大阪府立大学

令和4年 年頭の挨拶

更新日:2022年1月7日

学長の写真

皆さま 新年、明けましておめでとうございます。

昨年は通常業務に加えて、コロナ禍への対応、新大学に向けての準備等、本当にお世話になり、有り難うございました。本年も、新大学の開学、大阪府立大学創基140年事業へのご協力等、引き続きお世話になりますが、どうぞ宜しくお願いいたします。

さて、令和4年(2022年)のお正月、寒波の中に明けましたが、穏やかな三が日でした。皆さまはどのようにお過ごしになりましたでしょうか。私は家族や異なる括りの親族と3日間をのんびり過ごさせて頂きました。

昨年1年間についてはどのような印象をお持ちでしょうか。コロナ禍2年目ということで、不安に過ごした1年目とは少し異なり、新しい生活様式に無理矢理慣れながら、忍耐強く過ごしてきた1年だったのではないでしょうか。肌で感じる、足で稼ぐといった対面中心の日常の活動をオンラインで代替できるのかという実証実験から、仕事の大筋を進めていく上でのオンラインの有用性を確認する反面、その周辺にあるいわゆる「遊び」の部分に関して対面の重要性を再確認できた1年ではなかったかと思います。不要不急の活動が制限されて、外出や出張が極端に少ない日常生活は、私にとっては、あまりエキサイティングではないあっという間に過ぎた1年という印象です。

そうした単調な日常生活の中で、昨年私を最もワクワクさせてくれたのは、あの大リーガー、大谷翔平選手の活躍です。シーズン中は毎日テレビを録画して、大谷選手の打席、投球だけを早送り操作で観ていました。投打に渡る大活躍は勿論のこと、日本人が大切にしてきた謙虚な立ち振る舞いや純粋に野球を楽しむ姿、多くの人が同じ日本人として誇らしく思ったのではないでしょうか。また、現代ベースボールの常識を覆す「リアル二刀流」は昨年の流行語大賞にも選ばれました。一つの試合で、投手として投げ、打者として打ち走ることが彼の場合相乗効果を生んだ、それはこのスポーツの原点であり、多くの人に感動を与えました。勿論それが、一般人の想像を遙かに越える日常の努力の積み重ねの上に成り立ったものでもあることは言うまでもありません。

人を育てることを使命とし、「知」の拠点を目指す大学にとっての醍醐味は、知的活動における「大谷翔平」を育成することではないかと私は思います。常識を越えるスーパースターを育てましょう。そのためには、自分自身も含め、私たち自身が一層自らに磨きをかけて準備していきたいものです。

さて、いよいよ今年は、4月から新しい大学、大阪公立大学がスタートします。残り3ヶ月を切りました。それぞれ長い歴史と伝統を持ち、異なる文化を醸成しながら歩んできた2つの公立大学の統合、これまでに経験のない大変な事業ですが、私たちにとって本当に大きなチャンスでもあります。忙しい中、ここまで様々な局面で献身的に準備に取り組んでいただいた教職員の皆さまには、心から厚くお礼申し上げます。今後さらに正念場を迎えることになりますが、どうか引き続き宜しくお願いいたします。

学生から見ると、実質3つの大学が4月からは併存することになります。私は、昨年末、大阪市立大学の皆さんの集う場で、大阪市立大学次期学長予定者としての所信表明の機会を戴きました。その場で私は、統合に向けて何よりも大切なことは、まずは両大学の構成員の「調和」ではないかと申し上げました。本学学内でこれまで「垣根のない大学でつながりを」というモットーを掲げてきましたが、まさに今年、大阪市立大学、大阪府立大学、そして大阪公立大学の垣根を早くなくしていくことが、この3つの大学の学長となる私の使命と考えています。これまで統合や改組を繰り返す歴史と文化を培ってきた本学の教職員の皆さまには、どうか率先して調和のための範となって頂きたいと心より思っています。何卒宜しくお願いいたします。

年頭に当たり、教職員の皆さまに特にお願いしたいこと、本日は3つのことを述べさせて頂きます。一つ目は今こそ全員広報、二つ目は3つの大学で学生ファースト、三つ目は個々の研究を今こそしっかりの3つです。

まず、今こそ全員広報ですが、本学では2018年、辻学長の下、全員広報宣言がなされましたが、今こそ府大・市大一丸となって、皆さま一人一人に新大学「大阪公立大学」と「Osaka Metropolitan University」を広めるための広告塔となって頂くことをお願いしたいと思います。まずは大阪公立大学の名前が全国的には殆ど知られていませんので、学会等の研究活動で、意識的に新大学の名称をPRして頂ければと思います。特に国際的にはOsaka Metropolitan University は知名度ゼロですので、国際会議等の機会には、事あるごとに売り込みをお願いしたいと思います。

二つ目の「3つの大学で学生ファースト」につきましては、言うまでもなく、3大学共存の期間中、旧大学の学生が不安なく卒業まで学べることを意識して学生と接して頂きたいということをまずは指しています。特に新旧両大学の学生が混在する授業では、両者に寄り添って進めることが重要と思っています。また今後、3つの大学の学生が混在して複数のキャンパスを自由に行き来できる環境が実現されますが、ダイバーシティを重視する新大学としては、他大学にはない画期的な交流の場を生み出せるのではないかと思います。皆さまには、教育、研究、社会貢献、課外活動等の現場で、多様だからこその新しい可能性を、学生ファーストで引き出して頂けないかと期待しております。

最後の「個々の研究を今こそしっかり」は、毎年この年頭挨拶で申し上げてきたことで、繰り返しとなり恐縮です。ただ昨年の年頭挨拶で文科省の科研費複数応募の徹底をお願いしたにもかかわらず、その応募数が減少したことは私にとってはショックでした。科学技術イノベーション基本法が改正されて、総合知が力強く謳われるようになり、人文・社会科学含めどの学問領域もイノベーションを生み出すのに重要であることが強く認識されるようになりました。科研費は個人の自由な発想で研究を進めていくという趣旨から、研究分野を問わず大学に籍をおく研究者として必須と思います。少なくとも私は40年間、そのように思って最重要視し、応募し続けてきました。皆さまには、ぜひご理解頂き、この節目の時に個人研究のあり方を再度チェックして頂けないでしょうか。国プロも企業との共同研究も、全てその原点は個人研究の科研費と私は信じていますので、どうか宜しくお願いいたします。

今、国は日本の大学を、世界と伍する研究型大学と地方創生のハブとなる大学に分けようとしています。大阪公立大学では、大阪の知の拠点なることに加えてグローバルに発展する高度研究型大学を目標としており、まさに「リアル二刀流」を目指しています。このリアル二刀流は、不断の努力が必要ですが、大きな相乗効果を生む可能性を秘めています。今後、産学官共創で推進していくイノベーションアカデミー構想はそのためのものです。地域の皆さんの幸せに貢献できる大学だからこそグローバルに通用する、世界で認められる大学だからこそ地域の皆さんにも信頼される、そしてそこには産官民が集まり発展する。そういった好循環を、大阪公立大学の強みを活かして、学生を巻き込んで生み出していく、今年はその基礎を築く重要な年です。

昨年も申しましたが、大阪公立大学の10年後、20年後の姿を描くのは、教職員の皆さま、特に若い方々の双肩にかかっています。「大学人としてこんな夢のある、素敵なときに立ち会える」と敢えて前向きに取り組んで頂けないでしょうか。個々の教職員の力を結集して、新しい大阪公立大学の歴史を開きましょう。

皆さまにとって、この一年、希望に満ちた、充実した年となることを祈念して、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

2022年1月7日
学長 辰巳砂 昌弘