大阪府立大学

平成28年度 学位記授与式式辞

更新日:2017年3月24日

はじめに

ここ数日、気温があがり、春がやってきました。万葉集に

「青丹(あおに)よし 寧楽(なら)の都は 咲く花の 匂ふが如く 今盛りなり」

とありますが、古来「にほひ」には “美しさが生える” “色美しく輝いている” “魅力や気品がある” といった意味から、いわゆる嗅覚の「匂う」に意味が変わっていったそうです。花の匂いを感じる季節に、多数のご来賓のご臨席を賜り、学位記授与式を挙行できますことを心から嬉しく思います。

卒業・修了される皆さま、おめでとうございます。大阪府立大学を代表してお祝いのことばをお贈りします。皆さまの成長を願いつつ、ここまで励ましてこられたご家族や指導教員の皆さまにも併せてお喜びを申し上げます。

さて、本日の式典において、三つのお話をしたいと思います。一つ目は大学という場の「匂い」について、二つ目は影響を受けることと影響を及ぼすことについて、そして最後の三つ目は世界に翔く地域の信頼拠点ということです。

場所に匂いはあるだろうか

昨年の12月にグランフロントで「次のイノベーション人材を養成する」と題したシンポジウムを行いました。シリコンバレーに派遣した学生が「行ってよかった。テレビで見たり、本を読んだだけではわからないことがあった。シリコンバレーには、一種独特の匂いがあるんです。」という報告をしました。

シリコンバレーはアメリカ西海岸にあり、ベンチャー企業が多数生まれたエリアの通称ですが、場所に「匂い」があると思いますか?どうなんでしょう。

私は、何度かシリコンバレーに行ったことがあり、彼の「匂いがあるんです。」という表現に深く共感を覚えました。それと同時に「大阪府立大学には匂いはあるのだろうか。」「ここで学んだ学生たちは、その匂いを身につけるのだろうか。」と考えるようになりました。言い方を変えると「大阪府立大学の魅力とか学生の気品(きひん)とは、どのようなものなのだろうか」ということかと考えます。

本学の学生について、こんな声をよく耳にします。何ごとにも「真面目」、他方で少し「不器用」なところがありそうだ。その一方で、すごく「伸びしろ」があるに違いない。何ごとに対しても実践力のある人が多い。困難から逃げない。やり遂げる。大学祭などお祭りが好き。幹事をするのが得意。他にもいろいろありそうです。

本学では多様性を大切な視点としていて、皆さまの匂いを尊重していますが、多様な匂いに「府大の匂い」が加わったのではありませんか。キャンパスの中で行われている教育、研究、課外活動にもそういう「府大らしさ」があると思います。あなた方が本学におられる間に、大学もあなた方の力で「府大らしさ」が少し変わったかもしれませんね。

私は 大阪府立大学にも卒業生にも「花の匂い」のように美しい魅力があってほしいと思いますし、学生、教職員の方と一緒に少しずつ大学を変えながらも「府大の匂い」を大切にしていきたいと思います。

InfluencerとInfluencee

私のアメリカ人の友人は、彼のホームページに自分のInfluencerとInfluenceeが誰であるかを書いています。これら2つの単語は「影響を与える」というInfluenceから派生した語です。自分の考え方を誰によってポジティブに変えたかと、逆に自分が誰の考え方をポジティブに変えたかを広く公開しています。私は、彼が常にそれを気にしているので驚いた覚えがあります。

私に「問い」があります。「あなた方は在学中にInfluencerはいましたか?研究室やゼミの先生ですか、クラブの先輩ですか、同級生ですか、海外からきた留学生ですか。本あるいは、音楽・映画といった人物以外のものですか。アルバイトですか。その人からどういう影響を受けましたか。技術ですか、思考方法ですか、それとも人生観ですか。」

マインドセットあるいはモチベーションかもしれませんね。影響を受けた人(Influencer)のようになりたいとは思いませんか?

