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留学体験記

フランス交換留学 2011年6月 セルジーポントワーズ大学(経済学部 経営学科4回生Oさん)

 日本で例年よりも早い梅雨入りをした6月、フランスでも雨や曇りという天気が続いていました。普通なら3月に梅雨があるフランスですが、今年はそれがなく、3~5月にかけ良い天気が続き過ぎたようで、深刻な水不足に悩まされていました。本来なら5~6月は緑の美しい季節のはずなのですが、パリ郊外では緑ではなく黄色に染まった野原が広がっていました。

フランス留学写真「シュノンソー城」

 5月末にロワールの古城へ行ったのですが、「水に浮かぶ城」として有名なシュノンソー城(右の写真)の水も乾涸びており、少し残念でした。テレビの天気予報によると、これほど晴れの日が続くのは1900年以来110年ぶりだったそうです。ようやくやってきた恵みの雨でした。
 そんな6月、フランスでは「Baccalaureat -バカロレア」と呼ばれるとても大切な試験が行われていました。今回はこのバカロレア試験について書いてみようと思います。

 バカロレアはフランスの高校卒業試験で、これに合格すると高校卒業資格と同時に大学入学資格を得ることができます。このフランスには一部のエリート学校(Grands Ecoles-グランゼコール-と呼ばれており、Universite-大学-とは区別されています。)をのぞき、基本的には大学入学試験はないようです。もちろんパリ大学のような人気大学では定員をはるかに超える人数が応募するので、バカロレアの点数や大学独自の試験や面接などにより、入学者を絞るそうです。ちなみにバカロレアは工業、専門、一般と3種類にわかれており、一般バカロレアにおいてはさらに理系、経済・社会系、文学系の3分野にわかれています。今年のバカロレア受験者数は約65万人でした。バカロレアの合格率ですが、去年は85.8%だったそうです。

 さてこの試験、やっかいなことに論文・口述試験なのです。日本のように一つの問いに対して一つの答えしかないという生易しいものではありません。そしてさらにやっかいなのが、「哲学」が必修科目となっていることです。バカロレアは毎年、この哲学の試験で幕を開けます。哲学の試験時間はなんと4時間。長過ぎる試験時間の為に、飲み物、さらには食べ物の持ち込みも許可されています。そのあたりは意外とアバウトなようです。気になる哲学の試験問題…一番受験者数の多い一般バカロレア理系の問題を見てみましょう。以下の3問から1問選択です。
 1.文化は人間を変化させるのか。
 2.我々は事実に反して正当でいられるのか。
 3.「パンセ」(パスカル)からの抜粋を読み、解説せよ。
経済・社会系の問題は以下の通りでした。こちらも3問から1問選択です。
 1.自由は平等に脅かされているのか。
 2.芸術は科学ほど必要ではないのか。
 3.「善行について」(セネカ)からの抜粋を読み、解説せよ。
フランス人はこの中の一つの問いに対して、4時間も戦わなければならないのです。「フランス人は理屈っぽい」とよく言いますが、バカロレアにその理由があるのかもしれません。
 日本でも昨年の受験シーズンに問題になりましたが、もちろんフランスにもカンニングは存在しています。カンニングで毎年200~300人程が退席処分となっているそうです。バカロレアでカンニングをすると、後の5年間、一切の国家試験の受験資格を失うそうです。

 カンニングだけなら個人の問題なのですが、なんと今年は問題漏洩が発生してしまいました。 一般バカロレア理系の数学試験(全4問)の内容が1問だけ、試験前日にインターネットで流れてしまったのです。フランス教育省は漏洩した1問を採点しないこととし、再試験などの処置は取らないと発表したのですが、受験者はもちろん保護者や教師も激しくその対応に抗議をしており、とても難しい問題となっています。また数学だけでなく、英語と物理の問題も漏洩していたという噂が流れており、大きな波紋を呼んでいます。バカロレア試験制度自体のへの批判も相次いでおり、もしかしたらこの事件がフランスの教育制度が大きく変えるかもしれません。

フランス留学写真「美しいパリの夕焼け」

 フランスでの生活も残り3週間となりました。アパルトマンから見るこの美しいパリの夕焼けも、もう最後です。
 アメリカの偉大な小説家であるアーネスト・ヘミングウェイの「移動祝祭日」の扉ページにはこのように書かれています。「もし君が幸運にも青年時代をパリで過ごすことができたのなら、後の人生どこへ行こうともパリはいつも君と共にいる。パリは移動祝祭日なのだから。」彼にとってパリは、人生を大きく変えた街なのでしょう。

 私にとっても同じです。パリは私を一回りも二回りも大きく成長させてくれました。そんなパリを去るのはとてももちろん寂しいですが、ヘミングウェイの言葉通り、パリはいつも私と共にいてくれるでしょう。