大阪府立大学

金ナノ粒子による色変化で細菌の生物機能を評価―細菌の生存度を目視でリアルタイムに測定―

更新日:2018年4月5日

大阪府立大学 大学院 工学研究科の椎木 弘 准教授、長岡 勉 名誉教授らの研究グループは、分子修飾した金ナノ粒子(解説1)と微生物由来の物質の相互作用を利用して、微生物の生存度が測定できる新しい手法の開発に成功しました。本成果により、目視による細菌の生死判別や生存度のリアルタイム測定が可能になりました。医療、製薬、農業、食品関連産業などの様々な分野における衛生管理や品質管理の観点で、細菌の生存度を正確に評価する有効な手段となります。また、種々の分泌物の標識が可能になることから、細菌の生物機能を評価する新しい方法として期待されます。

本開発のポイント

粒子の分散状態に基づいて赤色から青色に変化

図 微生物の生存度を金ナノ粒子の分散状態に基づいた色変化により判定

分子導入により特定物質に作用する金ナノ粒子を作製することができます。金ナノ粒子の溶液は、粒子の分散状態に基づいて赤色から青色に変化します。これらのことを利用して、目視による細菌の生死判別や、特定波長の吸光度に着目した生存率の測定を可能にしました。菌種によらず広く利用することができます。

概要

細菌の生存度は、衛生管理、抗菌剤の開発、微生物資源の有効利用など、様々な目的において重要なパラメータとなります。本研究では、細菌から分泌される物質と金ナノ粒子に導入した分子の相互作用に基づいて、金ナノ粒子の分散状態が変化することを明らかにしました。さらに、金ナノ粒子を含有する細菌懸濁液の色が細菌の生存度に強く依存することを見出し、色変化を利用して細菌の生存度を評価する簡単な手法を開発しました。金ナノ粒子が分散した溶液の色は赤色、粒子の凝集によって紫色から青色に変化します。この色の変化は肉眼で容易に確認できるため、細菌の生存度をリアルタイムで評価することが可能になります。さらに特定波長の吸光度に着目することで生存度の正確な測定も可能になります。また、グラム陽性、グラム陰性(解説2)にかかわらず、種々の菌種に適用可能であることから、様々な用途において細菌の生存度を評価する有用な方法となります。本法により、種々の分泌物の標識が可能になることから、細菌の生物機能を評価する有効な手段ともなり得ます。

本成果は米国化学会「Analytical Chemistry」オンライン版で 2018年3月1日に公開されました。

論文タイトル「Real-Time Evaluation of Bacterial Viability Using Gold Nanoparticles 」

用語解説

解説1 金ナノ粒子

金コロイドとも呼ばれ、1から100 nm程度の粒径をもつ金の粒子のこと。分散状態では特徴的な光学特性に基づく赤色を呈することから、古くからステンドグラスや切子などの赤として、近年では、インフルエンザや妊娠検査用テストストリップの標識として利用されている。

解説2 グラム陽性菌、グラム陰性菌

グラム染色によって紫色になるのがグラム陽性菌、紫色にならず赤く見えるのがグラム陰性菌と総称される。染色性の違いは細胞壁の構造に起因し、厚いペプチドグリカン層により覆われたグラム陽性菌に対し、グラム陰性菌はリポ多糖類により覆われている。

研究助成等

本開発は農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(25020A)、JSPS科学研究費補助金(26620072、 16H04137)、JSPS特別研究員(16J07230)の支援により行われました。

お問い合わせ

公立大学法人 大阪府立大学大学院 工学研究科

准教授 椎木 弘

Eメール shii[at]chem.osakafu-u.ac.jp[at]の部分を@と変えてください。