逆に、「あなたが影響を与えたInfluenceeはいると思いますか?」ここにおられる皆さまは、きっと研究室やクラブの後輩に影響を与えたでしょうね。地域の住民に影響を与えた方もおられるかもしれませんね。別の方は、大学の教育や研究に影響を与えたかもしれませんね。

あなたが受けた影響を振り返ってみると、それはあなたが別の誰かに与えた影響とよく似ていませんか?それが大阪府立大学の「魅力である気品」だったのではありませんか。あなた方が気づいているか気づいていないかに関係なく、ここにおられる全員の方が、大学にいる間にInfluencerから得たものをInfluenceeに与えているのではないかと私は思います。この修了・卒業という機会に考えてみてください。

世界に翔く地域の信頼拠点

本学は、地名的にも「翔く(はばたく)」と言うにふさわしい場所にあります。メインキャンパスは、南海高野線の「なかもず」と「白鷺」という鳥の名称がついた駅の近くにあります。羽曳野という地名は、日本書紀によると日本武尊(やまとたけるのみこと)が亡くなって白鳥として古市に飛来し、その後、羽を曳くように飛び去ったということからつけられたそうです。りんくうキャンパスは、まさに「空の玄関口」にあります。これらのキャンパスには「府大の匂い」があります。皆さまは、本日、大阪府立大学の匂いとともに世界に翔(はばた)こうとしていると言えるかもしれません。

一方、大学が地域の信頼拠点であるには、組織として長く続く継続性が必要です。大阪市立大学との統合の話があって、皆さまには「母校がなくなってしまうのではないか」とご心配をおかけしていますが、たとえ、仮に名称が変わることがあったとしても、教育カリキュラムが変わることがあっても、大阪府立大学はいつまでもあなた方の母なる港「母港」です。校友会という全学同窓会組織があり、大学と一緒になって活発に活動しています。このことについては、安心するとともにいつでも帰って寛ぎ、新たな力を身に着ける場所として、母校に戻って来てください。

本学では、誰もが気軽に戻ってこられるように社会人大学院や生涯学習の講座、アントレプレナー教育のプログラムなどを用意しています。メールマガジンやSNS(ソーシャルネットワークサービス)による積極的な情報発信にも努めています。どうか母校の動きにもこれまで以上に関心を持ち続けてください。

まとめ

ここにおられる皆さまは、ここ大阪府立大学で学んで、気づいていないかもしれませんが、きっと本学の匂いがついています。この「らしさ」を強みに自信をもって世界に翔(はばた)いてください。

一方で、新しい活躍の場で目標とする人物像は誰なのか、自分の存在を誰にどのように影響を与えていくのかを考えてください。すると、その場にも自然に大阪府立大学の匂い(らしさ)も加わっていくのではないかと信じています。

これからも花(さくら)まつりや大学祭などに戻ってきてください。きっと卒業後、時間が経って薄れていた大学の匂いに気づくことができます。本学と皆さまの間は、いつまでもお互いがInfluencerでありInfluenceeでありたいと願っています。

皆さまには、Influenceeとして大学に戻って学ぶ、あるいは、立ち寄るだけではなく、ときにInfluencerとして講師をお願いするかもしれません。ときに地域連携や産学連携のコーディネータ役をお願いするかもしれません。ときに国際交流のアドバイザーになっていただくかもしれません。大阪府立大学が世界に翔く地域の信頼拠点として「匂い(らしさ)」を持ち続けるために。

最後になりますが、私たちは大阪府立大学らしい教育・研究・地域貢献を今後も充実させ、持続ある活動を行っていくために、支援策として「つばさ基金」を設立しています。本日も皆さまのお手元に資料をお渡ししていると思います。この資料をご覧いただき、近い将来 ご協力を頂ければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。

お祝いというより問いかけとお願いをしましたが、以上をもちまして、本日から始まる皆さまの新しい生活における飛躍を期待して式辞といたします。本日は、おめでとうございました。

学長 辻󠄀 洋

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