大阪府立大学 ロールモデル集
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MODEL03新発想!光センサーを改変することによって光合成能を強化する作物の栽培や育種に関わる方々や、藻類を利用した物質生産に携わる方々と共に、農作物の生産性向上を目指したい研究概要目的:植物の光合成能を解析し、利用・応用する背景:「光」は生物にとって重要な環境情報の一つです。光を情報として利用するために、生物は光を認識し、光情報を伝え、発現するメカニズムを持っています。特に、光合成によって生育する植物は移動手段を持たないため、光などの外部環境の変化を正確に把握し、成長や開花などを的確に制御する必要があります。私は、このようなメカニズムの詳細を解析し、光合成能の強化につながる利用・応用を目指しています。方法:①光認識に関わる光センサータンパク質の解析植物は、赤や青色などの光を認識するセンサータンパク質を持っています。センサータンパク質を大腸菌を利用して調製し、光認識機構、情報伝達に関わる構造解析や機能に重要な部位の特定を行っています。②光情報の伝達経路の解析光センサータンパク質から生命現象につながる情報伝達経路を解析しています。③植物改変による光合成能強化の解析光センサー、シグナル伝達経路に関わる遺伝子を改変し、光合成能の強化をした植物の創出を目指しています。研究の魅力、独自性および従来研究と比べての優位性研究の経緯:光センサータンパク質は、植物にはごく少量しか含まれていないため、大腸菌などを利用したタンパク質の発現・精製系が大変有用です。私はこれまでに、様々な植物や微生物の光センサータンパク質の調製系を確立しました。さらに、遺伝子組換え技術によって光センサータンパク質に変異を導入し、吸収特性などに重要な機能をもつ部位の同定や、形質改変を検討しました。その結果、光センサータンパク質が固有の色の光を認識するために必要な部位を特定し、光センサーが認識する光の色を改変することに成功しました。研究例と独自性:植物は、木もれ日(緑色光)を感知すると光合成をストップさせ、もやしのように徒長します。緑色光は光合成の効率が大変低いためです。そこで、緑色光を「日なた」と感じるように光センサーを改変することで“もやし化”を抑制し、光合成生産の向上が可能であると考えられます。現在、光センサー改変植物の生育や結実性を詳細に解析しています。これまでに、光センサーを改変することによって光合成能を強化する例はないため、従来研究では得られなかった成果が期待されます。本研究計画は、科研費補助金(平成28〜29年度 挑戦的萌芽研究)や大阪府立大学女性研究者支援事業(平成28年度)などから研究資金を得て進めています。研究のこれから現在、モデル植物として広く研究されているシロイヌナズナを用いて、光センサー改変植物の解析を行っています。今後、生育や結実性が向上する条件を検討して農作物への導入を試みます。本研究計画で導入する形質は、葉透過光による光合成の不活性化を抑制するものなので、農作物の単位面積あたりの生産性向上が期待されます。栽培植物に広く利用できる育種法であるため、農作物だけでなくバイオ燃料の原料となる植物でも効果も期待されます。さらに、光センサーの改変技術の藻類への導入を検討しています。近年、ボトリオコッカスによる油生産や、ユーグレナによるバイオディーゼル燃料の生産などが注目されています。藻類は、農作物よりも省スペースで栽培できる利点がありますが、光照射の効率化が栽培条件の課題です。藻類が効率よく光合成生産を行うために、光への応答を操作することは、大変有意義であると考えられます。こちらでは、植物や藻類に光センサー改変を導入し、生育や光合成能、生産性などを解析することが可能です。作物の栽培や育種に関わる方々や、藻類を利用した物質生産に携わる方々と共に、社会貢献できる機会を与えていただければ幸いです。13

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