工学研究科の教員が参画する研究開発課題が令和3年度「秀でた利用成果」に選出!
更新日:2022年2月1日
2021年12月20日、文部科学省ナノテクノロジープラットフォームによる令和3年度「秀でた利用成果」が発表され、本学大学院 工学研究科 戸川 欣彦 教授が参画する研究開発課題「無機系キラル結晶におけるキラル誘起スピン選択性」、野元 昭宏 准教授が参画する研究開発課題「ヘテロ原子を含有する光感受性化合物の構造決定と抗がん光線力学療法への応用」がそれぞれ優秀賞に選出されました。
ナノテクノロジープラットフォーム事業では、最先端のナノテクノロジー施設・装置を有する25研究法人が、全国の産学官の研究者へ利用機会を提供、知識を共有することにより、イノベーションにつながる研究成果の創出をめざしています。
今年度は、昨年度までの約27,000件の利用課題の中から、イノベーションに繋がることが期待できるなど特に秀逸な成果7件が「秀でた利用成果」として選出されました。
研究者のコメント
工学研究科 電子・数物系専攻 電子物理工学分野 教授 戸川 欣彦
この研究は2018年秋に開催された日本物理学会で偶然に加わった議論がきっかけで始まりました。その経緯を思うと、直接お会いしてお話しすることの大切さを感じます。学生たちが実験を猛烈に頑張り、実験データを吟味しながら慎重に議論を重ね、成果発表に至りました。今回表彰いただいたことを共同受賞者ともどもとても嬉しく思っております。
この研究ではキラルな結晶がスピンの良導体であることを発見しました。スピンとは磁気の根源で、電子が電荷と共に持つ基本的な特性です。スピンの向きを揃えて伝えることは重要な研究課題です。従来の材料ではその伝搬距離は数百ナノメートルから数十マイクロメートルに留まっていましたが、キラル結晶ではミリメートル近くまで伝わることがわかってきました。我々の研究が記録更新を重ねています。今後の進展が楽しみです。
工学研究科 物質・化学系専攻 応用化学分野 准教授 野元 昭宏
近年、光によってがん治療を行う光線力学療法(PDT)は、切開部分を小さくすることが可能な身体への負荷が少ないがん治療として注目されています。そこで、がん細胞が持つ糖(グルコース)を取り込みやすい性質を利用した薬剤開発を進めました。ヘテロ原子(イオウ)の反応性を用いることにより、糖鎖部分を導入したチオグルコース連結クロリンe6薬剤の合成に成功しました。がん細胞に対する効果を調べたところ、本薬剤は光照射により高い抗がん効果を示しました。
この有機合成化学的に合成した薬剤は、天然成分が主要成分であり、毒性や体内残存性が低く、速やかに体外に排出されるため、日帰りがん治療薬として現在研究を継続しています。
関連情報
- 令和3年度「秀でた利用成果」の発表について(国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS) ナノテクノロジープラットフォームセンター Webページ)
- 大阪府立大学大学院 工学研究科 電子・数物系専攻 電子物理工学分野 戸川研究室 Webサイト
- 大阪府立大学大学院 工学研究科 物質・化学専攻 応用化学分野 小川研究室 Webサイト(工学研究科 野元 昭宏 准教授)
お問い合わせ
工学研究科 教授 戸川 欣彦
Eメール y-togawa[at]pe.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。工学研究科 准教授 野元 昭宏
Eメール nomoto[at]chem.osakafu-u.ac.jp [at]の部分を@と差し替えてください。