰にインタビューを頼むのがよいのか。あるいはデータの所在はどこにあるのか、といった最初の入り口から、つまずきの連続でした。 もともと、学内外のサークルや部活動、委員会で活躍していたメンバーも多く、組織に入り、動くことには慣れていたものの、それでも、「いったいこの組織は何をするべきなのか」というところからすべてを練るのは、ほとんどの学生がはじめての経験だったでしょう。 さらに、電話のかけ方、メールの書き方、アポイントメントの取り方、インタビューや原稿執筆のお願いとお礼、書き上げた原稿のチェックのお願いとお礼の仕方にいちいち戸惑う姿も多く見られました。人文社会科学のフィールドワークではよくお目にかかる調査の「イロハ」ですが、それはそのまま、社会に出るための大切な「イロハ」でもあります。  また、資料を探したり、説明を求めたりすることの大変さ。「E~きゃんぱすの会」の学生たちは、大学のさまざまな部署や研究室などとのやりとりのなかで、社会の中で仕事をするためのトレーニングを経験したといっていいでしょう。 また、省エネキャンペーンなどを通じて、大学の各部局と連携した活動を行う中で、組織の中で物事を通す、議論を行う、など、学生として「受け身」だった立場から、マネジメントに係る「当事者」としての立場を経験したことにより、大きく学生自身が成長していく様子もみられました。 いいかえれば、「E~きゃんぱすの会」の活動そのものが、On the Job Trainingの実践でした。特に本年度は、「E~きゃんぱすの会」そのものの立ち上げの年でしたから、独特の難しさもあったと思います。また、学内の教員・職員の方々にも、さまざまなご協力をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。 今後は、組織を継続していくために、この一年間で得た経験やスキル、物事をうまく運ぶための道筋などを次のメンバーにうまく伝え、よりよい、そしてより活発な環境活動を喚起するような報告書作りをすることが一つの重要な課題でしょう。このはじまりを、意義あるものとして学生たちが進んでくれることを願っています。      21世紀科学研究機構 エコ・サイエンス研究所現代システム科学域 環境システム学類 准教授(環境報告書担当) 福永 真弓

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