大学案内

平成27年 年頭の挨拶

「世界に翔く」学生を育てる

2015年1月5日

理事長・学長 奥野武俊

新年おめでとうございます

 新年おめでとうございます。皆様よい正月を迎えられたことと、お慶び申し上げます。2015年も、祝福された年となることを願いながら、年頭の挨拶を申し上げます。

「翼」で翔く学生を育てる

 これまで3年間に、「創基130年」としてさまざまな事業を行ってまいりました。昨年には、記念事業の最後となる国際交流会館の建設が開始されました。本年2月20日には学内外の皆様へのお披露目を兼ねた式典を予定しており、4月1日からオープンする運びとなりました。これで、記念事業に区切りがつくことになりました。この場を借りて、皆様のご支援に感謝申し上げる次第です。

 2年前のこの場では、記念事業のひとつであった難波における新しい拠点の愛称を“I-siteなんば”とすることを紹介しましたが、今年は、国際交流会館の愛称についてお話しさせていただきます。昨年末に愛称を募集しましたところ、非常に多くの作品が寄せられ、審査はとても大変でした。

 そこで、今回も最終審査に残った作品を組み合わせて、“I-wingなかもず”とすることにしました。お気づきのように、この名称は、すでに使ってきた“I-siteなんば”が大阪府立大学のものとして定着してきたことを考えて、“I”の意味には、以前と同じように、Integrate、 Inspire、 Initiateの意味を込め、これと世界に翔く学生をイメージして“翼(wing)”を合成したものです。

 すでに「つばさ保育園」や「つばさ基金」があったためと思いますが、「つばさ」を意味する応募作品が多く、英語(wing)の他に、日本語(つばさ)、イタリア語(ala)、フランス語(aile)などもありましたので“つばさ”を採用した次第です。

 ところで、“I-site”を大学のExtensionを表す場合に使うことにしますと、I-siteとうきょう、I-siteワシントンなども考えられますが、実は、Edge(Enhancing Development of Global Entrepreneur Program)と呼ばれているJST(科学技術振興機構)のプログラムが昨年採択されて、シリコンバレーや東京での活動が開始されていますので、これらにもI-siteをつけることにしたいと思います。そのうちI-siteハノイ、I-siteバンコクなどにも広がることを期待しています。

 これからは大阪府立大学の学生を育てる活動に“つばさ”を使いたいと思います。卵を温め、生まれたヒナを育てる大学と世界に翔く学生を考えますと、小さな子供たちのための保育所が、“つばさ”で始まったことを誇らしく思い、今回はそれを大学生バージョンにつなげたと受け止めていただけると幸いです。

 大阪府立大学が理念として掲げている「地域の信頼」を得るためには、学生達が世界に翔いて活躍することが重要だと思っていますので、この国際交流会館が交流を広げながら地域とのコミュニケーションも深めるように用いられることを願っています。

 もちろん、「地域の信頼」を得るためには、別の視点で地域と直接関わる必要もあります。これは最近我々が取り組んでいるCOC(Center of Community)に関連することで、いわゆる“地域デザイン”につながることなのですが、その参考になりそうなひとつの例をお話したいと思います。

地域の信頼を得るために

 東京のある中学校の話ですが、生徒会が発案して、毎月1回、自宅から校門までの道すがらゴミを拾って登校することにしました。生徒達は皆、ビニール袋を提げて登校し、脇道にそれたり歩道の植え込みに手を突っ込んでゴミを拾いながら校門までやってきます。そこには、当番の生徒が立っていて、「おはよう」と言いながら、彼らのゴミ袋を受け取ります。校門を過ぎると、何事もなかったかのように教室に向かうのですが、それを見ていた方の話では「その姿はとても自然だった」ということでした。

 この学校の生徒たちの感想は「ゴミを拾って街がきれいになることよりも、もっと嬉しいことがあるんです。近所の人たちがみんな外に出てくるので、おしゃべりするんです。その時間がとても楽しみ」というもの。また、地域の人は「この中学校の生徒達はとても成長していると感じます。学校への信頼がとても厚くなり、学校のことを街の誇りに思っています」と話す。中学校の運動会には卒業生が非常にたくさん集ってきて、後片付けを当たり前のように手伝うとのことです。

 彼らは、「地域清掃の日」とか「奉仕の日」とか大げさなイベントを考えたわけではなかったのですが、この行動は毎日の登校風景の中にすっぽり溶け込むものとなりました。その結果、当初考えていたゴミ問題という環境問題を考えるだけではなく、地域の人達とのコミュニケーションが進み、「地域の信頼」を得ることにつながりました。

 大学を愛し、キャンパスにおける生活を豊かにし、その結果として地域の信頼を得るためには、世界に翔く学生を育てるだけでなく、このような日常的な生活に溶け込むようなことも大切なのだと感じたのです。我々も、毎朝出会う人に「おはよう」という元気な挨拶とか、どんなことにも「ありがとう」ということがキャンパスにあふれるようにできればいいのかもしれません。とにかく“何か”によって、結果的に私たちのコミュニケーションが深まること…そこに“鍵”があるのではないかと思いました。

バトンを渡していく時

 さて、この場に立って皆様に新年の挨拶をするのは6回目になり、私が手に持って走ってきたバトンを次に渡す時が近づいてまいりました。ご存知のように、新年には有名な箱根駅伝があります。全行程200キロメートル以上の起伏の多い道を10人の走者でタスキを渡しながら走る長距離レースです。今年は青山学院が初めて優勝したレースをテレビで見ながら、私たちの大学における歩みも同じような長距離レースで、しかもマラソンのように一人で走るというよりも、タスキを次々に渡していく駅伝に近いように感じました。私にとって、自分に与えられた区間をうまく走り抜けることができたかどうか自信はありませんが、もうすぐ次の走者にタスキを渡します。

 毎年、ここで大学改革や大学統合について話をするたびに、霧がかかった中を歩むかのような不透明なことしかお話しできなかったことは、とてもつらい事でしたが、皆様がこの苦しみを共にしてくださったことを、心から感謝しています。

 今年もまだゴールがはっきりと見えない状況です。どうかご理解いただき、私たちのゴールの先には必ず夢があると信じて、これまでと同じように、“しなやか”に粘り強く歩み続けていただきたいと思います。

 実は、箱根駅伝のテレビチャンネルを変えると大学ラクビーの試合が放映されていました。ラクビーのボールは前方ではなく、横かあるいは斜め後ろにパスされていました。たとえ少し後ろにパスしたとしても、チーム全体は前進し、あるときはスクラムを組んでボールを前に運ぶラクビーは、我々の歩みを象徴していると感じました。私がボールをパスするまで、もうしばらくありますがチームを確実に前進させるものでありたいと心から願っています。

 2015年が、皆様にとって、また大阪府立大学にとって、素晴らしい年となることを祈って、挨拶とさせていただきます。

理事長・学長 奥野 武俊