大学案内

平成23年 年頭の挨拶

出る杭になる

2011年1月4日

理事長・学長 奥野武俊

 新年おめでとうございます。 今年の正月は全国的に荒れ模様の天候で、山陰地方は大きな災害に見舞われたようですが、皆様はどのような正月を迎えられましたでしょうか。
この新しい年が皆様にとって、また私達の大学にとって、明るく夢のある年になるように願ってやみません。年頭にあたり、ひとことご挨拶申し上げます。

 昨年は、大阪府立大学にとっては、第一期中期計画の最後の年であり、しかも一昨年から取り組んでおります大学改革を具体化させることが重なり、実に様々な課題に同時に取り組まなければなりませんでした。
私の率直な感想は、「盆と暮れが同時に来た1年」というもので、かなりのスピードで走り続け、やっと年を越したような気持ちでした。

 振り返りますと、春に始めた府大池の整備を始めとするキャンパスの整備はまだ続いていますし、大学の情報を発信していく広報活動は十分とは言えませんが、かなり頻繁に行われるようになりました。
また、昨今の経済不況で外部資金の獲得にはどの大学も苦戦している中、大阪府立大学では、いくつかの大型プロジェクトが採択され、企業との共同研究数も確保でき、外部資金獲得の全国のランキングではかなり高い評価を受けました。
これらの成果は、府立大学のために日頃から努力を重ねてくださっている皆様のおかげです。心から感謝申し上げる次第です。
ただ、これら多くの課題に関して、皆様と一緒に考える時間が十分に取れず、ご心配やご迷惑をかけたことがあったかもしれませんが、あまりにも多くの課題に同時に取り組み、しかも一定の成果を短時間に出す必要があったことをご理解いただきたいと思っています。

 ご存じのように、本年4月1日から始まる次期中期計画の開始と同時に新しい組織による大学がスタートすることになっていますが、7つの学部を4つの学域に編成した体制で新入生を迎えるのは、24年4月になります。
まだ1年先と言われる方もおられますが、大学の教育体制を変更するためには、入試体制などを同時に変える必要があり、受験生を確保していかなければなりませんので、余裕の無いスケジュールがこれからも続くことになります。
なかでも、学士課程教育の充実に関しては、今回の改革の中で最も大きな課題になっています。これは、全国の大学だけでなく、世界の大学の動きから考えて、是非とも必要な改革であると考えています。
学生が自ら考えて、学ぶための学習姿勢の転換をできるだけ早い機会に図り、自分の学習成果の達成度を自ら把握した上で、それぞれの専門性を高めること、グローバル化した国際社会で活躍するための幅広い教養を身につけて、社会が必要としている課題に取り組んでいける学生を育てることは、間違い無く必要なことです。
大学の教育課程を改革していくタイミングは、今しかない、何としてもこれをやり遂げなければならないと考えています。もし、このタイミングを外すと、長期的な視点から見て、他大学に遅れをとることになります。
3~5年先の大学を考えるならば、きっとご理解いただけるものと思っていますので、時間は限られてはいますが、皆様との話し合いを深めながら、このような課題を共有していきたいと願っています。

 ひとつの具体的な例として、このたびの改革の中でコアになる学域として位置づけた「現代システム科学域」があります。この名称は、私達が作った新しい言葉で、既存の学問を表していないために、多くの方から「何をするところか分からない」という指摘を受けています。
「現代社会が抱えている複雑なシステムを理解し、社会を牽引するために必要な学際的な学びをする学域」などという説明をしても、難しくてその内容をイメージすることが出来ないと言われています。この言葉を定着させるためには、それなりの時間が必要であり、そのための努力が必要です。
実は、システムという言葉は、1960-70年代にアポロ計画や新幹線を作った人達が広め、工学の世界では、入力と出力の関係を表したり、複雑な仕組みを考えるために広く用いられてきました。ただ、もともと、この言葉は「共に」とか「立てる」という意味を持つギリシャ語から作られたシステマ(systema)からきたもので、最近の言葉で言えば、いわゆる「共生」を意味するものでした。
少し大胆と言われるかもしれませんが、この「現代システム科学」のイメージをつかんでもらうために英語では、“Sustainable System Sciences ”を使おうと話し合っています。
現代システムという日本語の翻訳にはなっていないことは承知の上で、目指している方向性を表そうと思います。サステイナブル(持続可能)という言葉は、リオサミットで環境問題を考えるために用いられた言葉でしたが、今やすべての学問や研究に必要なものとなっており、これからの社会に必要なものを表現していると思います。
もちろん、この言葉だけで、「現代システム科学」のすべてを表しているわけではありませんが、学際的な学問を表すにはふさわしいと考えます。現状では、Sustainableに対する適切な日本語が無い状況であることを考え、少し大胆ではありますが、この言葉を大学として、できるだけ早い機会に確立し、受験生などにもイメージしてもらう努力をしなければならないと思っています。

 さて、このような努力を重ねる大学として、皆様にお願いしたいことがあります。今年は、ぜひ皆様に「出る杭」になっていただきたいと思います。
「出る杭」は打たれる、多くの場合できるだけ尖った意見を言わずに、周りの雰囲気を察知して協調するという意味で使われますが、今、あえて、大阪府立大学に必要なことは「出る杭」になることだと思うのです。
もちろん、それは、ただ単に周りを無視して自分の意見を通し、目立つことを意味しているわけではありません。
従来から「おとなしい」とか「地味」と言われている大阪府立大学だからこそ「出る杭になろう」という言葉がいいように思います。
私は、皆様を信頼して、この言葉を贈りたいと思います。出ることで、打たれたり、叩かれたりすることがあるかもしれません。その時、可能であるなら、私にもその役目を担わせていただければ・・と思っています。

 次の世代を担っていく若者を育てるための教育研究を第一に考える大阪府立大学のプレゼンスを高めるために、“サステイナブル(持続可能)な学問”を探究し、“出る杭”になることを考えていただきたいと思います。
それによって、まだ越えなければならないいくつかの山を乗り越えることができると信じます。私も、その山を皆様の協力をいただいて、乗り越えて行きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 2011年が、明るい夢のある年となることを期待して、挨拶とさせていただきます。

大阪府立大学 理事長・学長  奥野 武俊