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平成26年度 学位記授与式式辞

2015年03月24日

学長 奥野武俊
平成26年度学位記授与式

おめでとう

 冬の厳しい北風はすっかり南風に変わり、桜の便りが聞ける時になりました。本日ここに、多数のご来賓のご臨席を賜り、2014年度の学位記授与式を挙行できますことを心から感謝申し上げます。

 卒業・修了される皆さん、おめでとうございます。大学を代表してお祝いの言葉を贈ります。また、皆さんの成長を願いつつ励ましてこられたご家族やご友人、本日ご出席いただいた皆様に、お喜びを申し上げる次第です。

オーケストラの力

 さて、本日の式典を祝してオーケストラの皆さんが演奏してくださったのはレオ・ドリーブの曲でした。レオ・ドリーブという作曲家は、1800年代に活躍したフランス・ロマン派の音楽家で、バレエ曲を多く作った方です。バレエ音楽家と言えば、誰でも知っているチャイコフスキーは、ほぼ同年代に活躍した方で、レオ・ドリーブの少し後に生まれました。彼はレオ・ドリーブの曲を初めて聞いた時、友人に手紙を書きました。その中に”Listened to the Leo Delibes’s ballet “Sylvia”. In fact, I actually listened, because it is the first ballet, where the music constitutes not only the main, but the only interest. What charm, what elegance, what richness of melody, rhythm, harmony. I was ashamed. If I had known this music early then, of course, I would not have written “Swan Lake”. と書いて、もし以前からレオ・ドリーブの曲を聞いていれば、“白鳥の湖”は書かなかったと言って、彼の曲を絶賛しました。

 先ほど演奏してくださった曲は、「シルビア」という物語の中で、村人達がバッカスに様々なささげものを持って集まる、お祭りの場面で使われるもので、村人達の多様な姿と、にぎやかな祭りの雰囲気がレオ・ドリーブの特徴である優美で繊細な音で表現されています。本日の喜びの式典にふさわしい曲を選んでいただいたことを感謝しています。

 このような素晴らしい音楽を皆さんに聞かせ、感動を与えてくれるオーケストラの力はどのようにして作られるでしょうか。オーケストラは、様々な種類の楽器が集まり、それぞれがパートを受け持ち、指揮者の合図を見ながら演奏して、ひとつの曲を作り上げます。音色の違う多くの楽器が協調し合って、あたかもひとつの楽器が奏でているかのようにして聴衆を引き込んでいきます。もし、あるパートを引き受ける人が、自分だけは適当にしていてもいいだろうと考えたら、みじめなものになるでしょう。

 また、ある楽器が目立ち過ぎるのは面白くないと言って、勝手に他の楽器が割り込んでくれば、それも大変です。当然のことながら、それぞれのパートを引き受ける楽器は、単独で音楽を奏でる能力を備えていますが、多くの楽器が集まるオーケストラは、一つの楽器ではできないハーモニーを創り出してインパクトのある音楽にする訳です。

 このような様子は、皆さんが今日までそれぞれ専門とする学問分野で努力してきたことや、これから活躍していくところで必要になることを表しているように感じさせます。つまり、皆さんがこれから進む新しい場においては、これまで励んできた専門分野で活躍してくださることは当然のこととして、自分と異なる専門分野で学んできた人達とチームを編成して立ち向かわなければならない問題が多くなると思うからです。複雑な問題を抱えている現代社会はそのようなチームプレーを必要としています。あなたが学んできたことを生かすためには、常に多様な価値観を視野に入れて、一人だけではできない働き、いわばオーケストラの一員のようなインパクトのある働きをしてくださるように期待したいと思います。

