大阪府立大学 ロールモデル集III
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博士の学位授与式のとき、総長の祝辞の中で、「研究者に必要な資質のひとつは楽観的であること」と言われたことが心に残っています。学部を選ぶとき、博士後期課程に進むとき、将来、就職があるのだろうかと悩み、結婚して子どもができても研究を続けられるだろうかと悩み、新しい実験がうまくいくだろうかと常に悩み続けてきましたが、簡単ではないけれど何とかなるさ、と楽観的に考えてやってきました。失敗も良い経験になります。やりたいことがあるなら、まずは挑戦してほしいと思います。研究を続けるほど、勉強不足を実感し、新しい疑問がわいてきます。自分の疑問を解決するための研究に終わりはないのですが、いつかは、間接的にでも、世の中の人に役に立つことに繋がるような研究ができれば、と思っています。 もともと複数の物事をバランスを取りながら、同時に進めるのが苦手でした。 学生時代は、研究を含め、自分のやりたいことで1日が埋め尽くされていたのが、就職してからは、教員としての仕事と自分の研究のバランスを取る必要に迫られ、なかなかうまくいかずストレスを感じることも多くありました。結婚して、子どもが生まれてからは、さらに子育てが加わり大変でしたが、私の場合、保育所と実家で子どもを預かってくれたおかげでやってこられました。研究者の夫は、平日は単身赴任で週末だけ帰宅しますが、在宅時は家事は分担してこなしています。やはり家族の協力と職場の理解は欠かせません。仕事と家事・子育てで目一杯な毎日ですが、研究者として、母として、ひとりで多様な人生を送れることは、大変ですが幸せなことだと思っています。家事・育児40%その他20%仕事40%●社会人時代(1989~)●学生時代(~1989)1989~大阪女子大学助手1994~1995大阪府在外研究員(米国パデュー大学客員研究員)1998~大阪女子大学講師2005~大阪府立大学講師(大学統合のため)~1985大阪市立大学理学部卒業~1987京都大学大学院修士課程修了~1989京都大学大学院博士後期課程(助手任用のため)中途退学1997結婚第1子出産 大学院博士後期課程では修士課程からの研究を続けていましたが、2年で中退し、大阪府立大学と統合される前の大阪女子大学の助手に着任しました。助手になれたことは大変幸運だったのですが、大学院での研究は中途半端なままでした。そのため、平日は大阪で学生実験や卒業研究などの指導をし、週末には京都で実験をするという生活が続きました。体力的には大変でしたが、研究室の方々や家族に支えられ、数年後に何とか博士号を取得することができました。その後、大阪府の在外研究員として米国のパデュー大学に一年間留学しました。パデューの研究室には、当時、8カ国の研究員や院生が在籍していましたが、国籍は違っても研究者としての本質は変わらないと感じました。大阪女子大学は、規模は小さいながら理系でも女性教員の割合が高く、様々な先輩から女性研究者としての生き方を学ぶことも多かったです。 その後、大阪府立大学と統合され、現職に就きました。現在は、植物が好ましくない環境のもとでどのように生き抜くのか、特に光合成機能に注目して研究しています。光は光合成に不可欠ですが、強すぎる光は植物に障害をもたらすストレスとなります。この様なストレスに打ち勝つためのしくみを研究する中で、いつか自分の研究が世の中の役に立つことを願っています。 一人っ子で両親が共働きだったので、家で一人で過ごすことが多く、マイペースな子どもでした。小学校では、担任が理科の専門の先生だったので、例えば水の沸騰の実験では、水蒸気を集めて冷却して貯めた蒸留水を飲んだりなどといった、教科書に載っている以上の「実験楽しい!」という経験をたくさんさせてもらったことから、将来は理系の研究者になりたい、と子どもなりに考えるようになりました。中学・高校と進学してもその気持ちは変わりませんでしたが、同時に、女性が研究者になることの大変さもわかってきました。大学の進学先を決めるときも、生物学をやりたいけれど、就職を考えると医歯薬系の国家資格の取れる学部の方が良いのではないかとも悩みました。しかし、最終的には、やりたいことをやろうと生物学科に進学しました。 学部では、サークル活動で野山を歩きまわり、また生物大好きな個性的な級友たちの刺激を受けながら、大いに遊び学んだ3年間の後、卒業研究のために植物生理学の研究室に入りました。そこで初めて実際の研究への取り組み方や研究者の生活について知り、改めて研究者への気持ちが湧き、大学院に進学しました。当時はバブル景気の真っ最中で、修士課程修了後、企業へ就職する道もありましたが、自分の研究を続けるために博士後期課程に進学しました。Personal HistoryWork Life Balance●学生時代●社会人時代Message後輩へのメッセージ将来の目標・夢Dream15

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