食中毒菌を転写したポリマー膜の高選択・迅速検出のメカニズムを解明―O157による食中毒などを未然に防ぐ超迅速検出法の開発に期待―
更新日:2017年12月1日
大阪府立大学LAC-SYS研究所のチーム (床波 志保 副所長、飯田 琢也 所長、清水恵美 技術補助員、田村 守 特任助教)は、食中毒の原因となる複数種の細菌のナノスケールな表面化学構造をポリマー膜に転写した「混合細菌鋳型膜」の作製に成功し、わずか5分以内で食中毒菌を検出し、細菌の種類やO157、O26といった大腸菌の血清型の違いも識別できる原理を世界に先駆けて解明しました。
研究成果のポイント
- 複数種類の大腸菌の種類を識別して、わずか5分以内で検出することに成功。
- 細菌鋳型膜で選択的に細菌を捉えることができるメカニズムを実験的、理論的に解明。
- 食品中(牛ミンチやレタスなど)の大腸菌群の含有量の大小を推定することに成功。
「混合細菌鋳型膜」と低周波電場による迅速・高感度検出法の概念図
本研究では上述の「混合細菌鋳型膜」に電場をかけて細菌を誘導して選択的にトラップし、膜を設置した水晶振動子の振動数変化から、数分程度の短時間で細菌の含有量と種類を判別することに成功しました。さらに、熱・紫外光・抗生物質など複数手段でダメージを与えた細菌の表面状態の違いを識別できることも示し、細菌表面の糖鎖などの化学構造がポリマー膜に転写されることで、高い選択性が得られることを独自のナノ電磁応答理論で解明しました。
従来の細菌検査などで利用されている蛍光色素を用いた方法や培養法では細菌検出に数日~数週間を要します。しかし、本研究で解明した原理を用いれば、肉や野菜などの一般的な食品中であっても細菌の含有量の違いをわずか5分以内に計測できることを示しました。本成果は、物理化学的なアプローチによる細菌や細胞などのミクロンオーダーの生体構造の選択的な検出法の構築へ道を拓くものです。未知の細菌の迅速な同定や検出などに役立つ可能性もあり、食品衛生や医療応用など広範な社会的課題に革新的な手段を提供すると期待されます。
なお、本研究成果は英国「Nature Research」の論文誌である「Scientific Reports」にオンライン公開されました。
論文タイトル「Mechanism in External Field-mediated Trapping of Bacteria Sensitive to Nanoscale Surface Chemical Structure (ナノスケールな表面化学構造に敏感な細菌の外場誘導型トラップのメカニズム)」
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お問い合わせ
公立大学法人 大阪府立大学 研究推進機構 LAC-SYS研究所
副所長 床波志保(工学研究科応用化学分野 准教授)
Tel 072-254-9824Eメール tokonami[at]chem.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。所長 飯田琢也(理学系研究科物理科学専攻 准教授)
Eメール t-iida[at]p.s.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。