平成24年度版 環境報告書
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55555555つまり、長い間、防災とは広く災いを防ぐという意味で捉えられてきたといってよいでしょう。しかし、そもそも災いというものは、「想定外」という言葉で語られるように、その時代の最先端技術と専門家の英知を結集しても人知を超えている場合も多いことから、災いを完全に防ぐことは難しいのが現実です。さらに、環境的な課題が、地域の公害から地球規模(あるいはそれ以上の宇宙規模)の環境問題に拡大する中、防災工学や防災科学も、この環境的な課題の一部、時には全部を担うよう、求められるようになってきました。たとえば、昨年3月の東日本大震災では、大津波によって多くの人命が失われ、多くの施設・家屋が流失・崩壊し原発事故を伴う未曾有の災禍となり、今なお多く  すぐに情報検索が可能なインターネット時代でも、「環境防災」いう表現を知っている人は、まだ、そう多くないかもしれません。防災学、防災科学あるいは防災工学という表現ならば、専門家ではない一般の人にも、日々の生活の中で見聞きしたことがあるのではないでしょうか。防災という言葉から、私たちは、大抵、火事、台風、豪雨、洪水、豪雪、地すべりや地震など、主として自然災害を連想します。一方、我が国では、高度成長期以降問題となった大気汚染、水質汚濁、重金属汚染などの公害から、ダイオキシン、PCB等の土壌汚染、内分泌攪乱物質(いわゆる環境ホルモン)などに伴う人の健康被害、多様な生態系の変化・消失などの環境的な災いまで、とても広い意味で防災(防止)の概念が適用されてきました。 2 9 29

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