公立大学法人大阪府立大学

本学教員がマテリアルサイエンスのトップ国際総合科学誌「Advanced Materials」の招待に応じ、業界の鳥瞰、研究開発の最前線、および展望を発表―ナノ流体チップ:マテリアルサイエンスの新しい舞台―

更新日:2017年11月28日

大阪府立大学大学院工学研究科の許岩准教授が、近年取り組んできたナノ流体チップとマテリアルサイエンスの融合に関する功績が認められ、業界トップ国際総合科学誌「Advanced Materials」の招待に応じ、業界の鳥瞰、研究開発の最前線、および展望に関する論文を発表しました。

ナノ流体チップの写真

許岩准教授はナノ流体チップ(解説1)(図参照)とマテリアルサイエンスの融合に取り組んでいます。ナノ流体チップを中核とする革新応用は、化学やバイオ、材料、エネルギー、創薬、臨床医学などの幅広い分野の革新をもたらすと期待されています。上記の論文において許岩准教授は、将来、マテリアルサイエンスとナノ流体チップ技術開発にお互いに重要な役割を果たすことを確信した上で、より多くのマテリアルサイエンスの研究者がこの新しい舞台に参加するよう呼びかけています。

研究の概要

近年、化学・バイオ技術にオーダーシフト革命(解説2)をもたらすナノ流体チップ技術が注目されています。ナノ流体チップを用いることにより、ナノスケールの流体(=ナノ流体)特有の物理現象と効果が続々と明らかになり、化学やバイオ、材料、エネルギー、創薬、臨床医学などの幅広い分野の革新が期待されます。しかし、応用開発を支える様々な基盤技術が欠如していることから、ナノ流体チップを中核とする革新応用には多くの課題が残っていました。近年、上記の課題を解決するために、大阪府立大学大学院工学研究科の許岩准教授が率いる研究チームは、新しい手法を用いて、ナノ流路加工、およびナノ流体制御、計測、機能集積化等基盤技術を開発し、ナノ流体チップ技術と様々な分野(特にマテリアルサイエンス分野)との融合への道を開拓してきました。

ナノ流体チップ内の制御されたナノ流体環境は、物質の可能性を探求し、新しいマテリアルを創造するための前例のない新しい舞台となることが期待されます。この舞台において、マテリアルの機能をナノ流路におけるユニークなナノ流体の物理現象・効果と巧みに接合し、同時にマテリアルの特性に直接に影響を与えるナノ流路の極微小空間特徴(解説3)を十分に活用することより様々な創造性をもたらします。これが実現できれば、マテリアル合成の新しいアプローチが開発できるだけでなく、マクロおよびミクロンスケールでは得ることができないマテリアルの機能の飛躍を達成することも期待されます。 さらに、ナノ粒子やナノチューブ、高分子などのたくさんのナノマテリアル、およびナノ流体と同じスケールにあるDNAやタンパク質、ウイルス、エクソソームなどの数多くの生体物質にナノ流体チップを利用することにより、これまでにない超高の空間的・時間的分解能下でこれらのナノマテリアル・生体物質(分子でさえも)を1個レベルでの分離、検出、操作、組み立て、さらには反応させることが可能になります。これは、新たな機能性材料の合成やDNAの任意合成等を可能とする究極の精密人工合成法の開発、がんや感染症の超早期診断・予測および高精度予後判断が可能な医療技術の開発、精密医療と個別化医療の実現に貢献できます。

このたび、許岩准教授らが取り組んできたナノ流体チップとマテリアルサイエンスの融合に関する功績が認められ、マテリアルサイエンスのトップ国際総合科学誌「Advanced Materials」の招待に応じて、この新しい分野の開拓者として業界の鳥瞰、研究開発の最前線、および展望に関する論文を発表しました。許岩准教授は、将来マテリアルサイエンスとナノ流体チップ技術開発にお互いに重要な役割を果たすことを確信した上で、より多くのマテリアルサイエンスの研究者がこの新しい舞台に参加するよう呼びかけています。

論文タイトル「Nanofluidics: A New Arena for Materials Science」

用語解説

解説1 ナノ流体チップ

内部にナノメートル(10 億分の1 m)サイズの流路(ナノ流路)が彫り込まれた数センチ四方のガラス板で、ナノスケールの流体(ナノ流体)の実験プラットフォームとナノスケールの極微小化学・バイオ実験環境として近年発展を遂げている最先端デバイス。

解説2 オーダーシフト革命

ナノ流体チップは、化学・バイオ技術に従来のセンチメートル(cm = 10−2メートル)オーダー(ビーカーやフラスコが代表)およびマイクロメートル(μm = 10−6メートル)オーダー(マイクロ流体チップやマイクロリアクターが代表)から、ナノメートル(nm = 10−9メートル)オーダーへのシフト革命をもたらし、化学・バイオ諸分野で新しい科学を開拓しつつある。

解説3 ナノ流路の極微小空間特徴

極高表面積対体積比、極短拡散距離、極短熱伝達距離など。

本成果は、次の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

関連研究は、科学研究補助金(JP17H05468、JP16K13653、JP26706010、 JP26630403、 JP26107714:研究代表者:許岩)、および中国国家自然科学基金(21628501)などからの支援を受けて行われました。

お問い合わせ

公立大学法人 大阪府立大学大学院 工学研究科 物質・化学系専攻化学工学分野

准教授 許 岩(シュウ イェン)

Tel 072-254-7813 Fax 072-254-7813 Eメール xu[at]chemeng.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。