元気!活き生き 大坂府立大学ロールモデル集
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もともと将来の選択肢はたくさんあったのですが、大学で航空宇宙工学科を選んだのは、受験科目が得意分野だったからです。文系科目が得意であれば法律家を目指していたかもしれません。ただ学部学科選びは慎重にしました。大学ありきで一番入りやすい学部・学科を受ける人もいます。しかし、それだとやりたい事がない場合もあって大学生活がつまらないという話を、高校当時に大学生から聞いていましたので、進路を選ぶ時点で好きな物理を活かせる航空宇宙にこだわりました。第一志望の大学には合格しませんでしたが、C日程で受かった大阪府立大学では入りたかった学科に入れたので満足していました。 大学生生活は3回生までは、体育会系クラブの活動に重きを置いていましたが、4回生で研究室配属になった頃から、やりたいと思っていた研究に没頭し、そのまま修士課程に進学しました。大学生活は、クラブに、勉強に、バイトに、研究に…と、とにかく毎日楽しく充実していました。 その後一度社会人になり宇宙分野と離れましたが、退職して、JAXAの宇宙科学研究所がキャンパスとなっている総合研究大学院大学の博士課程に入りました。この時には宇宙探査に携わりたいという明確な将来の夢がありました。一度社会人を経験していることから、学生生活がいかに自由で貴重な期間であるかを、この時初めて感じました。 今は宇宙探査の分野で研究者として仕事をしています。具体的には、惑星探査機の通る道である軌道を設計する事と、少し大きな意味合いで、宇宙ミッションそのものの実現性を検討する仕事です。研究者になると、そのまま定職につける人もいれば、任期付のポジションを転々とする人もいます。私は、今でも任期付ですので、任期が終わる頃にはまた次のポジションを探します。これは一見大変な事のようにも思いますが、常に目標を持っているので、様々な活動にポジティブに参加できるという利点もあります。また、就職の幅を広げるために活動している事が、自分の可能性を見出す事にもなっています。 修士を出てすぐに就職した会社は週休2日でしたが、会社側の狙いは、そのうちの1日は自己啓発に充てるために休みにしているということでした。ですので、土曜日にセミナーに行って資格を取る事もありました。 会社を辞めて博士課程に進学してからは、知見を広めるために、研究者としての専門分野のほかに実際の宇宙開発の現場に携わりました。小惑星探査機「はやぶさ」も打ちあげ後、全7年間にわたる期間運用に関わりました。この間に、学生から博士号を取って一人前の研究者へと立場が変わり、出産も2回経験しました。それでも運用を続けて、最後の日も運用責任者を担当しました。仕事をしていれば、うまくいく事も、いかない事もありますが、石にかじりついてでも何かをやり遂げたという経験は、今後の宝物になると思いました。 私は一度就職した会社を辞めて、博士課程として学生に戻った時に、結婚しています。同じ分野の人と結婚したので、共通の興味がそもそも「宇宙」であることから、結婚したからと言ってあまりライフバランスを意識した事はありません。唯一悩んだのは、出産の時期でした。子育てをしながら不安定な任期付研究者を続けるのには不安があるので、学生の間に産むという選択肢もありましたが、結果的には博士号を取ってから産むと決めました。 子どもが産まれてからは、子どもの人数に比例して、子育てにかける時間が長くなりました。1人目出産後は出産前と変わらないように仕事をしようと意気込んでいましたし、肩に力も入っていたと思います。しかし、2人目が産まれ、1人目の子も大きくなり情緒も育ってくると、考え方を変える必要も出てきて、今はどちらかと言うと仕事よりも子どもに時間を費やす時期だと割り切っています。周囲に出産をしている研究者があまりいないので、職場では今でも十分な理解があるとは思いません。むしろ例外という雰囲気がありますし、私達のケースが職場の「前例」になるのだと覚悟しています。しかし、ほとんどお手本がない状況ですので、主人と良く話をして、夫婦で納得のいく方法を選択するように心がけています。家事・育児50%仕事50%家事・育児20%仕事80%Personal HistoryWork Life Balance◦学生時代◦社会人時代相反する事かもしれませんが、強い意思と柔軟な考えの両方を持つと良いと思います。強い意思があれば何かをやり遂げることができますが、状況によって対応も変わる事は、どんな場面でもあり得ると思います。最終的には「何になりたいか」というよりも、「何をしたいか」や「どういう自分でありたいか」という所に辿りつくと思います。今から将来のビジョンを固めてしまう必要もないと思います。じっくりと焦らずに、ご自身と向き合ってください。何歳になっても、目標を持って何かに夢中になれる人生を送りたいと思っています。研究の専門性という意味では、自分が設計した軌道で探査機を飛ばしたいと思っています。ただ、惑星探査は、その立ち上げから実際に宇宙に出るまで10年以上かかることもあり、一生の間に何回宇宙探査ミッションがあるか分かりません。ですから、経験を積む事すら難しいかもしれませんが、技術伝承も含めて、惑星探査のできる国であり続けるために活動をしたいと思っています。将来の目標・夢Dream後輩へのメッセージMessage【子ども1歳、1人のとき】【子ども4歳と1歳、2人のとき】◦学生時代(〜2003)◦社会人時代(2001〜)〜1999大阪府立大学卒業2001〜松下電工株式会社2010〜宇宙航空研究開発機構(JAXA)日本学術振興会特別研究員2006〜国立天文台研究員2007〜宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究員〜2001大阪府立大学大学院工学研究科博士前期課程修了〜2006総合研究大学院大学博士後期課程修了2007第1子出産2003結婚2010第2子出産27

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