大阪府立大学

2019年度 入学式式辞

更新日:2019年4月10日

新入生の皆さん、大阪府立大学の学域ならびに大学院への入学、おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。

本日ここに、多数のご来賓、ご家族、関係の皆さまのご臨席のもと、2019年度の入学式を挙行できますことに対し、大変嬉しく思います。学士課程、大学院博士課程合計2,204名の皆さんが大阪府立大学に入学されました。本学を代表して、皆さんを歓迎します。また、この日を心待ちにしてこられたご家族や関係の皆さまにも、心からお祝い申し上げます。

さて、本学は1883年(明治16年)に設置された獣医学講習所が源になっており、今年で創基136年を迎えます。新制大学としては、1949年(昭和24年)に設立されましたので、今年で創立70年になります。また、2005年(平成17年)には大阪府立の3大学(旧 大阪府立大学・大阪女子大学・大阪府立看護大学)が統合されて公立大学法人大阪府立大学が誕生し、そこからは14年が経過しています。そして、本年4月1日をもって公立大学法人大阪が発足し、一法人が大阪府立大学、大阪市立大学、大阪府立大学工業高等専門学校を擁する組織となりました。これからは大学間での交流・連携を密にしながら、大学統合に向けて着実に歩んで参ります。1949年の新制大学開学の折、当時の赤間文三 大阪府知事が「日本一の大学をつくる」と当時の浪速大学(6年後に大阪府立大学)を設立し、そこからすでに十万人に及ぶ卒業生が社会の各方面で活躍され、輝かしい発展を遂げて参りました。これから開学をめざす大阪府立大学と大阪市立大学が統合された新大学は、間違いなく「日本一の大学」をめざすことになります。大阪府立大学に入学された皆さんにはプラスになることはあっても、マイナスになることは何一つありませんので、何も心配せずに学業に励んでください。

学域生へ。「勉強」と「学問」の違い、自主・自立を

まず、新しく学域に入学された皆さんに申し上げます。

大学は、高校までの教育機関とはかなり異なります。すべての点で学生は「自主・自立」のもとで学業に励むことを前提にしています。この点についての意識を明確に持っていただくことをまずは皆さんにお願いします。「自学・自習」の場と言い換えても良いと思います。講義・演習・ゼミ・実験・実習など、大学が提供するカリキュラムは、皆さんが自学・自習して成長されるのを、最適な形でサポートするものでしかありません。

皆さんは、受験勉強の結果、本学の入試に合格されたかと思いますが、大学では「勉強」という言葉ではなく、「学問」という言葉を主に使います。これまで、受験という目標に向かって「強いて勉める」と書く勉強には、必ず正解というものがあったと思いますが、「問いを学ぶ」と書く学問には必ずしも正解があるとは限らないのです。誰かに強いられることなく「なぜ?」「どうして?」といった問いを発することによって学ぶのが学問です。受験「勉強」では、正解が用意されていて、早く解くためのトレーニングが重要という側面もありますが、「学問」においては、早く解くか否かはそれほど重要ではありません。まず自らが問う、つまり課題を設定するところから始めます。必要なことを自分で調べ、能力の限り、知恵の限りを尽くして、考えに考えて解を求めていきます。解があるかどうか分からないことも多く、あっても一つとは限りません。どのような学問分野、専門領域においても、自分で納得のいく解を見つけることが重要です。私はこの4月から学長に就任しましたが、今でも将来のエネルギー問題を解決するための全固体電池の研究を続けています。課題の山積するこの研究に対して、研究室の学生の皆さんと一緒に考えて、長年取り組んで来ましたが、ようやく全固体電池は車載用として実用化前夜を迎えています。これが「学問」のひとつのリアルな姿です。皆さんも自分で考え抜くことを是非、学域生の4年間に身につけてください。そのために、大学のカリキュラムは用意されています。

また、私たちのまわりに起こる現代の問題は、非常に複雑なことが絡んだことばかりですから、あるひとつの学問分野や専門知識を持った人だけで解決できることは殆どありません。本学では、2012年から幅広い学びを可能にするため、教育課程に工夫を凝らした学域・学類制をスタートさせました。現代社会のニーズに柔軟に応えるために、これからの社会をリードする人材は専門性に長けているだけでなく、高い教養と幅広い分野の知識や技能を身につける必要があると考えています。基礎から専門にいたる教育研究の質をこれまで以上に向上させ、実践力をつける教育を充実しています。

