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平成27年度 学位記授与式式辞

2016年3月24日

辻洋 学長
平成27年度学位記授与式

はじめに

 今年の冬は、前半とても穏やかで、その一方後半は、とても厳しい冷え込みでした。しかし、この数日、ようやく春らしい季節になってきて、各地から「開花した」という桜の便りが聞けるようになり、キャンパスの桜も咲きはじめました。

 本日ここに、多数のご来賓のご臨席を賜り、学位記授与式を挙行できますことを心から感謝申し上げます。

 卒業・修了される皆さん、おめでとうございます。大阪府立大学を代表してお祝いのことばをお贈りします。皆さんの成長を願いつつ、ここまで励ましてこられたご家族や指導教員の皆さまにも併せてお喜びを申し上げる次第です。

 本学が4年前に学士課程を改革して、学域・学類制という教育システムにしたとき、私は現代システム科学域の学域長でした。学域長として、多くの教職員とともに、国への申請手続きやカリキュラムの設計を行い、またいろいろな高等学校や予備校へも入試説明出向いていたので、本日、改革後に入学した学生の多くが、初の学域卒業生として「世界に翔いてくれる」ことを感慨深く、また本当に嬉しく思っています。

三つの話

 さて、本日の式典において、三つのお話をさせていただきたいと思います。

 一つは、今も言葉として使った「世界に翔いてほしい」、二つ目は「しなやかにしたたかにあってほしい」、三つ目は「母校にこれからも気軽に帰ってきてほしい」ということです。

1、世界に翔く(はばたく)地域の信頼拠点

 本学の理念は、「高度研究型大学―世界に翔く地域の信頼拠点―」です。この理念は

「公立大学としての存在意義を高め、地域に信頼される存在となるためには、地域社会や産業界を牽引する人材が本学から持続的に巣立ち、広く世界に翔く(はばたく)ことでその証(あかし)を立てなければならない。それらを追求するため、日本のみならず世界の研究型大学の変革の起点となり、地域に信頼される知の拠点となる」

ということを掲げたものです。

 皆さんが学んだ大阪府立大学は、地名的にも「翔く」というにふさわしい場所にあります。メイン・キャンパスである中百舌鳥キャンパスは、南海高野線のなかもずと白鷺という鳥の名称が付いた駅の近くにあります。羽曳野キャンパスがある「羽曳野」という地名は、日本書紀によると日本武尊(やまとたけるのみこと)が亡くなって白鳥になり古市に飛来し、その後、羽を曳くように飛び去ったということからついたそうです。りんくうキャンパスは、まさに「空の玄関口」にあります。そんな大学に入学して、勉学にいそしむうちにたちまち年月が流れ、本日、立派に成長して、この地から飛び立とうとしているのだと思います。

また「世界」というのは、「日本」に対する「海外」ということだけではなく、「学界」に対する「産業界」や「公共機関」のこともあるでしょうし、「理論を取り扱う大学」から「実際の地域課題を扱う実業界」のこともあると思います。そのような「世界」に飛び立つ、本日卒業されるみなさんや、また留学生や大学院に新たに進学される方には「大学いや日本の外に出向いて仕事や研究発表をしてほしい」と願っています。

 中には自分の未来の大きな夢をもっていて「すぐには翔かない」、また、まだ未来の自分のイメージを持てずに「大きくは翔けない」という方がおられるかもしれませんが、「すぐではなくてもいい、小さな一歩でもいい、大阪府立大学で学んだことをもとに計画をたてて、翔く志をもっていてほしい」こういう幅のあるメッセージだと受け取っていただきたいと思います。

 皆さんはヒナが巣立ちするときの動画をテレビ番組でみられたことがあるでしょうか。何かおどおどしていて、飛び立つことをためらっているようなシーンを記憶していませんか。しかし、思い切って巣から飛び出した途端に見事に羽を広げて飛んでいく。私はそのシーンに感動します。そして、今、まさに皆さんが世界に翔こうとしていることに感動しています。

