大阪府立大学

本学研究者による研究課題および本学研究者が参加する事業が、令和2年度日本医療研究開発機構(AMED)に3件採択

更新日:2020年7月29日

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)による令和2年度公募事業の採択結果がAMED Webサイト上で発表され、「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業」に、総合リハビリテーション学研究科の桒原 晶子(くわばら あきこ)准教授、「創薬基盤推進研究事業」に、理学系研究科の藤井 郁雄(ふじい いくお)教授の研究課題がそれぞれ採択されました。また、工学研究科の児島 千恵(こじま ちえ)准教授の研究課題が、「橋渡し研究戦略的推進プログラム/異分野融合型研究開発推進支援事業(大阪大学拠点)」にて、大阪大学により採択されました。

AMEDは、医療分野の基礎から実用化までの研究開発の成果が円滑に実用化されるよう、大学や研究機関などが行う研究を支援し、研究開発やそのための環境整備に取り組む機関です。内閣に設置された健康・医療戦略推進本部の意を受けて、文科省・厚労省・経産省からの補助金をもとに研究予算の管理・配分を行っています。

採択概要

桒原 晶子(総合リハビリテーション学研究科 栄養療法学専攻 准教授)

公募研究開発課題名 【健康増進・生活習慣病発症予防分野】
生活習慣病の予防の質向上に資するエビデンス創出研究(栄養)
研究開発課題名 日本人若年女性における血中ビタミンD濃度の実態調査およびビタミンD欠乏判定のための予測モデル開発研究
研究開発実施予定期間 2020年度(令和2年度)~2022年度(令和4年度)(最長3年間)

研究課題のポイント

ビタミンD欠乏症は骨粗しょう症をはじめとする生活習慣病に関係することが知られています。適度な紫外線に当たるとビタミンDは皮膚で生成できますが、UVカットに対する意識の向上により、特に若い女性でのビタミンD欠乏症が問題になっています。

本研究は、日本各地で日照時間を計測するとともに、食生活の情報(ビタミンD摂取量)および生活習慣の聞き取りを実施し、血液中のビタミンDの測定値との関連を調べることで、ビタミンD欠乏の実態について予測モデルを作成し、今後の予防につなげようとする試みです。

研究者コメント

一見、健康に見える方でもビタミンDの不足・欠乏状態にある方が多いことが明らかにされています。しかし、自身のビタミンD栄養状態を把握するには、採血を伴う特殊検査が必要です。そこで我々は以前に、採血をせずともビタミンD欠乏リスクを判定するツールを開発しました。本研究では、このツールのさらなる精度および汎用性を高めるための研究を行います。この成果が、個人に対しては自助的な健康管理の支援、社会に対しては適切なビタミンD摂取量、日照量の科学的根拠の基礎資料として還元されることをめざします。

藤井 郁雄(理学系研究科 生物科学専攻 教授)

公募研究開発課題名 低分子医薬品の次世代デザイン手法に関する研究
研究開発課題名 立体構造規制ペプチドを基盤とした低分子医薬品の次世代デザイン法の開発
研究開発実施予定期間 2020年度(令和2年度)~2022年度(令和4年度)(最長3年間)

研究課題のポイント

分子標的化合物探索、特にタンパク質‐タンパク質相互作用(PPI)を遮断する低分子化合物の創出は、企業ニーズが高い一方で成功例が多くありません。従来法の課題を一挙に解決する革新的な方法として、進化分子工学(細胞表層提示ライブラリー技術)とペプチド構造構築理論を組み合わせた分子標的低分子化合物の新しい設計法を開発します。本法では、手間のかかる標的タンパク質の立体構造解析や高価な低分子化合物ライブラリーを必要としないため、迅速かつ低コストの分子標的低分子化合物の獲得が達成されます。今後の医薬品開発に大きなインパクトを与えるものと期待されます。

研究者コメント

これまでに藤井研究室で独自に開発してきたペプチド・ライブラリー(ヘリックス・ループ・ヘリックスペプチド)を活用して、疾患関連タンパク質を阻害する分子標的ペプチドの獲得に成功してきました。今回は、これら分子標的ペプチドから得られる相互作用情報を駆使して、日本発信の新しい創薬手法を開発します。

児島 千恵(工学研究科 物質・化学系専攻 准教授)

公募事業課題 橋渡し研究戦略的推進プログラム/異分野融合型研究開発推進支援事業
事業課題名 異分野融合型研究の推進による自立循環型新規医療創出基盤の確立
採択拠点 国立大学法人 大阪大学
研究開発課題名
※大阪大学より採択
イオン性ゲルを用いた組織透明化技術による3Dがん病理診断技術の開発
研究開発実施予定期間 2019年度(令和元年度)~2021年度(令和3年度)

研究課題のポイント

がん治療では、患者ごとに治療効果が大きく異なることが知られているため、治療効果を正確に予測する技術が望まれています。このため、がんの病理診断では、がん細胞の存在の有無だけでなく、がん細胞の表面状態やがんの微小環境(免疫細胞の種類や量)などのがん組織の状態を診断する技術が必要です。しかし、既存の2次元の病理診断ではがん組織の全体像を把握することはできません。本研究では、独自に開発した高分子ゲルを用いることで、透明化が困難ながん組織を迅速に透明化できる技術にさらなる改良を加えて、3次元がん病理診断技術による精密診断法の確立を目的としています。

研究者コメント

これまで工学研究科の松本章一教授との共同研究によって、イオン性高分子ゲルを用いた迅速な生体組織透明化技術を開発してきました。本研究では、これをがんの病理診断に展開し、患者さんごとに適した治療を提案できるような診断技術を開発して、がん診断手法の変革をめざします。

関連情報

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大阪府立大学 研究推進本部 研究推進課 URAセンター

072-254-9128