大阪府立大学 ロールモデル集
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研究概要10代で出産されたお母さんが子育てしやすい環境を整えるための研究を行っています。先行研究では、若年妊娠は妊娠の受容が困難であったり、その後の生活に大きな社会的リスクを抱えていく可能性が高いことから、養育支援が必要なケースとされています。一方で、10代で妊娠した方のうち、出産を選択する方の割合は年々増加しています。図1は2000〜2016年の10代の出産数、中絶件数を示したグラフで、出産数と中絶件数を足した値をその年の妊娠数とした場合、2015年は妊娠者数のうち出産した割合が42.5%と過去16年間の間で最も高い値を示しました。2003年から多くの若年母親の方々に調査を行ってきた中で、私が重要だと考えているのは以下の3点です。1つ目に、出産後の就業支援です。最終学歴が中学卒業や高校中退の場合、就労する際の選択肢が非常に狭くなるので、通信制高校を活用して、高校卒業の学歴を取得することが必要だと考えています。2つ目に、相談できる専門職の存在です。若年母親の中には、これまでの生育歴や学校での経験から他者と信頼関係を築くのに時間がかかる方もいらっしゃいます。こうした方に対しては、同じ支援者が長期間継続的に関わることが重要であると考えています。3つ目に、若年母親を支援する場づくりが必要だと考えています。子ども連れで外出した時に「虐待してるんちゃうの」と言われたという方もおり、近所に住む人々の意識も、育児のしやすさに大きく関連します。このため、若年母親を理解し応援する地域のサポーターを増やすことが重要だと考え、研修会を実施しています。合わせて、若年母親同士が集まり、仲間づくりができる場を構築するお手伝いも行っています。研究の魅力、独自性および従来研究と比べての優位性研究の独自性は2つあります。1つ目に、児童虐待問題を背景に、若くして生むことのリスクを指摘する論文はこれまで多く報告されています。しかし、お聞きした話の中で、妊娠をきっかけに多くの方々が生活習慣を見直したり、将来の生活設計のため節約に励んだり、子育てをされる中で努力し、成長されていました。またそのことがお母さん自身の自己肯定感を高める結果にもなっていました。そうしたお母さん自身の変化が、パートナーや家族などの変化をもたらし、周囲の人々との関係を再構築する機会にもなっています。このように、私は若くして生んだことの強みが必ずあると考えていて、その強みに焦点を当てた支援を検討していることです。2つ目に、看護学は実践の学問であることから、研究から得られたアイディアを実践につなげることが比較的容易にできます。現在は若年母親のライフプラン構築や、若年母親を支えるサポーターの養成、妊娠初期のアセスメント能力を向上するための研修を、保健師さんや他職種の方々と一緒に取り組んでいます。また社会学を学んだことにより、看護だけではないニーズを抱える若年母親にどのような支援が必要なのか、俯瞰的に支援のありようを考察していることも私の研究の特長だと考えています。研究のこれから専門職の方々や報道機関から、若年母親への支援に関して意見を求められることが度々あります。そうした際に、これまでおうかがいした若年母親の子育ての実態をお話ししながら、必要な支援は何か、それを誰がどのようにして実行していくのかを提言することが、多くのお話を聞かせていただいた私の義務だと考えています。これまで行政の方と一緒に実践をさせていただくことが多かったのですが、若年母親のニーズは教育・雇用・子育て支援など多岐にわたっていますので、今後は他領域の研究者の方々のお知恵もお借りしたいと思っています。また、海外では多くの若年母親に関する研究が行われていて、海外の研究者からは「日本の若年母親の実態はほとんど報告されていない」「日本は“平等”だから若年母親の人数も少ないのね」「婚姻率も高いから、日本の若年出産は問題ないのでは」など、色々なご意見をいただくことがあります。今後は海外の研究者と共同研究を行い日本の若年母親の実態を海外に報告し、一方で、海外の知見を参考に、日本における支援のあり方を検討していきたいと思っています。ニュージーランドで行われたTeen parents support conferenceでスタッフをしていた10代のお母さん・お父さん図1.2000〜2015年の10代の出産数、中絶件数、出産割合の推移子どもが見るアニメ番組を一緒に見ています。小学生男子2人は“デュエルマスターズ(デュエマ)”に夢中。何も考えず笑える場面が多いのですが、主人公のジョー君が多くの困難を仲間の協力や機転で乗り越えるところに感動します。男子向けアニメは勇気づけられる曲が多く、朝からの講義や実習の時に聞くと元気がでます。デュエマの中ではVSRFのエンディングBut by Fallの“Stronger”が好きで、父から子へ世代交替する歌詞の内容にうるうるします。母子保健や若年母親を専門とする海外の学識者を招聘し、講演会やセミナーなどを実施して、海外の母子保健制度や若年母親支援のあり方を国内で共有する活動をされています。セミナー開催の際にあたっては、英語が堪能な多くの学生・院生がスタッフとして参加されており、学生の国際交流にも貢献されています。休日の過ごし方研究を    に生かす社会18

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