大阪府立大学 ロールモデル集
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MODEL01液体と気体が接する界面を利用した特殊な合成方法で、分子が規則正しく並んだナノシートを創製分離膜や太陽電池向けの新材料開発単に性能を追求するのではなく、自然に近い製造環境でどれだけ有用な材料が創製できるのかについて、優位性と制限を見極めていきたいあり実用化が期待されていますが、変換効率の向上が課題です。電子的な性質が異なる2種類の分子が交互に規則正しく並んだ相互介入型ヘテロジャンクション構造は、有機太陽電池の理想構造のひとつです。有機分子が自己集合して配列する性質(自己組織化)を利用して、ヘテロジャンクション構造をナノスケールで構築します。研究の魅力、独自性および従来研究と比べての優位性テーマ1「界面積み木細工によるナノシートの創製」の魅力についてお伝えします。物質の分離・精製は、環境、エネルギー、化学工業などにおいて不可欠な操作です。膜による混合物の分離は、吸着分離や深冷分離などに比べ簡便且つ省エネルギーな方法として重要視されています。水の精製に使用されるフィルタも分離膜のひとつです。分離膜の材料としては、主に有機ポリマーが用いられますが、分子の通り道となる穴(細孔)のサイズが不均一であることが課題です。選択性(分離効率)を向上させるためには適度な厚みが必要ですが、厚すぎると透過性(生産性)が低下するというトレードオフが生じてしまいます。分離効率と生産性の両方を向上させるために、分子スケールでサイズの定まった細孔を有する極めて薄いナノシートの開発が強く望まれています。その候補として、配位高分子が挙げられます。しかし、一般的に用いられる合成法では微結晶粉末として得られるため、分離膜として用いることが困難です。配位高分子をナノシート化することができれば、高い選択性を保持しながら、原理的には現状の有機ポリマーより4ケタ大きな透過度の実現が可能になり、まさに夢のようなナノ材料となります。私の研究室では、液体と気体が接する界面を利用した特殊な合成方法を開発し、この新しいナノシート材料の創製を進めています。研究のこれから学生の頃から、ものづくりに興味を持つ一方で、大きな工場を建設して大量生産を行う製造方式に違和感を覚えることが多々ありました。企業時代に、“デスクトップファクトリー(卓上で製品を生み出す)”という概念を耳にし、大変感銘を受けました。また、企業における工場実習の一環で半導体工場に5ヶ月間勤務し、クリーンスーツを身に纏ってクリーンルームの中で終日業務を行い、その大変さを体感しました。この経験から、私達が生活する環境にできるだけ近い条件(常温、常圧)で、多量のエネルギーを消費せずに良い材料や製品を生み出すための基礎的な技術の開発に携わりたいと考えるようになりました。私が開発したナノシート材料の合成は、特殊な大型装置や高温は必要とせず、液体を入れる容器とシリンジ(注射器)だけで、常温常圧で行うことができます。現在、この方法で目的の構造を有するナノシートができることがわかったので、現在は、分離能の評価、実用化に向けた質の向上に主点を置いて研究を進めています。今後も、単に性能を追求するのではなく、自然に近い製造環境でどれだけ有用な材料が創製できるのかについて、優位性と制限を見極めていきたいです。このような観点で行う研究は、持続可能社会の実現や環境問題にも貢献できると考えています。9

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