公立大学法人大阪府立大学

光・放射光X線・電子線を駆使して高性能強誘電体に潜むフラクタル性を解明

更新日:2017年12月14日

発表のポイント

  • 高性能強誘電体に潜む法則性(フラクタル性)を解明。
  • 複数の量子ビーム計測技術の利用により、原子の並びの法則性と性能の関係を解明。
  • 環境に優しい高性能強誘電体の実現に期待。

概要

国立大学法人 島根大学の塚田 真也 准教授と国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構の大和田 謙二 上席研究員を中心とする研究グループは、国立大学法人 岐阜大学の大和 英弘 准教授・安田 直彦 名誉教授、公立大学法人 大阪府立大学の森 茂生 教授、国立大学法人 筑波大学の小島 誠治 特命教授、関西学院大学の寺内 暉 名誉教授、島根大学の秋重 幸邦 理事との共同研究により、高性能な強誘電体結晶に潜む「フラクタル性」を光や放射光X線・電子線を組み合わせて広い時間・空間領域で明らかにしました。

強誘電体は原子レベルで正と負の電荷の重心がずれることによって生じる電気の「分極」を持ちます。これにより電気を蓄えることや、電気と力や熱とを相互に変換できることから、コンデンサや圧電素子、センサーに使われます。中でもリラクサー強誘電体(解説1)は、材料の組成や分極の広がり・構造を複雑にすること、すなわち不均質化によって高い性能が実現されます。この不均質な構造は原子レベルからミリメートルまで様々な大きさを持つとともに、様々な速さで動くことから、高い性能の本質を解明するためには「様々な長さや時間領域を計測する」ことが必要です。

本研究では、リラクサー強誘電体である不均質化した Pb(In1/2Nb1/2)O3を対象に、構造を電子顕微鏡観察と放射光X線散乱計測により幅広い長さで計測するとともに、これらの構造が動く様子を光散乱により1 GHzから100 GHzまで観測しました。その結果、原子レベルから100 nmにわたって自己相似的に類似した構造が揺れていること、すなわち「フラクタル性」(解説2)を持つことが、構造と動きの両面から初めて確かめられました。一方、均質で性能が低いPb(In1/2Nb1/2)O3は「フラクタル性」を示しませんでした。

本成果は、リラクサー強誘電体の高い性能の解明に向けた大きな一歩であり、世界中で進められている鉛を含まずより安全な強誘電体の開発への貢献が期待されます。

今回の研究成果はサイエンティフィックレポート(Scientific Reports)誌オンライン版に12月13日付で掲載されました。

論文タイトル「Relation between Fractal Inhomogeneity and In/Nb-Arrangement in Pb(In1/2Nb1/2)O3
(日本語訳: Pb(In1/2Nb1/2)O3におけるInとNbの配列とフラクタル性を有する不均質な構造の関係)

用語解説

解説1 リラクサー強誘電体

強誘電体は、電気を一時的に蓄えたり(蓄電性)、電気を音や振動に換えたり(圧電性)するなどと多様な性質を備えています。これらの性質により、強誘電体はセンサーやプローブ、バッテリー、キャパシタ、メモリーなど、広範囲にわたって応用されています。
強誘電体物質群のうち、誘電率や電圧係数が非常に高いことに加え、広い温度領域で安定してその特性を維持できる性質(緩和、リラックス性能)を持つ強誘電体をリラクサー強誘電体とよびます。Pb(Mg1/3Nb2/3)O3やPb(Zn1/3Nb2/3)O3が有名で、高い圧電性を利用した超音波診断装置や魚群探知機のプローブとして応用されています。

解説2 フラクタル、フラクタル次元、ベキ乗則

自分の図形の中に自分自身と相似(自己相似)な図形を内包している構造をフラクタルといいます。ロシアの民芸品であるマトリョーシカのような構造のことで、人形の中を開けるとまた人形が、その中にまた人形が入っています、このフラクタルを特徴づけるために、フラクタル次元Df(fractal Dimension)を用います。フラクタルを有する図形の大きさ(y)の分布は距離(x)に対して「べき乗則: y=ax-Df 」で表され、両対数プロットの傾きからDfを求めることができます。

お問合せ先

(研究内容について)

国立大学法人島根大学 教育学部

准教授 塚田 真也

Tel 0852-32-6304 Eメール tsukada[at]edu.shimane-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門 関西光科学研究所 放射光科学研究センター

上席研究員 大和田 謙二

Tel 0791-58-1045 Eメール ohwada.kenji[at]qst.go.jp [at]の部分を@と差し替えてください。

(報道担当)

公立大学法人大阪府立大学 理事長室 広報課 広報グループ

Tel 072-254-9103