大学院生へ。これから必要とされる真の実力を

続いて、大学院に入学された皆さんに申し上げます。

本学には、産業界のリーダーとなる博士人材育成をめざすための制度として、博士課程教育リーディングプログラム「システム発想型物質科学リーダー養成学位プログラム」があります。このプログラムは、新しい時代にふさわしい大学院の形成を目的に文部科学省が推進してきたもので、問題の全体を見渡せる俯瞰力や、新しいアイデアを生み出せる独創力を備えた博士課程の学生を育てようというものです。7年前、大阪市立大学と共同申請した結果、多くの申請大学の中から選ばれ採択されました。その履修生は着々と社会に羽ばたいていますが、学会からも産業界からも、このプログラムは大変高い評価を得ています。先ほど申し上げた、自ら課題を設定し、自ら考えぬいて解を求めることをより広い専門分野で実践できるようになるのがこのプログラムの特徴ですが、今後は、履修生以外にもこのプログラムの科目を受講できるように広げていく計画です。社会に出る際には、どの大学・大学院を卒業・修了したかではなく、大学・大学院で何を学んだか、何ができて何をしたいのかということが問われます。これからの社会で必要とされる真の実力を、是非本学で身につけてください。

垣根のない大学でつながりを

本学の理念は「高度研究型大学―世界に翔く(はばたく)地域の信頼拠点―」です。3つのキャンパスがありますが、中百舌鳥キャンパスは「なかもず」と「白鷺」という鳥の名称が付いた駅の近くにあります。羽曳野キャンパスは日本武尊(やまとたけるのみこと)が亡くなって白鳥になって飛来し「羽を曳くように飛び立った」という伝説の地であり、りんくうキャンパスは国際便が毎日多数発着する空の玄関口の近くにあります。まさに“はばたく”というイメージがふさわしいキャンパスを有している大学です。そして、教育・研究・地域貢献活動において「多様」「融合」「国際」という三つの視点を大切にしています。

文化の多様性は、その交流・革新・創造の源であり、人類に正義・自由・平和をもたらすものであるとの視点に立って、本学では専門分野、価値観の多様性とともに、それらを担う教員、職員、学生の多様性を重んじています。グローバルやダイバーシティを重んじるのも同じ視点からの発想であり、これまで「垣根のない大学でつながりを」というスローガンを掲げて「知」の創造拠点となることをめざしてきました。常に新しいものにチャレンジする高い志や、進取の気風をもって、自分の周りに垣根をつくることなく、「つながり」をもとめて活動しています。実際にキャンパスの高い塀も取り去り、キャンパスの外から中の様子がよく見えるようになりました。教員、職員、在学生、卒業生、留学生の間でつながりを強くする努力を重ねることで、グローバルな環境の中でダイバーシティを重んじる状況が生まれています。ここには、皆さんの学習意欲や知的好奇心に十分応えられるだけのグローバルかつ多彩な教育研究組織に加えて、21世紀科学研究センターと呼ばれる40を越えるユニークな研究所や充実した世界最先端研究設備があり、皆さんを迎える教職員や在学生には熱い思いがありますので、これから始まる大学・大学院生活を充実したものにしていただけると信じています。

学生生活では、学問を通じた知的活動だけでなく、仲間や教職員、卒業生、地域の人々との交流……ボランティア活動や、クラブやサークル活動などにも進んで参加し、コミュニケーション力や企画力、創造力など、あらゆる能力を養うことが出来ます。特に、学域生の4年間、獣医学類生の6年間というのは、他から強要されたり管理されたりすることのない、一生のなかでも極めて珍しい年月です。自分の裁量で自分を磨くことが出来るのが大学で、ここでの経験はすべて皆さんの将来の財産になります。自由を謳歌できるこの限られた時間に何をやりたいのか、大学でしか出来ないことを考え抜いていただければと思います。

また、本学の学びの場は、中百舌鳥、羽曳野、りんくうキャンパスだけでなく、“I-siteなんば”という都心拠点もあります。留学生や海外からの来客と交流する“I-wingなかもず”という国際交流会館もあります。百を越える国際交流協定締結大学が世界中にあります。本学の持つ様々な“知”の拠点を活用し、地域や世界への一層のつながりを作っていただければと思います。学問を通じて、課外活動を通じて、多くの良き友、終生の友を作られることを切望します。本学で学んだ学問、良き友、巡り会えた良き師、これらが、皆さんが社会に出て活躍される礎になります。10年先、20年先さらには何十年先に、大阪府立大学で学んで良かったと思うことが出来るよう祈念しております。

ご家族の皆さまへ

最後に、ご家族の皆さまに申し上げます。このたびは誠におめでとうございます。また本日はお越しいただきありがとうございます。元号が「令和」と改まる節目の年に、皆さまの大切な家族の一員をお預かりすることになりますが、責任を持って教育していきますのでご安心ください。ここで、一つお願いをさせていただきます。本学では、学生の海外派遣・留学支援、クラブやボランティアなどの課外活動に対する支援策として、ふるさと納税制度を活用した「つばさ基金」を設立しています。ご協力をいただければ幸いです。

以上をもちまして、本日から始まる新入生の皆さまの新しい生活における飛躍を期待して式辞と致します。本日は、誠におめでとうございます。

2019年4月6日
学長 辰巳砂 昌弘

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