生命環境科学域 理学類/大学院理学研究科 2019
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教員からのメッセージ卒業研究Department of Physical Science教員メッセージ・卒業研究Department of Physical Science物理科学課程物 理 科 学 課 程物 理 科 学 課 程地震探査で見た断層の地下構造 物理科学課程の特色の一つは、物質を対象とする物性研究を行う4つの分野(物性理論、構造物性、光物性、分子磁性)と宇宙物理、地球科学から構成されることです。天然磁石は古くからその存在が知られ、磁石は私たちの生活と密接に結びついています。物質の磁性は、物質を構成する多数の電子が協奏的に織りなす性質です。これを理解するためには、電磁気学のほかに、量子力学や統計力学といった現代物理学を学ぶ必要があります。磁性現象は未だ完全には理解されていません。私たちの研究室では、様々な磁性を示す物質を人工的に合成し、新しい磁気状態を創り出すこと、そしてその磁性発現の機構解明を目指して研究を行っています。「新しい物理現象は新しい物質によって拓かれる」という立場から物質合成に力を入れています。分子集合体としての物質の磁性を、分子レベルで設計し、化学的手法で合成します。そして結晶を作成し、回折現象を利用して分子配列を明らかにします。さらに低温や磁場中で様々な物性測定を行う実験物理学の手法を用いて、電子スピンの配列、磁気状態を明らかにしていきます。 高校までは教科書に沿って勉強してきましたが、自然科学の探求は、教科書に新しいページを加えることにつながります。卒業研究ではその一端に触れることになります。未知の現象に出会い、何故だろう?と感じ、その疑問を解決するために自ら行動してください。主体的に考えながら疑問を解明するプロセスは、卒業後に社会人として問題解決をしてゆく能力を養います。大学生活では、自己を律し、とことん打ち込める何かを見つけてください。皆さんは大きな可能性を持っています。充実した4年間を送ることができることを願っています。 天体からは我々の目には見えない様々な種類(波長)の電磁波も放射されています。天体の性質を知るためには、物質からどのような電磁波が放出されるのかを物理学的に理解する必要があり、その知識をもとに様々な波長での観測を行い、天体の性質を明らかにします。天文学の歴史は、様々な波長の電磁波の検出システム開発の歴史と言ってもいいでしょう。恒星は宇宙の最も基本的な構成要素の一つであり、その進化を追うことは宇宙の進化を明らかにする上で非常に重要です。星・惑星形成のもとになる星間ガス・ダストからは、主にミリ波・サブミリ波・赤外線にかけての電磁波が放出されます。最近の高性能望遠鏡・検出器開発により、サブミリ波(波長1mm以下の電波)での観測が急速に発展してきました。この波長帯では、星が形成される直前・直後の高密度・高温の星間ガスを集中的に観測することが可能になり、天体形成のメカニズムの解明が急速に進んでいます。我々は独自に口径1.85mの電波望遠鏡を開発し、国立天文台野辺山宇宙電波観測所内に設置して観測を続けています。また、観測条件が非常に優れた、南米チリのアタカマ高地(標高5000m)が世界的なサブミリ波観測の中心となっています。NANTEN2、ASTEといったサブミリ波望遠鏡も稼働し、合計66台の望遠鏡を有する巨大電波干渉計・アルマ望遠鏡の本格運用も始まっています。 AKARI、Spitzer、Herschel、Planck等、赤外線-サブミリ波天文衛星による観測データも続々得られ、天体形成の研究が急速に進んでいます。このようにエキサイティングな状況の今、皆さんと一緒に研究できることを楽しみにしています。細越裕子 教授分子磁性分野大西利和 教授宇宙物理学分野13

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