元気!活き生き 大坂府立大学ロールモデル集
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大学における研究職は、トップダウン式で誰かに言われて仕事するのではなく、自分の発案、計画に従って実行します。やればやるほど成果として表れますので、区切を自分できちんと決めてないと、仕事に偏った生活になってしまいます。集中しだすと、ご飯を食べる時間も惜しんで研究に没頭ということも多々あります。会社に勤めていた頃の方が、仕事とそれ以外のことの切り替えがうまくできていて、趣味のバンド活動もできていましたし、バランスが良かったように思います。会社時代は、まだ若く責任のある立場ではなかったこともありますが、職場を離れると仕事のことは考えませんでした。仕事の内容を外に持ち出すことは厳しく禁じられていましたし、メールの確認もできなかったので、自然と切り替えができていたのだと思います。今の環境は、思い立ったらどこでも仕事ができます。現状はそれでも問題ありませんが、将来、家族を持つと仕事と家庭のバランスがとても大切になるので、今のうちから、週に1日は仕事以外のことをやるよう心掛けています。 ワークライフバランスのロールモデルは、研究者として働くパートナーです。現在はイギリスの大学で働いており、研究には厳しく仕事もしっかりやる一方で、家でリラックスする時間をきちんととっています。一緒にいる時は、家事は当然のごとく率先してやってくれますし、料理も"have to"ではなく"with joy"でやっています。また、母国を若いうちに離れて異国で長年暮らしているせいもあり、思い通りにいかないことや異なる考え方に対しても寛容に対応します。仕事と私生活の切り替えもそうですが、うまくいかないときでも焦らず、広い視野を持って臨む姿勢も見習いたいと思っています。 子どもの頃は、兄についてまわって虫を捕まえたり野球をしたりと、男の子の遊びをよくしていました。両親は、女の子は学歴などなくても良いという古い考え方を持っていたこともあり、高校は学力というよりは、家から近いという理由で選びました。毎日少しずつとか、きちんと計画を立て余裕をもって実行することが苦手で、試験勉強は直前に集中してやることがほとんどでした。大学入試の勉強も、高校の先生に焦らされ、高校3年生から本気になってやり始めました。いまもそうですが、やり始めるまでは腰が重く、いったんのめり込むと、とことんやるというタイプです。 理科や数学が得意、国語や社会が苦手ということが、中学生の頃からはっきりしていたので、迷わず理系を選択し、大学に関しては、就職を意識して化学を専攻しました。学部3回生までは講義が中心ですが、受け身の講義で勉強が面白いと感じることができず、単位取得に最低限必要な授業だけ出席していました。その他の時間は、家庭教師のバイトとロックバンドのクラブ活動に精をだし、勉強に関しては決して真面目な学生ではありませんでした。しかし、4回生になり研究室に配属されると、自分の研究テーマが与えられ、誰も行ったことのないことを自分で考え進めていくことに面白さを感じ始めました。研究以外では、修士1年生の時に広い世界をこの目で見ようとふと思い立って海外一人旅に出ました。見たことのない土地に足を踏み入れ、全く違う文化に触れることに大きな刺激を受けました。それ以来、バックパックでカンボジア、ベトナム、キューバ、ペルーなど多くの場所を一人で旅しました。 研究職を意識し始めたのは、修士1年生の頃です。初めての学会発表で多くの質問を受け、自分の研究がとても大切であることを認識し、やりがいと喜びを感じました。研究室の先生には、博士課程への進学も勧めていただきましたが、地元を出たことがない私は、親もとから離れ自立したいという強い思いから、家から通えない場所に就職することに決めました。企業では研究所に配属され、大学時代とは全く異なる有機電子デバイスの研究に携わりました。女性の割合が多く、女子寮に入っていました。私は職場以外でも多くの同僚と仕事や私生活など話をする機会がありました。土地柄、寮には温泉が引かれていて、温泉につかりながらの同僚とのおしゃべりは毎日の楽しいひとときでした。上司や職場にも恵まれ、会社生活で特に大きな不満はありませんでしたが、博士号を取りたいと思うことが時々ありました。グループリーダーは博士号取得者がほとんどでしたし、特に海外の研究者とやりとりをする際に、博士号を持っていないと研究者として見られないことがあると、上司から聞いていたからです。そんな中、大学時代の先生から九州大学で新しいプロジェクトが始まるので参画しないかと、声をかけていただきました。プロジェクトの仕事をしながら論文を書けば博士号もとれるという嬉しいお誘いでした。任期は5年でしたが、3年目の時に博士号を取得し、その後のポジションに関しても考えていた中、大阪府立大学が公募していたテニュアトラック制度に魅力を感じて応募しました。海外でのポジションも視野に入れていたので、国内でありながら、申請書や面接が全て英語という点にも興味が引かれました。公募を見つけた時は締切まで1か月を切っていたので、とにかく集中して申請書を書き上げました。 現在の研究テーマは、分子を積み木細工のように組み立てて、太陽電池や充電池用のナノ材料を創製することです。大学の時に学んだ化学の基礎と、企業時代の応用研究の経験と視点を活かしてエネルギー問題に少しでも貢献できる研究を行いたいと思い、この新しいテーマを立ち上げました。大学で研究職として働くことの良さや、やりがいは、テーマ設定など研究に関して制限がなく、未知の可能性を多く秘める学生に囲まれて共に研究を進めていけるところです。趣味10%家事20%仕事70%Personal HistoryWork Life Balance将来のことが心配になることは多々あると思いますが、あまり先のことを考えすぎないことも大切だと思います。私自身、研究で結果が出ずに焦り博士号さえも取れるのだろうかと不安になっていた時に、ある先生から「努力を続けていれば、必ず結果はついてくる」と励まされ、実際にその通りになりました。うまくいかない時でも、焦らず今できることを精一杯がんばると、必ず道は開けてくると思います。自分の研究が社会の役に立つものになり、学生が私の研究室を卒業したことを将来誇りに思えるような研究者になることが目標です。また、私の研究分野では常に世界を意識し研究を進めることが大切です。このような研究に対する姿勢や言語は、何よりも「習うより慣れろ」が効果的ですので、学生のうちから海外の研究者と自信を持ってディスカッションできるよう、まずは研究室レベルで海外との交流を日頃から積極的に行い、留学生を受け入れたり、学生を送り出していきたいと思います。◦学生時代(〜2002)◦社会人時代(2002〜)◦学生時代◦社会人時代将来の目標・夢Dream後輩へのメッセージMessage〜2000筑波大学卒業2002〜セイコーエプソン株式会社テクノロジープラットフォーム研究所2007〜九州大学特任助教〜2002筑波大学大学院博士前期課程修了2010〜大阪府立大学特別講師(テニュア・トラック講師)25

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