大学案内

平成26年 年頭の挨拶

人と人をつなぐ言葉

2014年1月6日

理事長・学長 奥野武俊

新年おめでとう

 2014年、あけましておめでとうございます。この年も、私たちにとってすばらしい年となることを期待しつつ、年頭の挨拶をさせていただきます。

創基130年

 昨年は、本学の淵源である獣医学講習所が創られてから130年となる節目の年、いわゆる「創基130年」でした。これを記念する事業を多くの方の支援をいただいて実施しています。ここで改めて、皆様に心からの感謝を申し上げたいと思います。

 その中で、第一にお話しすべきことは、昨年4月に“I-siteなんば”と呼ぶ、府立大学の学外拠点をなんばに開設したことでしょう。ここには、懸案だった観光学を主とする大学院を開設するとともに、府民の方々を対象とする公開講座をはじめ、各種の研究会、学会、同窓生の集まりなどが都心で開催できる会議室をつくりました。また、大学と地域の人を結ぶ“まちライブラリー@大阪府立大学”という取り組みを始めました。これは、当初「蔵書の無い図書館」として新聞などに取り上げられて紹介されましたので、人と人との交流を進める試みとして全国的に注目を集め、ライブラリー・オブ・ザイヤーというイベントでも表彰されました。このような試みは、“マイクロ・ライブラリー”という総称で呼ばれるようになっており、これをさらに広げ、大学にふさわしい形にしていけるものと期待しています。

 また、11月3日には1,300人を超える卒業生やご家族を“なかもず”キャンパスに迎えて、記念のホームカミングデーを開催しました。そのときの記念講演を、日産自動車の副会長(本学経済学部出身)の志賀俊之さんにお願いしたのですが、グローバル化した社会に対応してきた日産自動車と未来の車づくりについてお話しいただきました。今回のホームカミングデーでは、テーマを「原点に返り、新しい歩みをはじめる・・・」ということにしたのですが、それにふさわしい内容を考えてくださいました。日産自動車の経営会議メンバーの半数が外国人であることや、女性社員の管理職は7%以上になっており、日本の製造業の平均の2倍以上であることなどに触れられ、日産自動車が多様性の高い環境を実現し、未来の車を考えているとのお話しでした。講演後には、短い時間でしたが学生たちとの懇談会を持ってくださり、グローバルに活躍できる人とは、「自分なりの考えをしっかりと持って、その上で世界中のいろいろな考え方を尊重し、その違いを明確にしながら、お互いの共感力を持って、必要な答えを求めていける人」と言われ、学生たちに、チャレンジするように促されました。

 創基130年記念事業の一つとしてもうひとつ計画している国際交流会館の建設は、このようなグローバル化に対応する我々の行動の一つですが、残念ながら建設条件がうまく整わなかったり、建設環境が変わったこともあって当初の計画通り進めることができませんでした。できるかぎり早く進めることにしたいと思っていますので、よろしくお願いします。大学のグローバル化という点では、ハード面だけでなく、さまざまな教育プログラムを含むソフト面も遅れている問題の一つと受け止めており、今年の大きな課題と考えています。皆様のご理解と、ご協力をお願いする次第です。

大きな課題

 さて、このような挨拶では何度も触れてまいりました大阪市立大学との統合に関する問題については、ご存じのように予定通りに進んでいない状況です。昨年の始めに「新大学構想会議」からの提言が公表され、それを受けた形で両大学の設立団体である大阪府・市が「新大学ビジョン案」を出し、それを受けて両大学が協議を重ね、昨年10月には新しい大学のための「新大学案(平成25年10月版)」が公表されました。その後も、検討が重ねられて、内容を充実していくことが合意されています。

 この新大学案を使って、まず、ひとつの法人にするために、理事長と学長を分離する定款変更と、統合に向けた中期目標の変更は議会の議決が必要なため、大阪市および大阪府の議会に説明されました。ところが、ご存じのように大阪市議会ではこの2つの議案が否決されましたので、結果的に、大阪府議会では議案が出されませんでした。大阪市議会における否決の理由は色々と報道されていますが、ひとことで言えば、「拙速である」ということで、統合そのものは否定されていない状況にあります。

 両大学では、このような議会の動きや、大阪府・市の動きを踏まえて、統合に関する協議を続けており、大阪市議会を含めた様々な立場の方の意見を聴いていくことにしております。

 受験生のことを考えますと、平成28年度新大学スタートとされているスケジュールが予定通り進むかどうかが最も重要な点と思っていますが、現在のところ、これについて明確なことがお伝えできない状況にあります。皆様には多大な労力を強いて新大学案の作成に協力いただいており、ご心配をかけています。最善を尽くしてまいりますが、思うようには進んでいないことを、ご理解いただきたいと思います。

 ただ、ここで申し上げたいことは、統合案が予定通り進むかどうかに関わりなく、たとえどのような形で進むにしても、従来から進めてきた新しい教育体制を充実させ、その結果を出していくことが重要ということです。そのための努力を重ねているならば、新しい形を考えることになっても、柔軟に対応できると信じていますし、大阪府立大学には、それができる力があると思っています。まだ越えなければならない山は大きいように見えますが、皆様のご理解と、ご支援によって乗り越えて行きたいと思います。

人と人をつなぐために

 このような厳しいときに、思い出すことがあります。それは「答を教えることは人と人の関わりを分断するが、問い掛けは人と人をつなぐ」という言葉です。これは昨年、あるシンポジウムで聞いたことなのですが、何かの解答を知っていることを誰かに教えると、感謝されることは少なく、コミュニケーションも分断されるが、「なぜでしょう?」というような問い掛けをすることで、一緒に考えるようになり、相手との関係をつなぐことになる、という意味です。ご存じのように、昨年末、大阪府立大学のアメリカンフットボール部が2部リーグで優勝し、1部のチームと入れ替え戦に臨みました。その活躍ぶりが新聞やTVで報道され、「こんなに活躍した秘訣は?」という質問が学生たちに投げかけられていました。それに対して、キャプテンは「試合の分析や作戦、練習方法について、先輩・後輩の区別なく誰でも意見が言えるような雰囲気づくりができたこと」と答えていました。昔の体育会系のクラブのイメージだと、監督や先輩の言葉は絶対で、後輩はそれに従い、気合で頑張る・・・というようなことでしたが、彼らは違ったようです。自分の知っていることを教えるのではなく、一緒に考えることでチームワークを強くするのですね。

 皆様にも、彼らと同じように、年齢や立場を超えて様々な意見を出しながら、人と人をつなぐための、問い掛けし合うことを通して、課題の答えを一緒に探してくださるようにお願いしたいと思います。

 新しい年が、希望にあふれた、明るい年になることを願って、挨拶とさせていただきます。

理事長・学長  奥野 武俊