2、しなやかにしたたかに

 私が学生時代に、制御理論(揺れ・振動)を専門としていた恩師から「これからの時代は、“しなやかにしたたかに”だ」ということを何度か聞かされました。当時のクラスメートや研究室の先輩・後輩も不思議とこの言葉はよく覚えているといいます。「しなやかに」とか「したたかに」というのはどういう意味なのでしょう。

 現代社会では誰もが、外部から多くのストレスを受けています。そのストレスのすべてに対して真っ向から立ち向かっていくと、心身を持ちこたえさせることができません。当たり前のことだと思われるかもしれませんが、そこにはめりはりが必要です。

 知人の中に、すべての課題を短期間に解決しようとして働き続けた結果、どうにも立ち行かなくなり、体調を崩されるケースがありました。もし、皆さんが体調を崩すと、それは皆さんだけでなく、周りにもマイナスの影響を与えてしまいます。

 それではどうすればいいのでしょうか。

 私はいくつかのストレスはあえて受け流すという姿勢が大切だと思います。川辺の柳を思い浮かべてください。強い風が吹いてきてもそして吹き続けても柔らかい幹や枝が撓んで(たわんで)それをかわしていますよね。私はその動きが「しなやかさ」だと思います。そのように私は学びました。

 「撓む(たわむ)」一方で、押さえておくべきことを持つことも大切です。「したたかに」というと少しあくどい印象があるかもしれませんが、制御理論で言う頑健性(Robustness)というもので、私は、人生でストレスにさらされ、そのことにより多少揺れても「したたかさをもって、抑えておくべきところを抑えていれば、いずれ落ち着くべきところに安定する」と考えています。

 「しなやかにしたたかに」あってほしいのは人間だけではないと思っています。皆さんが社会に出て担当する製品やサービスなども、「万一部分的に不具合があっても全体としては問題がない」「仮にある部分に障害が起こっても全体としては問題がない」、そういう仕事をしていただきたいと願っています。

3、母校は「母港」でもある

 大学が地域の信頼拠点であるには、組織として長く続く安定感があってこそだと言われています。大阪市立大学との統合の話があって、皆さんには「母校がなくなってしまうのではないか」とご心配をおかけしていますが、たとえ、仮に名称が変わることがあったとしても、教育カリキュラムが変わることがあっても、大阪府立大学はいつまでも皆さんの母校です。校友会という全学同窓会組織があり、大学と一緒になって活発に活動していただいています。そしてその活動はこれからも続きます。安心するとともに「いつでも」「気楽に」母校に戻ってきてください。

 大阪府立大学では、母校を覚えておける/思い出す機能をこれからもっともっと充実していきます。すでにある社会人大学院や生涯学習の講座、アントレプレナー教育のプログラムなどもさらに充実していきますし、卒業生向けメールマガジンの配信やSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)による積極的な情報発信にも努めていきます。どうか母校の動きにもこれまで以上に関心を持ち続けてください。

 私たちは皆さんが困ったときに帰ってこられる母校でありたいと思います。また、大学が困っているときに助けに来てくれる皆さんであってほしいと願っています。

 ここ堺市は南蛮貿易の拠点でした。港湾都市です。母校は母なる港の「母港」でもある。ぜひ覚えておいてください。

まとめ

 以上、三つの話をまとめます。

 大学から「世界」に翔いて、多くのストレスの中でしなやかにしたたかに働き、機会があれば、いやぜひ機会を作って、大阪府立大学という「母港」に戻ってきて、そしてしばしの休息ののち、また世界に翔く。私たちは、そういうサイクルを大学に作っていきたいと思います。

 皆さんには、大学に戻って学ぶあるいは立ち寄るだけではなく、ときに講師をお願いするかもしれません。ときに地域連携や産学連携のコーディネーター役をお願いするかもしれません。ときに国際交流のアドバイザーになっていただくかもしれません。大阪府立大学が世界に翔く地域の信頼拠点になるために。

 以上をもちまして、お祝いだけでなく最後はお願いまでしてしまいましたが、本日から始まる皆さんの新しい生活における飛躍を期待して、式辞といたします。

学長 辻 洋

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