チームプレーに必要なもの

 多様な楽器が集まっているオーケストラの機能を生かすために必要なものの第一は、指揮者だと思います。あなたがこれから取り組んでいかれる仕事の場合には、全く違う分野で学んできた人達を集めて適切な指示を出していくリーダーと言ってよいでしょう。もちろん、オーケストラの指揮者になるためにはそれなりの技術や知識が必要でしょうから、誰にでもできるかどうか分かりませんが、皆さんがこれから活躍する場においては、自分の専門領域における、いわゆるパートリーダーだけでなく、全体をまとめるチームリーダを任される可能性は高いと思います

 あなたにはそれを受け止める覚悟がありますか? もしそのようなチャンスが来れば、恐れず立ち向かってその役目を果たしてほしいと思います。大阪府立大学で学んだあなたには、それができる力があります。大胆であってください。大切なことは、いつでもそれを受け止めることのできる覚悟と心備えだと思います。

 第二に重要なことは、自分が受け持つべき専門領域を、与えられたパートとして、しっかりと成果を出すことです。オーケストラの場合には、各パートに任されている音をしっかりと自信を持って出す必要がありますが、それと同じことが必要だと思います。もちろん、あるパートだけが目立ちすぎることは、チームを乱すことになりますが、敢えて私はあなたに、“少々目立ちすぎるくらいでも構わないから、自分の持っているものをしっかりと表現して”とお願いします。これまでの学びの中で得た知識や、大学における経験を、遠慮せずに大胆に出していく勇気を持ってください。それが、きっとチームを生かすことになると思います。

受けたものを流し続ける

 中東に、海抜マイナス400メートルという低いところに「死海」と呼ばれる不思議な湖があることは、どなたも知っておられることと思います。塩分濃度が非常に高いために浮力が大きく、どんな人も浮いてしまう湖です。しばらく前のことですが、この湖の秘密を日本人の学者が調べたNHKの特集番組を見ました。それによりますと、この湖は世界で最も海面より低い位置にあり、周りから流れ入ってくる水を流し出す、いわゆる出口がありません。長い年月、入ってくる水を受けるだけで他に流すことができないため、蒸発するだけで塩分濃度が上り、その結果どのような生き物もすべて死に絶えてしまう、「死海」になったということでした。

 そのテレビ番組を見ながら私は、流れ込んできた水を出すところが無いと、結果的に生き物を生かすことが出来なくなるということが、私たちの生き方に対するメッセージのように感じました。つまり、あなたが大学で励んでこられた学問の世界は、決して新しい知識や技術を貯め込むところではありません。学問の世界で何かを発見したり、解明したりした、新しい知見を惜しみなくまわりの人に知らせ、社会に役立てて行くのが当然です。湖のことで言えば、流れてきた水を蓄えながら、その水を流し出すことと言えるでしょう。

 この死海の北にはヨルダン川という川があって、水はここから入って来るのですが、その川を400キロメートルほど北に遡ったところにガリラヤ湖という小さな湖があります。その湖は死海と全く逆で、山から流れて入ってくる水を貯えながら、その水をヨルダン川に流しています。この湖では非常に多くの魚が採れ、多くの生き物を生かしています。豊かな湖は、まわりから水を受け入れながら、流し出していく機能によって実現します。それは、湖の生物ばかりでなく、そこに住んでいる人達も生かし、潤すことになります。あなたの存在が、あなただけのものに終わらないで、まわりの人や社会で生かされるためには、新鮮な流れをしっかりと受けとめると同時に、惜しみなく流していく必要があるのです。

活躍のための心備え

 繰り返しになりますが、あなたがこれまで大学で励んできた学問の専門領域を、あなたに託されたパートと受け止めて、その役目を果たすために、学んだことや受けたものを貯めるだけでなく、しっかりと“流し出して”ください。大胆に流していくならば、必ず新しい新鮮な水がもっと多く入ってきます。それによって、自分だけでなくまわりの人も豊かに生かすことになるのです。

 そしてさらに、オーケストラのようなチーム編成のチャンスが来たら、リーダーとなる覚悟と心備えをしてくださるようにお願いします。

 皆さんのご活躍を期待して、式辞とさせていただきます。

学長  奥野 武俊