平成24年度版 環境報告書
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565この領域で先進的な(しかし、必ずしも理想的なものかどうか判断するには時機を待たねばなりませんが)取り組みを行っています。 ここでは、筑波大学の環境防災学プログラムを紹介しましょう。より詳しくは、http://www.envr.tsukuba.ac.jp/~edip/を参照してください。まず、当該カリキュラムの枠組みをみてみましょう(図1「環境防災学プログラムの枠組み」参照、なお、図については上記のURLから転載)。これを見ると、社会科学分野を含む広範な内容のカリキュラムであることがわかります。          もちろん、いわゆる環境科学とも密接に関係しています。実は、本学には、多くの人材と教育・研究領域を担える分野があることから、同様の総合的な「環境防災」のカリキュラムは、すぐにでも実現できると考えられます。少し話は外れますが、本学は広いキャンパス・多くの研究施設、そして学生を含む多様な人間力を持っており、周辺地域から見れば、理想的な大規模災害の避難地・避難施設になり得ます。全国の大学では、「自主防災組織」を作る動きがあります。本学も大規模災害避難地として地元堺市との連携強化や学生ボランティア組織を中心とした自主防災組織作りも始まっています。これらの活動の基礎となり、直接・間接的に地域に貢献するために、本学は、多様な生態系(ビオトープ)を有する広大なキャンパスを中心に「府大の人間力」を活かして、広い意味での環境に関わる防災(減災)の情報発信・社会的な啓発教育の拠点になることも可能です。 近年、教育・福祉・環境・防災都市づくりが、理想的で安全・安心なバリアフリー社会への第一歩であるといわれています。まずは身近な「環境防災活動」の実現を望みます。その意味において、本学のビオトープマップ同様、学内のいわゆる危険な箇所の地図(ハザードマップ)作りから始めるのも一つの具体的な「環境防災」だと思います。の方が避難生活を余儀なくされています。この東日本大震災の大津波は、東北の太平洋岸とその周辺の多様な動植物の生態系も崩壊させてしまっています。さらに、原発事故による放射能汚染・拡散問題、そして地球温暖化も壮大な意味での防災問題です。悲しいことですが、このような環境問題(同時に防災問題)は世界中に存在します。もはや、防災と環境の関係は、同じ物事の表裏というよりも、非常に密接に連関する関係性なのだと言ったほうがよいでしょう。もう1つ重要な視点があります。たとえば、各分野の専門家に防災という言葉を問うと、それぞれの立場から、大抵、気象学、水文(すいもん)水理学、地質学、地震学、地盤工学、土木工学、建築学、都市計画、海洋工学、医学・医療、リスクマネージメント、食糧の安全・安心、そして原子力などを連想するようです。しかしながら、もはや、単一的ではなく総合的な領域でなければ、防災は成り立たないでしょう。このような現実を踏まえて、10年ほど前から話題になり、近年、いくつかの教育・研究機関でカリキュラムとして実施されつつあるのが、冒頭に記載した広範な領域を含む「環境防災」の分野です。防災とは、リスク0をそもそも想定できない上に、実際には実現不可能な理想である、というのが現実です。そのような現実の反面、大抵の人は、英知をつくせば、理想的な防災に近づけるのではないか、とも思っています。しかしながら、「環境防災」も、本質的な表現をするならば、「環境減災」ということが適当でしょう。さて、それでは、「環境防災」というカリキュラムは、どのようなものかについて少し言及したいと思います。最近では、いくつかの教育・研究機関やNPO法人などが、

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