大阪府立大学 ロールモデル集
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研究概要私の研究は、日本と韓国の両方の特徴を併せ持つ在日コリアンを主な対象としています。在日コリアンは日本在住外国人の中で最も多いのですが、そのほとんどは特殊な歴史的背景を経て日本に定住しており、言語的ハンディキャップがなく、日本の医療保険制度のほとんどが適応されています。そのため、現状把握や特別な支援はなされていません。しかし、伝統的価値観、家族主義が残る儒教精神、ジェンダー規範意識やマイノリティな環境が、在日コリアン女性たちのリプロダクティブ・ヘルスやワークライフバランスなどのセクシュアル・ヘルスに影響を及ぼしていることが予測されます。現在は、在日コリアン女性の中でも、特に家事・育児負担が大きくなりやすい育児期の女性に焦点を当て、彼女たちの現状、困難や求められる支援について調査しています。また、在日コリアンを対象とした調査と同時に、日本人、韓国人の若者を対象とした家族形成についての意識も調査しています。日・韓・在日コリアン若者の背景や特徴に着目しながら、これから家族形成していく若い世代のリプロダクティブ・ヘルスやワークライフバランスに対する価値観についての共通点や相違点も明らかにしています。研究の魅力、独自性および従来研究と比べての優位性在日コリアンを対象とした研究は、対象者と実際に関わって生の声を聴くことで、現状や困っていること、悩んでいることをささいな発言の中からも感じることができ、また普段の会話の中から次の支援の方向性が見いだせるというのが魅力です。特にフィールドワークとして在日コリアンママ達の中にどっぷりつかることで、対象女性の現状、価値観、信念、思いが見えてくるのは研究の魅力だと感じています。在日コリアンという特殊性と子育て期のママとしての大変さを実感しているという共通項を持ち、在日コリアンの独特な環境を理解した上でのフィールドワークですので、対象者もじっくりと本音を語ってくれます。これは私にしかできない活動なのではないかと考えています。日本と韓国は多くの共通点がありますが、文化や風習の相違点も多いです。日本についても、韓国についても、そして在日コリアン社会についてもよく知った上で対象者に接することは研究を遂行していく上で大事なポイントです。そのため対象者の背景を十分理解した上で関わるという点を重視しています。研究のこれから在日コリアンは日本社会と韓国社会の両方の影響を受けています。日本と韓国は地理的、歴史的に共通するものも多く、現代では少子化、晩婚化、晩産化、妊娠先行型結婚の増加、離婚率の上昇など、セクシュアル・ヘルスに関連する様々な項目で共通の課題があります。このような中、日本でも韓国でもこれまで女性の社会的地位が低かったため、最近は女性活躍社会をアピールしているという共通点もみられます。女性活躍社会の促進には、リプロダクティブ・ヘルス、ライツの増進、ワークライフバランスの維持が必須です。そして男性の家事・育児への積極的な参加も必要になってきますが、未だ十分にかなえられているとは言えません。また、日本も韓国も妊娠先行型結婚の増加からの離婚率の上昇、シングルマザー世帯の貧困などが課題となっています。このような中、これまでの自身の調査から在日コリアン社会のコミュニティネットワークの強さが彼女たちの育児を支える上で重要な役割を果たしている点に注目しています。今後の研究としては、そこを強化するための支援の方向性について検討していき、日本社会での少子化対策の1つとしても参考とすることができればと考えています。在日コリアン社会のコミュニティネットワークの強さに注目支援しながら、日本の少子化対策に生かしたい同じ在日コリアンママとして、在日コリアンママ達の中にどっぷりつかることで、対象女性の現状、価値観、信念、思いが見えてくるのが研究の魅力MODEL07育児期在日コリアンママ達に依頼したアンケート用紙20

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